勉強
「あんたさぁ、私の話聞いてる?」
「………」
「ちょっと! あんた、お姉ちゃんの話が聞けないって言うの!?」
「………」
「いつまで無視するつもり!? ちょっと! 聞いてるの!!」
「………」
「話、聞きなさいよ!! 聞きなさいって言ってんの!!」
「だぁ!! うっせぇ!! 見て分かんねぇか!! 勉強してんだよ! 勉強! 邪魔すんなよ!!」
俺は参考書のページをめくると姉にそう叫んで、また参考書に目を落とした。
「勉強ぉ!? あんたが? 見てるふりでしょ! 私の話聞きたくないから!」
「うるせぇ!! 勉強の邪魔だ! 出ていけ!!」
俺が大声で怒鳴ると、姉は急いで部屋を飛び出して行った。
『ふぅ! これで静かに勉強出来んな』
と、その時部屋の外から大きな声が聞こえてきた。
「お母さ〜ん! 大変!! 大変だよ! アイツが!! アイツが真面目に勉強してるの!」
『なんだよもう!! 何故勉強してるくらいで、そんな言われ方しなきゃいけねぇんだ!』
俺はムカついたが、今は勉強に集中しようとした。
「えぇぇ!! あの子が勉強!! 嘘でしょ!! お父さん! ちょっと! 聞いた!? あの子が真面目に勉強してるんだって!」
『母さんまで……。大袈裟な……』
「何!! アイツが勉強しているのか! 母さん! 今すぐ救急車を呼びなさい!」
「分かったわ! あの子、頭がおかしくなったのかしら……」
『父さんまで……。って何!? 俺の扱いってどうなってんの!?』
この時既に、勉強など、もうどうでもよくなっていた。俺は参考書を閉じ、頭を抱え込んでいた。
「お母さ〜ん! 大変!! 大変だよ! アイツが! アイツが勉強のし過ぎで頭抱え込んでる!!」
『てめぇらの……せいじゃねぇ……か……』
いつの間にか、俺の目には涙が溜まっていた。