惨めな告白
優介は、まず手紙を留奈の下駄箱に入れた。
「話したい事があるので、明日午後十二時四十分ごろ体育館の裏に来てください」
という小学生の作文みたいな手紙だった。フランス風のエスプリなどカケラも無い。
(呼び出し状は幼稚だったが、告白の言葉はしゃれているんだ)
優介は早めに昼食を済ませると、体育館の裏に行き、ドキドキしながら留奈を待
った。
心の中で何回も告白の言葉を繰り返す。
「フランス人形のように可愛い君が好きです。付き合ってください」
これでフランス風のエスプリが効いているつもりだった。優介は振りも考えた。
いきなり両手で留奈の手を握る――選挙みたいで変だ。
腰を前後左右に激しく振りながら告る――変態だ。
直立不動で敬礼をする――軍隊じゃねっての。
「シッポを振りながら駆け寄り――って犬か!」
一人でブツブツ言っていると、目の前に留奈が現れた。
「あっ」
優介は固まり、留奈は微笑む。
「話って、何?」
可愛い笑顔の前に、優介の頭の中はまたしても真っ白になり、胴震いがしてきた。
自分にとって留奈は、美人OLとは別次元の存在のようだ。それでは留奈はもは
や天使みたいなものではないか。そうだ、自分は彼女を人間とは思っていないのだ。
それだから妖怪にでも出くわしたような状態になるのだろう。
優介はセリフの飛んだ頭の片隅で、いろいろと分析した。
「どうしたの?」
留奈は微笑んだまま、少し眉を寄せる。
(き、きれいだー)
そんな言葉しか浮かばない。
「●×△◆◎□」
けいれんしながら意味不明な言葉を口走る優介に、留奈は肩をすくめると去って
いった。
(後ろ姿もきれいだー。ふくらはぎが)
そんなことしか考えていなかった。そして留奈の姿が視界から消えた瞬間、自分
の失態に気づいた。
「何やってんだ俺!」
自分の頬をたたきながら、足を踏み鳴らした。
「あのセリフはどうしたんだ! 『君は可愛いフランス人形が好きだ』は!」
留奈をガン見した衝撃でバラバラになった文章が、おかしな具合に結合したよう
だ。
とにかく優介は、またしても告白に失敗したのだった。




