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ゾンビの恋人  作者: 鳥原 麻生
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占い喫茶

 優介と同じように沙織も落ち込んでいた。

 気に入られようと尽くせば尽くすほど優介に嫌われていく。そうかと言って彼を

あきらめる気にもならず、自分でもどうしていいのか分からない状態だった。


 ネットの占いをやっても、「相性最悪」と出るのがほとんどだった。それでも努

力によって仲良くなれるのではないか――という希望を捨てられなかった。


 自分が初めて好きになった男性であり、この世で唯一の男性であるかのように思

いつめていたのだ。ストーカー化する人間の陥る視野狭窄症だった。


 沙織は直接占い師に相談したこともあったが、やはり「大凶の相性」と言われて

関わらないように忠告され、憤慨して席を立った。


 自分は、相性だの結果だのを占う以上の力――二人の仲を成就させてくれる力を

求めているのだ。

 沙織は、その日の夜も物陰から優介と佳治の漫才を見ていた。ギャラリーも増え、

きれいな若い女性も多かった。

(優君がイケメンだからだ)


 そのうち彼女達が「おねえさんが教えてあげる」かなんか言いながら、優介に手

を出すのでは、と気が気ではなかった。


(ああ、嫌らしい。彼は私のお陰でまともにしゃべれるようになったのよ。いわば

私は優介を作った親じゃない。その親に対する恩も忘れて、見ず知らずの女達と付

き合おうっての?)


 沙織は自分の大切な息子が嫌らしい大人の女達に汚されていくような気がして、

ジェラシーと悲しみで胸がキリキリと痛んだ。 


 こんな症状は医者に行っても治してもらえるわけではない。過活動膀胱や爪水虫

とは違うのだ。


 漫才が終わっても沙織はそのまま家に帰る気になれず、駅周辺の繁華街をうろつ

いた。未成年の身でやけ酒を飲もうというのではない。相談相手が欲しくて占いの

館を探したのだ。

 表通りに面した派手な占い館には入る気がしなかった。あまり客のいなさそうな

所で、母子関係のような親身な相談を受けたかった。


 沙織は暗い裏通りに入っていった。

 飲み屋はたくさんあったが、占い館などなさそうだった。

 あきらめて帰ろうとしたその時、「占い喫茶L」という看板のついた小さなビル

を発見した。

(ここだ)

 沙織は恐る恐る木製の古びたドアを開けた。


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