第三話 新たな人見知り
「んっ…。ここは?」
雪姫は気絶から覚めて真っ先に周りを見渡して見慣れない部屋であることを確認します。
「!?やっと起きた!心配したんですよ!」
気絶から覚めた雪姫を見てリアは思いっ切り抱きつきます。
この状態で雪姫はここがリアの自室だということを頭に入れます。
「心配してくれてありがとう。でも、これでわかったよね?そ、その頭を少し、撫でられただけで気絶するような私だもん。そんな簡単に治らないよ」
「短時間で治らないのならば、何度も挑戦して長い時間をかけて矯正するだけです」
リアはそう言って雪姫から離れ目を合わせて言葉を紡ぎます。
「と、言うことで、今度は悠希さんで練習しましょう!」
「途中まですごくいいセリフだったのに、最後の方だけ強引に収束させた!?」
雪姫はリアの意外に強引な一面に驚愕を隠せません。
ですが、それを気にせずリアは話を続けます。
「私の記憶が正しければ、悠希さんは女性嫌いなはずです。もしかしたら、異性嫌いと言う点で意気投合するかもしれませんよ?」
その口調は小さい子に言い聞かせるようなゆっくりはっきりとしたものでした。
「イヤイヤ、無理だって…」
ですが、雪姫は自信がありません。
「なんでですか?」
リアはその反応に本心からわからないように理由を問います。
「なんでって…。そんなの色々だよぉ」
「そうですか、わかりました。今の所はこれで勘弁してあげます」
リアはそう言って雪姫に先ほど回収した文庫本を返します。
「あ、ありがとう。でも随分と簡単に開放してくれたね?」
その言葉を聞いたリアはここぞとばかりにSっ気を出した笑顔を顔に浮かべて言う。
「ん?まだやりたいですか?」
それを聞いて雪姫は本気だと思ったのか本気で反対する。
…当然、冗談なのだが。
「そんなことっ!」
それを聞くとリアは表情を瞬時にいつものものに戻して理由を語る。
「でしょう?それに、自身がない時に無理をして挑戦をしてもあまり意味がないので今今回は終わりにします」
「わかったよ。じゃあ、後でね」
「はい」
そう言って雪姫はリアの部屋から出ていきます。
リアは出ていくのを確認して少しだけ行動を止めてからベットにダイブしました。
「は~。やっぱり、雪姫お姉さんって可愛いな~。あれで男性が大丈夫になれば彼氏なんてすぐできるはずなんだけど…。まぁ、できることなら私が雪姫お姉さんと…。って何言ってんだろ!雪姫お姉さん、見た感じノーマルだったし!」
そこまで言うとリアは少し口を止めます。
話がそれたので現状確認がどこまで行ったのか思い出そうとしているのです。
「…うん。ここまでだったね。…でも雪姫お姉さん、あの様子じゃそう簡単に治りそうにないし…。よし!じゃあ次の練習台も烱至さんかな。あの人、何考えてるか分からないからボクは苦手だけど…。まぁ、仕方ないよな~。雪姫お姉さんに今一番親しいの烱至さんだろうし…」
リアはそこまで言うと現状確認を終わらせて立ち上がり、パソコンに向かいます。
「そうと決まれば、次の作戦を考えなきゃ!さっきは烱至さんが話しかけてくれたからいいけど、毎回そう行くとは限らないし」
そう言ってリアは人見知りを治す方法と異性嫌いを矯正する方法、恋愛の仕方を調べます。
その中で目ぼしい物があればメモに残しておきます。
それをかれこれ一時間ほど続け、やるべきことを忘れてしまっています。
少し戻って雪姫がリアの部屋から出ていきます。
「は~。リアちゃん、ここに来たばっかりの時は穏やかな子だと持ってたんだけど…。嵐のような子だったな…。いい子ではあるんだろうけど…」
雪姫は今回の一件でリアへの印象を書き換えます。
「とりあえず、今日は解放されたみたいでよかった」
雪姫は解放されたことに対して安堵の声をあげます。
