団欒
『【類は友を呼ぶ】そんな言葉がある。最近思うのだが、俺は一体誰に解説しているのだろう……。まぁ兎にも角にも【類は友を呼ぶ】似たようなヤツが集まるっていう例えだ。例えば俺の家族がそうなのか? いや俺の家は【烏合の衆】? コレも違うな。【鳶が鷹の子を産んだ】……う〜ん、誰のどこが秀でているのか分からない。【蛙の子は蛙】……コレが一番しっくりくるか……』
今日は久方振りの一家団欒。いつもはバラバラの夕食に全員勢揃いしたのだ。
「どうだ、勉強は進んでいるか?」
いつもバラバラだから、話す事が見付からない。先陣を切って、向かいに座っているブリーフ一枚でメシを食う変態……いやいや、父さんが訊いてきた。
「ぁあ。バッチリ!」
と適当に答える。
「まぁ……、部屋に行く時はいつも勉強してるわね」
と隣のノックを常識と言いながら、ノックを知らない女。……アネキが、疑いの眼差しを投げ掛けてくる。
「ぁあ。バッチリ!」
答えるのが面倒臭い。
「お父さんもお姉ちゃんも疑い過ぎよ。この子はやれば出来る子なんだから……」
斜め向かいの普段はボ〜っとしている癖に、他人の悪口(特に父さんの)には饒舌になる俺の家では、マトモに分類されるであろう母が、二人を諭している。
「ぁあ。バッチリ!」
とりあえず、言っておく。
「アンタねぇ……。さっきから聞いてれば、『ぁあ。バッチリ!』ばっかり言って!! ちゃんと聞いてるの!」
突然、姉がキレた。
「ぁあ。バッチリ!」
コイツに答えるのが面倒臭い。
「おい! お姉ちゃんが言っている事が分からないのか!」
ブリーフ一枚の変態……いやいや、だから父さんに怒鳴られた。
「ぁあ。バッチリ!」
今、俺に話し掛けるんじゃねぇ!
「二人とも、邪魔しちゃダメよ。この子もちゃんと聞いてるわよ」
母が助けてくれた。
「ぁあ。バッチリ!」
『良かった』と胸を撫で下ろす。
「アンタ!! 久しぶりの一家団欒でしょ!! こんな時くらい勉強止めたら!!」
姉が突然、参考書を取り上げた。
「アネキ! 何すんだよ!! 今大事な文法を頭に入れてるトコなのに! 返せよ!」
取られた参考書を取り返そうとすると、姉は参考書を一目見て、
「これ何?」
と訊いてきた。
「参考書」
と答えると
「アンタ……高2よねぇ?」
と言ってくる。
「一応……。年齢的には……」
と答えると、
「これ何?」
と同じ事を言う。
「参考書」
と同じように答えると、
「いつの?」
と訊かれた。
「………中2……」
と答えた途端、
「アンタ本当に大学行く気あんの!? ってか医師なんかになれんの!?」
と大声を出された。
「お姉ちゃん。コイツも頑張っているんだ!」
と父さんが言ってくれる。
『パンツ一枚で言われても、説得力が……』
と思っていると、
「そうよ。この前まで小学5年の理科を一生懸命勉強してたんだから……」
と母さんも助け舟。
『てか母さん、それ言い過ぎ……』
と思っていると、
「馬鹿馬鹿しい! ごちそうさま!」
と姉は箸を置いて部屋へと戻っていった。
『うるせぇ!! 英語は……苦手なんだ! その他の科目は、もう、高校を卒業してんだよ!!』