松ロト、発狂
昼休みになった。
やれやれ、ようやく心が収まるか……と思ったら大間違い。
今日も異常な中学生たちは教室を荒らしまわる。
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「いやー、お前の弁当うまそうだなー」
昼休み、隣で弁当を食べていた太井が声をかけてきた。
うちの学校は昼休みに、休憩と昼食時間を兼ねている。
早く体育館に行ってドッチボールがしたい太井は、食べ始めたかと思ったらまるでブラックホールの如く昼食がゴミの様に吸われていった。
「一口よこせよー!頼むぜ、俺は腹が減って死んでしまいそうだ」
そのまま死んでしまえ。
人類の未来のためだ、仕方がない。
「松ロトにでも頼んで来いよ、あいつは少食だぞ確か」
「おっナイス!さすがは帝王!」
そういって太井は走っていった。
おーい、そんなに走ったら校舎が消し飛ぶだろー、やめろー。
案の定、木造27年目の校舎は不快そうに軋みを立てて唸っていた。
その音を吹き飛ばすようにして上書きするこの高めの悲鳴は……?
松ロトに違いない。
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「やめろ怪獣!ガソリンを奪うな!うわぁぁぁあああ!!!」
「……怪獣じゃねえって言ってるだろ!太井だよ、太井!」
「うわぁぁぁああああ、やめろ、豚骨ラーメンにでも使われて死ねー!!」
「……豚でもないから落ち着けって」
……見ると、松ロトがもの凄い形相で太井を襲っていた。
あーあ、あいつ寝起きを襲ったのか。
松ロトは目が悪いから、寝起きの時はよく見えてない。
それにしても、太井が怪獣とか……ブフッ(爆笑)
「怪獣はさすがにひどくないか……ふええん、橋元ぉ」
泣いて近寄って来た太井。
その顔は、よく見るとひっかき傷であふれていた。
「……近寄んな」
光田がぼそっと呟いていた。