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それからは、かしの木じいさんのおかにちかづくどうぶつたちはいなくなりました。
空をよこぎる鳥たちさえも、わざわざおかの上をはずれて、大きくとおまわりをしてとんでいくほどです。わたり鳥たちも、森にすむ鳥たちからうわさをきいて、わたる道すじをかえました。
とおくからふとながめると、しゅういの森からすっかりへだてられてしまったようなみどりのおかに、かしの木じいさんはひっそりと立っています。
どうぶつたちも鳥たちも、じいさんのことをおそれるあまり、そのすがたをぶきみだとかんじても、さびしげだとは思いませんでした。
秋がふかまるころ、かしの木じいさんのえだできずついた子ウサギの足は、ようやくもとどおりにうごかせるようになりました。
足のけがと、やさしいじいさんにとつぜんおこられたことにきずついて、しばらく口がきけなかった子ウサギは、ようやく話せるようになりました。
子ウサギは母さんウサギに言いました。
「じいさんはわるくないよ。ぼくがねむっているじいさんの耳もとで、とつぜん大声を出したのがいけないんだ。それよりもじいさんのねにのったとき、ぼくがあるくだけでぼろぼろとかわがはがれてしまったんだ。じいさんはびょう気なのかもしれない。大ザルのおいしゃさんにみてもらえないかな?」




