告白
「正直に全部話す。聞いてくれる?」
うなずく留奈を木の陰に連れてくると、真剣な眼差しで告げた。
「実はゾンビになったんだ」
留奈は茫然としている。
(こんなことを告白するつもりじゃなかったのに。『前から好きでした。付き合っ
てください』って言うつもりだったのに)
自分の運命はどこまで過酷なのだろう。幸せが来たと思ったら、それが不幸にな
る。
絵に描いたような悲劇の主人公だ。
「恐ろしい魔女の手によって、僕の心臓は止められ、今やタコの沙織の想いによっ
て僕の鼓動は保たれているのだ。なんと呪われた定めだろう。これが神の与えた試
練だとでも言うのか? 神よ、答えたまえ!」
天に向かって手を上げた優介の頭に、サッカーボールが当たった。
「いってえ~~~」
「すいません!」
サッカー部のイケメンが走ってきた。優介は顔をしかめてサッカーボールを蹴り
返そうとしたが、空振りになって仰向けに倒れた。
「優介君、しっかりして!」
イケメンは「すいません」を繰り返しつつ、ボールを蹴りながら行ってしまった。
「ゾンビになってから、すっかり運動神経が鈍くなってね」
優介はゆっくりと立ち上がりながら、自嘲気味に笑った。
「ふざけないで! そんな話信じられると思ってるの!?」
「信じると言ったじゃないか!」
「だって、ゾンビなんて」
「信じられないかい? この冷たい手と青い顔を見ても」
留奈はしばらく優介を凝視していたが、小さな悲鳴を上げると、鞄を地面に落と
して口を押さえた。
「分かってくれたかい?」
「信じられない……」
「本当は君が好きで、付き合いたかったんだ。でも、上がり症でちゃんと言えなか
った。ゾンビになった今、平気で言えるようになった。皮肉なもんだな。もう君に
愛されない生ける屍になって、ようやく愛を告げられるとは」
芝居がかったセリフを吐くと寂しそうに微笑み、踵を返した。
「私も優介君が好き!」
そう言って留奈が背中に飛びついてくることを期待したが、そんなまねはするわ
けなかった。
母性本能をくすぐる寂寥感を漂わせながら、ゆっくり歩いたが、「待って」とも
言われなかった。
優介は肩を落とし、そのまま校門から出ていった。




