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ゾンビの恋人  作者: 鳥原 麻生
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迷惑なサクラ

 沙織に盗聴されたとも知らず、二人は駅前に立つと、家路を急ぐ通行人に声を掛

けた。

「漫才やりまーす!」

 会社員が苦笑して通り過ぎていった。そんなもん聞くより家で野球を見たほうが

いい――といった顔付きだった。優介は肩を落とし、

(そりゃそうだよな。シロウトのヘタな漫才聞くより、家に帰ればいくらでも面白

い番組がやってる)


「漫才やりまーす」

 めげずにもう一度佳治が声を掛けると、一人だけ足を止めてくれた。

 沙織だった。

「なんでお前がっ!」

 飛び上がる佳治に、沙織はタコのような口を無理にアヒル口にして可愛く微笑ん

だ。

「だって、優君が心配だったから」

「別に心配してくれなくてもいいよ!」

「早くやりなよー。見てるから」

「……」

 二人は困ったように顔を見合わせた。

「これじゃあ、校内ライブが小規模になっただけじゃないか」

 優介の言葉に佳治がうなずく。

「路上ライブの意味が無い」


「馬鹿ね、二人とも。一人でも面白そうに聞いていれば、だんだんギャラリーが増

えるよ」

「そうかな……」

「しょうがない、やろう。佳治でーす!」

「優介でーす!」

 沙織が大げさに拍手した。


「お前、彼女いる?」

「ギャハハハハハ」

 沙織が腹を抱えて笑う。

「いない。お前は?」

「ギャハハハハハ」

 サクラであることがバレバレだった。おまけに合いの手のように高笑いを入れる

ので、掛け合いのリズムが狂ってしまう。佳治はサッカーボールのように沙織を蹴

り飛ばしたくなったが、そうもいかない。


 二人は沙織の豪傑笑いに耐えながら、なんとか漫才を続けたが、最悪の事態にな

った。美人OLが優介の前で足を止めたのだ。


(か、可愛い)

 優介の頭の中は真っ白になり、セリフは夜空のかなたに飛んでいった。そして貧

乏揺すりが始まった。

「おい」

 佳治は宇宙語をしゃべる優介の脇腹を小突いた。沙織は焦って叫ぶ。

「優君、頑張れ!」

 サクラであることが完全にバレた。優介の症状はいつまでも治まらない。

 美人OLは苦笑すると、去っていった。


「あーあ、やっとのことでギャラリーができたと思ったのに」

 佳治がガックリと肩を落とす。

 視界から美女が消えると、優介は元に戻り、疲れ切ったように太い息を吐いた。

「今日は帰る」

 佳治も沙織も力無くうなずいた。

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