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ゾンビの恋人  作者: 鳥原 麻生
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異常な嫉妬

 教室に入ると、佳治がネタのことで話しかけてきた。二人でしゃべっていると、

沙織が教室に入ってきて、女子達とおしゃべりを始めた。そこへ一人の男子生徒が

加わった。安田隆という、ソース顔のイケメンである。


 優介はジト目で沙織と隆を見た。

「おい、聞いてんのか」

 佳治が話しかけたが、全く耳に入らない。そのとき隆が笑いながら沙織の肩に手

を置いた。 

(野郎)


 優介は優先席から立ち上がるお年寄りのようにゆっくりと腰を上げ、隆に近づい

た。そして沙織の肩に置かれた手を指差し、

「おい。何なんだ、これは」

 青白い顔に半眼で聞いた。いきなり殴りつけるような暴力的な行為はしない。


「へ?」

 隆はキョトンとしている。優介が沙織を嫌っていることはクラス中の生徒が知っ

ているのだ。優介は構わず沙織の肩から彼の手を外すと、凄みのある声で隆に言っ

た。

「沙織に近づくな」


「うわー、優介君、嫉妬してる」

 美奈子が手をたたくと、他の女子達もヒューヒュー言いながらはやし立てた。

 優介は拳を震わせながら耐えた。ふと顔を上げると、眉を寄せてこちらを見てい

る留奈と目が合った。

(誤解だ!)


 手話を知らない優介は指でバッテンを作ったが、留奈は意味が分からず、悲しげ

に目をそらした。

「タコなんか好きでも何でもな――――いっっ!」

 優介は、そう叫びたかったが、口をへの字にして我慢した。沙織に嫌われたら命

が無い。

 隆は怪訝そうな顔で自分の席に戻っていった。


 優介も自分の席に戻ると、佳治に胸をはたかれた。

「お前、何ふざけてんだよ!」

「ふざけてない!」


「ふざけてねえ? ウソつけ、沙織に嫉妬するなんてギャグそのものだろう」

「俺は真剣だ!」

「マジか。マジで沙織が好きになったのか」

「そうじゃなくて~~~」


 号泣したかったが、なぜか涙があまり出てこない。これでは演技のヘタくそな新

人俳優みたいだ。そう言えば、オシッコもあまり出ていない。心臓の働きが弱いた

めに新陳代謝もあまり行われていないのだろう。十六にして年寄りのような体にな

ってしまった。

(こんな事になったのも、みんなあいつのせいだ)


 優介は教室の左端に座っている沙織に憎悪の眼差しを向けた。しかし沙織は全く

気付かず、後ろに座っている男子としゃべっている。


 何を話しているんだ? まさかデートの約束か?

 優介は気が気ではなかった。

 心から憎んでいる沙織の男関係を気にしなければならないのだ。地獄のような心

境だった。


「もっともゾンビは地獄にふさわしい。フフフ」

「何言ってんだ。ネタか?」

「おら! いい加減にしろ、今井!」

 優介はよろよろと立ち上がると、沙織と話している男子に遠くから指を突きつけ

た。わざわざ歩いていく元気も無い。


 沙織はチラと優介を見ると、今井と笑い合った。

(わざとか)

 そうだ、わざと他の男子に気のある振りをし、自分をやきもきさせて喜んでいる

のだ。なんと恐ろしい女に引っ掛かってしまったのだろう。初めは天使だと思って

いたのに……。

 優介は、その日は一日中絶望のどん底にいるような気分で、授業は全く上の空だ

った。


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