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「おばあさん、こんな山の上にひとりで、さびしくないの?」
「さびしいものか! まいばん星たちが話しあいてになってくれる。こうるさいどうぶつたちより、よっぽどいい!」
「でもね、おばあさんはひとりでよくても、おばあさんのまつぼっくりたちは、かたい岩にねをはやすことができないで、かれていってしまうよ」
見ると、岩の上におちたまつぼっくりが、そのままカラカラにかわいて、たくさんころがっています。ばあさんの立っているばしょだけは、わずかなすきまから、下の土へとつながっているのでしょうが、ほかはどこもかたい岩がおおっているばかりでした。
子ウサギのことばに、まつの木ばあさんは、きゅうにかぼそい声になりました。
「そうさのう。たしかに、それはずっと気がかりだった。わたしのいのちは、わたしかぎり。つぎにうけわたしてやることはできない」
強い風にふかれつづけて、くねくねとまがったみきやえだはシュンとして、かわいたまつぼっくりを見下ろしているようでした。
「ぼくたち、おばあさんのまつぼっくりをゆずってもらいたいんだ。星となかよしのおばあさんのまつぼっくりをつかって、もうすぐいのちを終えようとしている、かしの木のおじいさんのかれかけたえだに、星をよんでかざってあげたいの。
おれいにそのまつぼっくりたちは、やわらかい土にうめてあげるよ。この岩山から見えるあのあたりに。ちゃんとめがはえてそだったら、おばあさんにも見えるでしょ? こんなにきれいな赤い色だから」
それを聞いて、まつの木ばあさんはえだをふるわせました。
「やさしい子じゃのう。わかった。わたしのまつぼっくりたちを、おまえたちにまかせよう」
シカのせなかからおりたサルたちは、まつの木ばあさんにあいさつすると、するするとまがったえだによじのぼって、よくそだったまつぼっくりをえらんで、ほおります。下では子どもたちとシカたちがそれをひろって、イノシシのせおったかごに入れていきます。
まつの木ばあさんは、よじのぼったサルたちがくすぐったくて、えだをゆすりました。すると大きなまつぼっくりが、いくつもころころところげおちました。
いくつもあるかごが、あっというまにいっぱいになりました。
おれいを言って、山を下りようとするどうぶつたちに、まつの木ばあさんは言いました。
「よろしくたのんだよ。ここからわか木たちが大きくそだつのを、楽しみにしているからね」
「うん。たくさんそだつように、いのっていてね」
ウサギの子は、手にかかえた大きなまつぼっくりを、あたまの上にかかげてこたえました。




