作文
俺の家族を紹介します。
初めにアネキ。いつも俺の事をバカにしてくる。遠回しに言うので、腹が立つ事もしばしば。でも、仲が悪い訳ではない。俺はそう思っている。
次に母さん。どこから見ても、ただの天然。姉の言う事も、俺の言う事も聞いてるようで聞いてない。天然だから、突然訳のわからない事を言うこともよくある。
そして父さん。仕事以外は、ただのバカ。俺が言うのも何だけど、家族の前で意味不明な事を言ったり、突然とんでもない事をする。よくあれで、大黒柱が務まるなあ。
そして俺。この家の中で一番マトモ。考え方もやる事も。マトモ過ぎて、マトモじゃない人達には理解出来ないようだけど。
「ねぇあんた。何してんの?」
『ほら来た。毎回の事ながら、この女はノックも知らねぇのか!』
突然俺の横に現れた姉が尋ねてきた。
「何って宿題の作文」
今日はかなりマトモな事を言っている筈なので、姉は何も言い返せない筈だった。
「作文って……。家族の紹介してどうするのよ! しかも、むちゃくちゃな」
勝手に入ってきた挙げ句の果てに、勝手に人の作文を読んで、何かほざいてやがる。
「作文って、文を作るから作文だろ。じゃあ、これだって立派な作文じゃねぇか!」
今回の俺はマトモだ。胸を張ってそう思った。しかし姉は、
「あんた、相当のバカだわ……」
そう言い残して部屋から出ていった。
『あの女は……、いつもいつも。言いたい事言って出ていきやがる。でも……俺、何か間違えてるのか?』