最終回
桜舞う季節の少し前、俺は高校生を終了した。一年間がこんなに短く感じたのは初めての経験だった。遊ぶ事も忘れ、苦手な英語の克服に全力で取り組み、気が付けば学年上位という成績に自分自身驚愕した。それもこれも、母のあの一言から始まったのだと思うと、父に感謝の気持ちすら覚える。
「あんな風になりたくないでしょ!」
と言っていた母。
「こんな風になるなよ!」
と言っていた父。
その結果、志望した大学の合格発表の日、母と涙を流して喜んだ。
そして今日、この桜舞う季節に俺は新たな出発をする。
行く先に広がるのは、果てしない広野のような学問という壁。それを、これから登って行かなければならない。まるで、危険なロッククライミングをするかの如く。『医者になる』そんな、途方もない夢に向かって進んで行くんだ。そう、こんな目眩さえも乗り越えて!!
『母さん……、父さん……、アネキ……、今までありがとう。これからもっと頑張って、必ず医者になってみせるからな!』
「ねぇ……。ねぇってば! アンタ涎垂らして何をニヤニヤしてるのよ!! 医者になるんでしょ!! もう少し真面目に頑張りなさいよね!」
いつの間にか隣にいたノックを知らない女が、言いたい事だけ言って出て行った。
『いいじゃねぇか!! ちょっとくらい幸せな夢見たってよ!』
まあいいさ。これくらいが俺らしい。なぁ、そう思うだろ!? ………勉強しよーっと。
ご愛読頂きまして、誠にありがとうございました。
ただの短編を連載にしただけなので、前後の繋がりが特になく、面白みに欠けたかもしれません。
けれども、最後までお付き合い頂いた皆様には、感謝でございます。
これまで本当にありがとうございました。