必死の説得
今朝も佳治は優介を校庭の片隅に連れ出し、説得を試みていた。
「頼む! 俺一人じゃ駄目なんだ。コンビで取れる笑いにはとても及ばない。お前
となら必ずメジャーで成功できる。なっ! お前だって、あれだけマジでやってた
じゃないか。漫才やらせてもらえよ、タコにお願いして」
「許してくれねって!」
「それはお前がマジで頼まねーからだ!」
「簡単に言うな! 沙織の機嫌を損ねたら、俺の命が」
「命? 命がどうなるんだ」
「それは――タコに聞け」
「またそれか」
「とにかく俺の深刻な事態は、お笑いのことばかり考えているお前なんかには分か
らねーんだよ」
「お笑いのことばかり考えて悪いか! 俺達は、お笑いに命を懸けていたんじゃな
いのか! それを今のお前は沙織の顔色ばかりうかがい、お笑いに対する情熱を失
っている。魔に見入られた子羊のように。神よ、この哀れな男を救いたまえ!」
佳治は天に向かって両手を上げた。
「サッカーボールに気を付けろよ」
「えっ」
佳治が周囲を見回すと、サッカー部のイケメンではなく、留奈が立っていた。
「おはよう」
留奈は寂しそうな笑みを浮かべ、優介を見ている。
「おはよう」
優介も寂しそうな笑顔だ。
「おはよう! 俺になんか用? 告りたいとか」
佳治は満面に笑みを浮かべて聞いた。死の影など微塵も無い陽気さに、優介はム
カついた。
「お前にじゃない。俺にだ。そうだろ?」
留奈が可愛らしくうなずく。
「佳治は邪魔だから、あっち行って」
言うことはキツイ。佳治はしぶしぶ去っていった。




