首謀者
頭痛薬を飲んだにもかかわらず、頭の中で半鐘が鳴っていた。
半鐘とは火の見やぐらに取り付けられた小さな鐘である。
昔は火災の発生を知らせるために、この鐘をたたいた。
たたき方で火災の発生現場の遠近を表し、たたき方が速いほど現場が近いことを
意味していた。留奈の頭痛は、「火の見やぐらから二、三軒先の家から出火」の乱
打状態だった。
顔をしかめて歩いていると、横から飛び出してきた自転車にぶつかりそうになっ
た。
「気を付けろ!」
会社員風の男が怒鳴った。
「てめーこそ!」
留奈が怒鳴り返した。頭痛のため、心に余裕がなくなっている。
「いやだ……美少女キャラが台無し」
留奈は、眉間にシワを寄せて校舎に入った。
教室の前では、今日も優介が漫才をやっている。ギャラリーも増え、重い足取り
で教室に入る留奈の姿も目に入らないようだった。
太った中年のオバサンのようにドサリと椅子に腰を下ろすと、留奈は深い溜め息
をついた。
(なんでこーなったの。私の青春はどこ!?)
もう四、五十年は激動の人生を生きてきたような疲れを感じていた。明らかに昨
夜の霊のしわざだ。今夜も出るのだろうか。
留奈が額に手を当てたその時、後頭部に視線を感じた。
ハッとして振り向くと、薄笑いを浮かべた沙織と目が合った。
留奈はすぐに視線を外して前を見たが、雷に打たれたような感覚に襲われた。
彼女が仕向けているのだ――自分の命を奪うために。




