太井をとにかくイジりまくる回。
初回はほぼ説明会です。
次回にご期待ください。
「……いや流石にそれは持ちすぎだろ」
帰りの電車を待つプラットホームで、その巨体をドスンッ!と漫画だったら擬音が付くくらいの勢いで着地させた太井。
剣道部だから、といつも持ち歩く荷物はその肥満体と合わさって非常に重々しい絵面だ。
それはまるで重量という名の地獄絵図のようで光景自体に重力が宿るかのようだ。
「誰が電車に乗るのも遠慮した方が良いと思われるデブだって!?」
「いやそこまで言ってないから」
「誰がエレベーターの重量制限を突破し警告音を鳴らさせた究極の肥満体だって!?」
「それは事実だろう」
一度こいつはエレベーターの重量制限を突破したことがある。
その制限はなんと720kg。
五十キロぐらいの荷物を持ったままジャンプしたらそうなったのだ。
ちなみにそのエレベーターに俺も乗っていた。
「……ったく自分の質量を理解して行動しようぜ」
「……泣いていい?」
いつもの日常が始まる。
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電車に乗ると、光田と高嶋を見つけた。
「ケガはないか橋本!?」
「おい!医療班!」
「……誰が次々と災害を生み出す究極の肥満体だゴラァッ!?」
「「事実ですけど」」
「……はい」
なんとも笑えないノリである。
実際に生命の危機にあった俺からすればあながち嘘でもあるまい。
「しかし太井と橋本はいつも一緒にいるよな」
そのせいで何回も死にかけたけどな。
コイツが歩く地響きで電車が揺れたときは正直死んだと思った。
「俺も太井と一緒に登校しよっかな」
やめとけ。俺は自分の生命を維持増進するだけで精一杯だ。
お前の命までは保証できん。
「……何やら不愉快な会話が進行してるんだが」
当たり前だバカ。
どんだけ周りへの影響力が大きいか自覚してんのかお前は。
ガコッ
……突如音がする。
車両連結部分の扉が開きもう一人の男が現れた。
松ロトだ。
最近眼鏡を変えたらしいが、あまり雰囲気は変わらなかった。
右手にはルービックキューブをしっかりと握り、片手には『ガソリンの一生』と書かれた謎の本を握りしめている。
急に立ち止まり、口を開く。
「……やはりガソリンの一生は尊い」
格言みたいに言うな。
やはりってなんだよ。やはりって。
「例えるなら太井の無駄な皮下脂肪と中性脂肪とブドウ糖とタンパク質とノーマルスペックな脳と……その他諸々を削ぎ落とした無駄のない肉塊ぐらい尊い」
「やけに無駄な部位多いし最後肉塊になってるし!?人間的価値すら認められないのか俺は!?」
同意同意。激しく同意。うえーい。
「あわわ……俺には人間的価値が無い……ならば美術的価値は?」
安心しろ、絶対に無い。お前に美術的価値は誰も求めてないからな。
……こうして平和(疑問符多数)な日常は過ぎていく。
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全力で修正に向かいます!
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