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 『【猿も木から落ちる】【弘法も筆の誤り】という。これは、どんなに卓越した者であっても、失敗する事はある。だから、素人が失敗をしたからと言って恥じる事もなければ、失敗により挫折する事もないという事だ。だから、俺が失敗したところで、誰も俺を咎める事なんて出来ないんだ』


 姉はノックを知らない。他人の部屋に部屋に入る時、まるで自分の部屋に入るかのように普通に入ってくる。だから、今だって気が付いたら、もう俺の横に立っている。


「ねぇ……。何、これ?」


姉は机の上から一枚の紙を取り上げた。


「紙」


俺はもう答えるのも億劫なので、愛想なく答えた。


「紙って……、アンタ」

呆れて何も言えないようだ。


『うるさいから、そのまま黙ってろ。そして、部屋から出ていけ』


と思っていると、姉は次第に顔が怒りだし、


「紙は分かってるわよ! 何の紙なのよ!!」


と怒鳴ってきた。いつもの俺なら、ここでキレて怒鳴ってしまうのだが、今日は怒る気にもなれなかった。


「テスト」


また愛想のない返事をして、片肘を突いたまま姉を見る。


「そんなの分かるわよ!!」


そう怒鳴って、姉は部屋を飛び出していった。


『まただよ。「お母さ~ん!」て言うぞ』


と思っていると、案の定


「お母さ~ん! アイツ英語のテスト0点だよ~!!」と聞こえてきた。


『ほらね。まっ、いいさ。……っと俺も行かないとな』


と思うと、机の引き出しから数枚の便箋の束を取り出すと、台所まで行った。


「アネキ! 彼氏にフラれたからって俺に八つ当たりするなよな!!」


そう怒鳴ると、姉は


「どうしてそんな事アンタが知ってるのよ!!」


と怒り狂っている。俺はポケットの中から、さっきの便箋の束を取り出すと、机の上に置いた。


「な、な、なんでアンタがコレ持ってるのよ!!」


と机の上から便箋を取り上げると、自分のポケットにねじ込んだ。


「アネキの机の上にあった」


そう答えると、


「アンタ、私の部屋に勝手に入ったの!! 部屋に入る時はノックくらいしなさいよね! 常識でしょ!!」


と、怒鳴り散らし、怒り狂っていたが、


『人の事言えんのかよ……。人のふり見て我がふり直せ。常識が聞いて呆れる』


と思って、台所を後にした。後ろから、負け犬の遠吠えにしか聞こえないような罵声を聞きながら……。










 『危ねぇ! アネキ、サンキュー。これで今回の0点のお咎め無しだな。アネキ。すまん!』



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