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ゾンビの恋人  作者: 鳥原 麻生
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殺人依頼

 ラーナはカウンターに置いてあった水晶球を目の前にすえると、呪文を唱えなが

らのぞき込んだ。

「あら……隣にとてもきれいな子がいるわ。彼女かしら」


「きれいな子……って、どんな」

「卵型の顔に切れ長の目をしているわ。薄めの上品な唇」

(留奈だ)

 沙織はぶ厚い唇をかんだ。


「先生! それは同じクラスの子です! 留奈って名前の」

「あらそう。どういうわけか、今、その子が優介君の心臓を動かしているのよ」

「なんで!」

「ちょっと待ちなさい。よく調べるから」


 ラーナは眉間にシワを寄せ、水晶球をなで回した。数秒後、彼女はカウンターを

たたくと叫んだ。

「ちくしょう! やられた」


 沙織はコーヒーを噴き出し、

「先生、何をやられたんですか」

「他の魔女にやられたんだよ。フェニックス摩耶っていう魔女に。そいつがコント

ローラーをあんたから留奈に代えたんだ」


「それじゃ、いま優君の心臓を動かしているのは留奈なんですか!?」

 ラーナは口をへの字にして、うなずいた。


「そんな! それじゃ、私が優君を想わなくても、彼は死なないの!?」

 ラーナは再びうなずく。


「先生! 無責任にうなずかないでください」

「だって、あんたの指摘通りだもん」

「だもん――って、それじゃ、私には莫大な借金が残っただけになるじゃないです

か!」

 ラーナは何度もうなずく。


「うなずかないでっての! 私は得るものが何も無かったのよ! もう先生にお支

払いする義務は無いと思うの」

「何言ってるの。他の魔女が何をしようと、私の知ったこっちゃないわ。私はあな

たの依頼をちゃんと果たしたんだし、契約書も保存してあるの。あなたは法的にも

五百万を払う義務があるんですからね」

「そ、そんなっ……」


 沙織は両手で顔を覆って嗚咽しながら、

「他の魔女にそんな事をやらせるなんて……留奈の入れ知恵に決まってる……優介

の馬鹿がそんなこと考えつくわけない……留奈……許せない!」


 顔を上げた沙織の唇からは血が流れていた。さすがの魔女もギョッとして、なだ

めるように言った。

「落ち着きなさい! 私が何とかしてあげるから」


「何とかって、どうしてくれるんですか」

「もちろん、留奈って子に死んでもらうのよ。そうすれば優介も死んで、あなたも

彼への想いを断ち切れるでしょう」


 沙織は深呼吸すると聞いた。

「おいくらですか」

「そうねえ……五百万」

「またですか!」

「あのね、優介の時と同じで人の命を奪うのよ。しかも今度は悪霊の力を借りるか

ら、こっちも危険なのよ。五百万じゃ、安いぐらいなの」


「分かりました……せめて三百万になりませんか」

「値切り過ぎよ」

「それじゃ、四百万」

「四百三十万でどうだ」

「……結構です」

 ラーナはニタリと笑うと、契約書を出した。


 沙織は自分の名を書きながら、底無しの地獄に落ちていく気分になり、全身を震

わせた。

 ただの無邪気な高校生だったはずなのに、なんでこんな罪を重ねるような人間に

なってしまったのか。

 でも、今さら後悔しても遅い。ラーナを信じて全てを託すしかなかった。 

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