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ゾンビの恋人  作者: 鳥原 麻生
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美少女キャラの崩壊

 留奈の頭痛は、放課後ようやく治まった。しかし、今夜もあの悪霊に襲われるの

ではと思うと、生きた心地がしなかった。


 優介と留奈は手をつなぎ、駅までの道を歩いた。その数メートル後ろに目を血走

らせた沙織がついてきていたが、もうどうでもよかった。二人ともいつ死ぬか分か

らない身の上なのだから。


 オレンジ色の夕陽を見つめながら、優介は心の底から幸せを味わっていた。

ゾンビになる前は、留奈と手をつなぐなど想像もできなかったことだ。今は落ち着

いて、それができる。いつ死のうと悔いは無い。後ろから沙織に首を絞められよう

とオノで頭を割られようと、穏やかに逝ける。


 優介は自己満足に浸っていたが、留奈のほうは悲嘆にくれていた。

 まだ死にたくない。

 やりたい事が、いっぱいあるのだ。


 いつかスイカを丸ごと食べたいと思っていたのに、まだやってない。

 美少女戦士のコスプレも、やっておけばよかった。


 結婚したら、最初の一週間だけ夫に美味しい朝食を作ってあげて、熟女になった

ら大衆演芸の女形に、おひねりを投げたかった。

 全部どうってことない夢だけど、やりたかった……。


 涙する留奈を、優介が心配そうにのぞき込んだ。

「大丈夫?」

「んなわけねーだろっ」

 またしても清楚な美少女キャラをぶっ壊すセリフを吐いた。過度な不安、恐怖、

悲しみに襲われると、自己イメージを維持する力など無くなる。


 優介はこめかみにタラッと汗を流し、

「留奈、ごめん。みんな僕のせいだ。許してくれ」


「いいんだ! 困ってるお前を見て、放っておけなかった俺の情が仇になったのだ」

 任侠の世界にキャラがチェンジしている。優介は留奈のイメージを壊した責任を

痛感していた。


 付き合い出してから、第一印象が崩れることは良くある。

 今は大規模な雪崩が美しい森林を飲み込み、跡形も失くしたレベルだ。つまり留

奈は別人に――任侠世界の親分になっている。それでも、ここにいるのは自分の憧

れた留奈に変わりはない。


「君がどんな状態になろうと、僕は愛し続ける」

「うぜえよ!」

「君が不安な時は励まし、悲しい時は歌を歌い」

「音痴だろっ」

「恐怖におびえている時はギャグを飛ばし」

「ギャグより私を守れよ!」

「分かった。今夜一緒に寝てあげる」


 留奈は彼を思い切り引っぱたいた。ゾンビで感覚が鈍くなっているためか、優介

はそれほど痛くない。

「俺を殴って気が済むなら、いくらでも殴ってくれ」

「もういい!」

 留奈は駅に駆け込むと、電車に飛び乗った。

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