静寂
『静かだ。本当に静かだ。家族が一人抜けるだけで、こんなに静かになるものだろうか……』
姉は新しい彼氏と同棲するらしく、昨日荷物をまとめて出ていった。なんだかウキウキした姉を見送った時には、『これでやっと開放される』と思ったのだが。
『ハァ……。静かだ。勉強……でもするか』
教科書と参考書とノートを机の上に並べ、ページを開くと問題を解きながら書いていく。スラスラと問題を解けるのだが、なんだか物足りない。
『いつもならここで、「アンタ何してんの?」ってノックもせずに入ってきたアネキが邪魔してくるんだけど……。ハァ……静かだなぁ』
頬杖を突いて、勉強などそっちのけでボ〜っとしていた。
コンコン。とドアをノックする音が聞こえる。
『誰?』
と思いながら、
「誰ぇ〜。入ってぇ」
と返事する。
入ってきたのは父だった。
「どうした。ボ〜っとして。姉ちゃんか?」
と聞いてくる。
「うん。まあ……」
と返事をすると、
「まあ、そんなにクヨクヨするなよ。死んだ訳じゃないんだから」
と言って出ていった。
「死んだ訳じゃ……か……」
と思っていると……
『う!! 臭っ! 臭ぇ!! 父さん、マトモな事言って、屁こいて出て行きやがったな!! く、臭ぇぇぇ!!』
姉がいなくなっても、俺の平穏はない………らしい。