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長い長い冬をすぎ、山やまは雪どけをむかえました。
とけた雪の間から、小さなみどりのめが、あちこちかおを出しはじめました。
雪どけでできた小さなながれをおうようにして、子ウサギは、ぴょんぴょんとはねていきます。
やがて、かしの木じいさんのおかのふもとにたどりつきました。
「春がやってくるまで……」
じいさんとのやくそくはまもりとおしました。
子ウサギは、ひさしぶりにそのおかに上っていきました。
おかのちょう上に、かしの木じいさんのすがたはなく、ねもとからおれた大きなみきがよこたわっていました。
子ウサギは、立ち止まって耳をひくひくとうごかし、なきそうな顔で、そのすがたを見つめていましたが、やがてごくんとつばをのみこんでかくごをきめると、大きなみきのざんがいにちかづいていきました。
かげになっているところは、まだかたくなった雪がおおっていますが、日の当たるところは、しっとりとなめらかな木のはだがのぞいていました。
大きなねのまわりをはね回って、ねのわれ目をのぞいた子ウサギは、「あっ」と声を上げました。
そして、いちもくさんに、すあなまでとんでかえっていきました。
子ウサギが見たのは、大きな大きなねのなきがらのかたすみから、わかみどりのほそいめが顔を出し、空にのびようとしているところでした。
おわり