後悔
沙織は優介を脳裏から追い出す闘いを続けた。
勝彦の力ではとうてい無理だと悟り、イケメン俳優のブロマイドを壁に貼ったり、
シールを机やペンケースに貼ったりしたが、直接接触したことが無いためか、優介
の姿を追い出すまでには至らなかった。
優介には自分が励まし、入れ込んだ日々の思い出があるのだ。そう簡単に消すこ
とはできなかった。
他の男の映像に置き換えることが不可能と悟った沙織は、夜中に滝行のつもりで
シャワーを浴び、何時間も念仏を唱え、朝日を拝み、早朝からジョギングをし、乾
布摩擦をしたが、それでも優介の映像を消すことはできなかった。
「もー、どうしたらいいの!」
自己鍛錬でも解決できない事を思い知らされ、沙織はエル・ラーナのもとに駆け
込んだ。
「先生、助けてください!」
日曜の朝で、ラーナは化粧気の無いやつれた顔にネグリジェで出てきた。魔女と
言うより、どこにでもいるオバサンといった風情だ。
ラーナは不機嫌そうに顔をしかめ、
「何なの。今日はお休みよ」
「分かってますけど、どうしても相談に乗って欲しいんです!」
「しょうがないわね。入りなさい」
沙織を店に入れると、カウンターに入り、コーヒーを作り始めた。
香ばしい匂いがしてくると、沙織の気分も少し落ち着いてきた。
「さあ、どうぞ」
ラーナはミルクと砂糖を添えて勧めた。
「ありがとうございます」
「五百円よ」
「はい」
なんでも金を取る、と思いながら沙織はコーヒーをすすった。
今度の相談も高額の料金をぼったくられるに違いない。そう思うと気が重かった。
ただでさえ、三十までに五百万を払わなければならないのだ。
なんでこんな事をしてしまったのだろう。だって、あの時は苦しくて、その苦し
みから逃れたくて、それしか考えられない状態だった。そして、自分も優介も不幸
にする安易な方法を選んでしまった。
全ては苦しみに耐える強さがなかった自分のせいだ。でも、今さら後悔しても遅
かった。相談するのは目の前の強欲な魔女しかいないのだ。




