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ゾンビの恋人  作者: 鳥原 麻生
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撃退

「さあ、練習だ」

 放課後になり、佳治にうながされたが、優介の目はまたもや沙織を追っていた。


 佳治を無視して沙織に走り寄ると(本人は全速力だったが、はた目からは歩いて

いるようにしか見えない)、愛想笑いを浮かべた。


「ねえ、沙織ちゃん。今日も駅前で漫才やるから、見にきてくれないかな」

「私がいると迷惑なんでしょ?」

「何を言ってるんだ。君はインサイドが生まれた時からの大切なファンだ。君に聞

いてもらって、ぜひとも感想が聞きたい」


「へえー、どーゆー心境の変化?」

 なるべく沙織を自分の監視下に置き、男が寄ってきたら撃退したいのだった。


「沙織は来ないで欲しいね」

 いつの間にか佳治が後ろにいて、勝手に断った。

「お前は黙っててくれ!」

 恐ろしい顔で佳治を睨みつける優介。何かこの世ならざる気配を感じ、佳治はギ

ョッとして口をつぐんだ。


「いいよ。優君がそんなに頼むんなら、見ててあげる」

 またまたわざとらしい笑いで調子を狂わされるのかと、佳治はげんなりした。


 佳治の心配通り、沙織はいきなり「佳治でーす」で笑った。次の「優介でーす」

で、さらに大きな声で笑った。他の見物人は失笑している。明らかにサクラだと分

かったのだろう。

 優介は穴があったら入りたい気持ちになり、マンホールを探したが、無かった。


 佳治はネタを進めるうちに、優介にいつもの元気が無いことに気付いた。もっと

も今日は朝から死んだようにおとなしかったので、想定内だった。やはり優介の身

に何かがあったに違いない。


(今日は駄目だ)と思いながらしゃべり続ける佳治の目の前で、想定外のことが起

きた。沙織に話しかけてきた若い男に向かって、優介が叫んだのだ。

「そのタコは俺の女だ! あっちに行け!」


 ギャラリーから笑い声が起きる。ギャグだと思ったのだろう。

 若い男は顔をこわばらせると、去っていった。


「落ち着いて落ち着いて、優介君」

 佳治は必死で相方をなだめたが、優介は肩に置かれた佳治の手を払うと、今度は

見物人に向かって叫んだ。

「やい! そこのタコみたいな女子高生は俺の彼女だから、誰も手を出すなよ」

 再びギャラリーから笑いが起きた。

 沙織はうれしそうな、恥ずかしそうな顔でうつむいた。

 

 一時は毛嫌いしていた沙織を「彼女」と宣言した優介に、皆が不審の念を抱いて

いた。その中でも一番おかしいと思っていたのは佳治だった。なにしろ自分の芸人

としての成功が懸かった大切な相方だ。それが元気を無くし、タコにつきまとい、

タコに声を掛ける男に異常なまでのジェラシーを抱く。明らかに今までの優介では

なくなっていた。


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