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レディ・ヴィエラは揺るがない  作者:
幼少期-王都編-
3/6

美の基準


 ヴィエラ・ル・ルナリエ・グラディアスにとって、自分に群がって来る人間は『美しいか』『そうでないか』の二種類に分けられる。


 公爵である父、アルノア・ロ・ヴァルディア・グラディアスと、母親であり元王女のセラフィア・ルファリエ・エルドリア・グラディアスは間違いなく『美しい』側の人間だ。


 軍を束ねるという、一見すると諸刃の剣でもある仕事を王家に疑われることなく真っ当し続けている。その重すぎる重責に屈することなく、周囲に信頼される父親がどれほど頼もしいことか。

 課せられた責務を果たすための覚悟もあれば、多くの家門を束ねる度量と決断力、責任感も持っている。

 それを支える母もまた、元王族として揺るがぬ存在として、女主人として、家門の女たちを纏めている。


 この姿を『美しい』と言わずしてなんと言おう。


 そして二人の兄もまた、形は違えど輝きはある。


 長男のエルディオン・ラ・ヴァルディア・グラディアスは気性こそ穏やかで争いごとを厭う性格だが、内務に対する姿勢は真摯だ。

 数字の裏に隠された領地民たちの生活を少しでもよくしようと、常に『何かいい方法はないか』と考えている。剣を振るうセンスはなくとも、領地民に慕われるだけの人間的な魅力は持っている。

 面倒見もよく、何より身内には優しい。その優しさが軍事系家門にとっては致命的ではあるのだが、公爵家として数多の領地を統括するための交渉力は持っている。


 そう言う意味では兄も『必要な存在』であり、自身の長所と短所も理解し、それを生かしている。十二分に『美しい人』だ。



 次男のイリアス・ラ・ヴァルディア・グラディアスは飄々とした部分があるが、その実かなりの野心家だ。ヴィエラが生まれるまでずっと兄の代わりに公爵家を継ぐ気でいた。

 と言ってもそもそも長男のエルディオンが剣のセンスがないので、実質騎士団を率いるであろうイリアスが自動的に公爵になった可能性は高い。

 だが王家の血を濃く引き継いだ優秀なヴィエラが生まれたことで、イリアスは「騎士として生きる」と、剣の道に生きることを決意した。


 剽軽さに隠された高潔さと、騎士たちを束ねるだけのカリスマ性。それらを持ったイリアスもやはり『美しい人』である。



 そんな人々に囲まれて育ってきたからこそ、ヴィエラは『汚い』考えを持つ人間に対してかなりの嫌悪感を抱いてしまう。これはもう細胞レベルと言ってもいいほどで、全身の鳥肌が立つのは勿論、その日着ていたドレスすら焼き捨てたくなるほどだった。


 潔癖症もここまでいけばもはや病気である。


 そんなヴィエラが母親に連れられて参加したのは、貴婦人たちが集う昼のお茶会だ。夜会と違ってアルコール類は出ず、話題も薄暗いものよりゴシップ系が多い。それでも情報収集に欠かせない会であることは分かっているので、ヴィエラは笑顔でやり過ごそうと思っていた。


 だが蓋を開けてみれば「ヴィエラ様」「ヴィエラ様」とコバエのようにしつこく語り掛けて来るバカばかり。どうすれば公爵家の名前を借りられるか、味方になって貰えるか、そんな欲望が透けて見えて心底気持ち悪かった。

 時には「うちの息子はヴィエラ様と同い年なのですよ」と婚約を仄めかしてくる愚か者もいて、ヴィエラはあまりの気持ち悪さにティーカップごと中身を顔面に投げつけてやろうかと思ったほどだ。


 ヴィエラは見た目こそ天使と疑われるほどに美しいが、内面はとんでもなく苛烈だ。

 そのため一度でも『気持ち悪い』と思った相手は徹底的に嫌う。もしも相手が心を入れ替え、本当に『美しい存在』になれば気も変わるだろうが、そんな人間は見たことがない。

 だからこそ近付いてきた人間を『気持ち悪い』と思えば避けてきた。それが許される立場であったし、誰も文句を言うことは出来なかった。


 そう。一部の人間を除いては。



一旦ここで区切ります。次回、ヴィエラの天敵現る。

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