あきれる決意
桜花に見限られてからというもの、直哉はずっと悩んでいた。
──どうしたら俺の本心が伝わるんや…
「こんなとこで辛気臭くすんのやめてもらえる?」
昼休みに中庭のベンチで頭を抱えていると、たまたま通り掛かった琳子がはぁ、と呆れながら話しかけてきた。
「仮にもあんたはアイドルなんだから、そんなドンヨリーヌに取り憑かれたんかってなるくらいのドンヨリオーラを身に纏わないでよ。話聞くからさ」
「琳子ちゃん…」
琳子の言葉に甘えて、今に至るまでの始終を話した。
「つまり…高倉はサクラのことを好きで好きでたまらないのに、サクラは全然気持ちに気づいてくれない。それで挙句の果てには全力で拒否られたと」
「その通りです」
改めて言葉にされたことによって余計に心に突き刺さり、項垂れる直哉を横目に、琳子はより追い打ちをかけた。
「てゆか、そもそもの話。全然気づいてくれないって言うけど高倉はサクラにどうアプローチしたの?」
「アプローチ…」
「まさかとは思うけど、どストレートに好きって言ってない?」
「言わなくても伝わるかと思って」
琳子は呆れすぎてため息すら出なくなっていた。
「呆れた。高倉あんたね、小さい頃からサクラと仲良かったんじゃないの。サクラが超鈍感な子って知ってるよね?ストレートに言わなきゃ伝わるもんも伝わらないわよ」
「……そうかもしれん」
直哉は小さくうなだれ、拳をぎゅっと握った。琳子の言葉は耳が痛い。けれど同時に、それ以上に正しいと感じてしまう。
「高倉」
「ん」
「好きなら好きって言いなさいよ。回りくどい態度で“察して”なんて無理。あの子は天然というか、自分が好かれてるなんて思いもしないタイプなんだから」
「……」
「でなきゃ、あんたこのままずっと後悔し続けるよ」
琳子はそう言い残して「じゃ、頑張んなさい」と手を振り、購買へと歩いていった。
直哉はベンチにひとり残され、しばらく動けなかった。けれど、胸の奥にあった重苦しい霧が少し晴れた気がした。
──伝えなあかん。はっきり、まっすぐ。
その思いだけを胸に、放課後のチャイムを待った。
夕暮れ。昇降口で靴を履き替える桜花に、直哉は真正面から声をかけた。
「桜花」
「……なに?」
警戒するような視線。それでも直哉は逸らさなかった。
「俺な、ずっと…桜花のことが好きやねん」
短く、けれど力強く言い切る。
桜花の瞳が大きく揺れた。驚き、戸惑い、そしてすぐに怒りの色が滲む。
「…まだ、分かってないの?」
「え?」
「この前あれだけ言ったのに。私はLUMINOUSの、倉田ナオの“ファン”なの。アイドルとしてのあなたを応援したい。だから、もうそういうこと言わないでって言ったよね?」
桜花の声は震えていた。押し殺した涙と怒りが混じったような響き。
「……でも俺は──」
「でもじゃない!」
桜花は拳をぎゅっと握りしめ、直哉を睨んだ。
「私はただのファンでいたいの!あなたの特別になんてなっちゃいけないの。だから、もうやめて」
その拒絶の言葉に、直哉の胸が深く抉られる。
けれど次の瞬間、衝動的に口をついて出た。
「──ほんなら、俺アイドル辞める」