「今日の食事当番は私じゃないから部屋に戻ったら溜まってる本を読もう。次は何にすれば――――」
本人は声に出していないつもりなのでしょうが、限りなく小さいけれど声が漏れています。
その頃、烱至と悠希は――――
「烱至さん。オレ、女が苦手なんですけどどうすれば治りますかね?このシェアハウス、女も多いから治さないとシェアハウスにいるのつらくなるかもしれませんし…」
――――悠希の女性嫌いについて話し合っていました。
「そこんとこ、女性ともすぐに仲良くなれる烱至さんに御教授願いたいんです」
そう言って悠希は烱至に向かって頭を下げます。
それを聞いて烱至はらしからぬ自身のなさそうな声を出しました。
「そっかー。でも、俺がアドバイス出来ることなんてないない。別にすぐ仲良くなれるわけでもないしね。事実、雪姫ちゃんには怖がられる。リアちゃんからは化物と人間の雑種を見るような視線を投げつけられるし…」
烱至は事実を述べているだけですが、自分で言いながら自分でダメージを受けています。
「化物と人間の雑種ってなんですか!?異民族的な生易しい物じゃなくて!?その表現しかなかったんですか!?
というか、自分で言っときながら勝手に傷つかないでくださいよ!」
「わるいわるい。で、本当にアドバイスできることにないけどいいのか?」
「化物と人間の雑種のくだりはもうスルーなんですか!?展開速過ぎませんか!?」
悠希は必死に訴えかけますが、烱至は苦笑いするだけです。
それにすら気づきませんが。
「あー!雑種の件はもういいですよ!
オレは烱至さんに教わりたいんです。さっきみたいなところを含めて烱至さんのいいところだと思ってますし」
「そう言われると少し照れるな…」
烱至はその言葉を聞き、柄にもなく少し照れてしまいます。
「よし!そこまで言われちゃ、聞き入れるしかないな。
今日からビシバシ指導してやるから、気ぃ抜くなよな?」
烱至は少しおどけた口調で悠希にそう言います。
「はい!」
その言葉に対して悠希は元気よく返します」
「よし、じゃあまずは雪姫ちゃんからかな。男嫌いらしいから意気投合するかもしれないしな」
いきなり実践をしたり、異性嫌い同士をぶつけようとしている辺り、何気にリアと思考が似ています。
それをリアに言ったら確実に激しく否定するでしょうが。
「いきなり実践ですか!?」
「あのな、こうゆうのは実践以外には基本やることはないんだよ。だから実践して問題点があれば俺が指摘する。それだけ」
大事なところはゆっくりはっきりと発音するところもリアに似ています。
「そうなんですか…」
ですが悠希はそれを聞いてあからさまに落ち込みました。
最初から思いついていた方法ではありますが、それが嫌だからアドバイスを貰おうとしたのに結果として同じことになってしまったのですから。
「そうなの。って言っても雪姫ちゃんの方が嫌だと思うからいつかチャンスがあればだけどな」
「わかりました!」
悠希は心の準備をする時間が与えられたと思って喜びます。
「それにこっちの都合で話しかけすぎるとリアちゃんに殺されかねないし…」
それとは逆に烱至は雪姫に話しかけるのを延期した本来の理由によって身震いをしていました。
「ん?何か言いましたか?」
「いや、なんでもない。
悠希は少し不思議に思いましたが、気にしないことにしました。
「そうですか。じゃあ今は自由時間でいいですよね」
「いいけど、イメトレぐらいはしておけよ」
安堵は一瞬だけでした。
悠希にしてみればイメージですら女性と話したことはないのですから。
登場人物紹介
・島原 悠希
性別…男
髪型…金の短髪
年齢…16
身長…178
体重…78
性格…仲間に優しく女性嫌い
備考…元ヤン
基本的にパーカーにジーンズ
烱至の事を尊敬している
母親が家を出ていった
一人称は「オレ」