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ゾンビの恋人  作者: 鳥原 麻生
33/61

美しい魔女

 魔女・フェニックス摩耶の館は郊外の森の中に、ひっそりと建っていた。

 助手の若い女性に応接間に通された優介と留奈は、緊張の面持ちで魔女を待った。


 すぐに黒いドレスを着たアラフォー女性が入ってきた。

「ようこそ。フェニックス摩耶です」


 ふくよかな顔付きで三日月形の眉が美しい。その下に黒水晶のような大きな目が

あった。こちらの心を全て見通すような眼差しだ。これはスケベなことは考えられ

ない、と優介は気を引きしめた。


 それにしても、これだけ美しいならアラフォーでもアリだ。優介は思わずスケベ

なことを考えてしまった。摩耶が彼を見てクスリと笑う。

 しまった、バレたか。優介の心に動揺が走る。


 この非常時に当の優介がこんなアホなことを考えているなど全く気付かず、留奈

は真剣な表情で頭を下げた。

「先生、よろしくお願いします」


「ええ。私が見るところ、あなたのおっしゃる通り、優介さんは生ける屍――ゾン

ビになっておられますわね」

「やっぱり、そうなんですか!」

 留奈は唇を震わせた。


「可哀想な優介君……」

 留奈は泣き出したが、可哀想な優介君のほうは妄想を消すのに一生懸命になって

いた。

「確かにゾンビにはなっていらっしゃるけど、根は健康な男性なのよ」


 摩耶が薄笑いを浮かべた。意外な言葉に留奈が顔を上げ、

「それじゃ、優介君はHができるんですか?」

「それは駄目なのね」

 優介がガックリと肩を落とした。確かに自分でもそれだけの体力は無くなってい

ることは自覚していた。自分の生命を維持するのがやっとの状態なのだ。


「僕は……僕は……一生このままなんでしょうか」

「まあ、一回死んでますからねえ」

 再び肩を落とす優介。留奈が焦って彼の背中に手を当て、

「大丈夫よ! 先生、なんとか優介を助けてあげてください。お礼はいくらでもし

ます!」

「いくらでも?」


 摩耶が美しい眉を髪の生え際まで上げた。留奈はうろたえ、

「えっと……私も学生なので、その点を考慮していただければ」


「ホホホ、安心なさい。私は相談者から高額の相談料をぼったくるようなまねは致

しません。なぜなら欲望にまみれた心は魔に取り憑かれるからです。そして悲惨な

最期を遂げるのですよ。それゆえ私は純粋に人助けのために魔術を使っているので

す」

 留奈はホッとして涙を浮かべた。

「ありがとうございます……」

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