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追憶
彼らの事情も知らず、佳治は昼休みから路上ライブのことで頭がいっぱいだった。
「ネタは憶えたな?」
佳治は学食のカレーを口に運びながら聞いた。
「ああ。でも今日はやりたくない」
「なんで! また女の子の日か?」
「はははは、お前のギャグはマジ面白かった」
「なんで過去形で言うんだ」
優介はラーメンを一口すすり、
「学食の料理もうまかった……」
「だから、なんで過去形で言うんだよ!」
「それは――タコに聞け」
「またそれか」
優介は寂しそうに微笑み、
「短い人生だったが、幸せだった……みんなで汗を流した運動会。楽しかった修学
旅行。それらが今、走馬灯のように」
「なに一人で卒業式やってんだ。お前――まさか死のうなんて思ってるんじゃない
だろうな」
「いや、本当は死んでるんだが、今度はマジで死にそうなんだ」
「意味がさっぱり分からねー」
「とにかく今は漫才どころじゃないんだ。今日は勘弁してくれ」
佳治は渋々うなずいた。




