表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/21

アラタナ闘いへ

ピーピーという電子音が耳に響く。

気が付くと、轟道は白いベッドで横になっていた。


(あれ、ここは......?)

意識がぼんやりとしていながら、体を起こす。


しかし、そんな中で轟道に飛びつく者がいた。

「轟道さん! 起きたんですね......良がっだぁ!」

日本代表審判の神橋である。


「おっと、神橋君か......なんで、そんなに泣いてる?」


「そりゃあ、急に倒れだんでずもん。心配にだっでなりまずよ」

神橋は涙と鼻水でぐずぐずになっている。


「俺はどのぐらい寝てた?」


「えっど......二日ぐらいでずかね」


「......俺にしては、結構短い方か」


「え......?」

神橋はその言葉の意味がよく分からなかった。


「神橋君、君も見てたとは思うが、ルウェットは相当な化け物だったよ」


「そうですね。流石、『最強』としか」


「腕力は類を見ないレベルで、耐久力も並のアスリート以上。その中でもえぐかったのが、脚だ。自分でも俺の反応速度はピカイチだと思っていたんだが、それを遥かに凌駕してきよった」


そう、ルウェットの本気の加速は、轟道が視認すら出来ず、音を拾うことでようやく、反応出来るほどだ。

それが今回の戦闘で、一番の障害だったと言って良い。


轟道は確かに勝った。

しかし、その当人は納得いっていないような様子だった。


「......轟道さんは、もっと強くなりたいんですか?」

それを見抜いたのか、神橋が質問する。


「愚問だな。俺は死ぬまで強くなり続けるつもりだ。今回ので自分の弱点が良ぉく分かった。まずはそこからだろうな」

轟道は色々な感情が渦巻いた末、(うつむ)く。


「俺のことをそこまで評価してくれるとは、嬉しいじゃねぇかぁ!」

聞き覚えのある声だ。

右の方から聞こえた。


ベージュのカーテンから現れるのは、同じく真っ白なベッドにいるルウェットだった。

そして、その審判もいる。


「あー、さっきのは撤回だな」

轟道はルウェットから視線を逸らした。


「なんでだよ!?」


「お前は褒めたらダメなタイプだろう」


「そ、そんなことねぇし......?」

ルウェットはここに来て、意地っ張りを発動させる。


「まぁいい、ルウェットよ。今回、俺と闘ってどう思った?」


「どう思ったって......弱い奴が強い奴に負けただけだ。なにも感想はねぇな」


「それは違う。一回でもミスをしていれば、負けていたのは俺だ」


轟道は今回、何度も奇跡を起こし続け、お互いギリギリの勝負に持ち込ませた。

しかし、その分、ルウェットという障壁が分厚かったということだ。

あの試合、勝敗がどちらに転んでもおかしくはなかった。


「それも違うだろ。重要なのは結果だ。その結果でアンタは勝って、俺は負けた。実際なら、俺は死んでる。死んでる時点で過程なんかどうでもいいんだよ」

ルウェットは辛気臭そうにそう話す。


「いや、過程が一番重要だと思うんだが......」


「やっぱ、アンタとは合わねぇわ!」


「お、今度はこの価値観についての闘いか? 受けて立とう!」

病室にて、喧嘩勃発!? しそうになったところで審判二人が間に割り込む。


「ちょっと、轟道さん! ここでやっちゃったら、永眠しかねませんって!」

「おい、それはどういう意味だ」


「ルウェットさんも! 今闘ったら、パルチザンが六等分にされますよ!」

「ちょっと、聞き捨てならねぇな?」


その行動は怒りの潤滑油でしかなかった。

しかし、『最強』の二人は、まるで宇宙空間かのように静まる。


「やめだやめだ。こんなことしても(らち)が明かねぇ」


「ああ、そこだけ! は同意見だ」


「あ、そういえば、ミスター轟道に言いたいことがあったんだった」

ルウェットは話の転換を図る。


「ほう、なんだ?」


「俺を弟子にしてくれねぇか?」

ルウェットが発するは唐突な弟子入り。


「ん.......? はァ?」

轟道は状況が全く呑み込めていなかった。


果たして、ここからどうなるのやら.......


一方、『進世界』では次の対戦が決まっていた。

相対するのは、シンガポールとフランスである。


まずはシンガポールを覗こう。

シンガポール『最強』は自国の軍基地にいた。


「九六、九七、九八、九九、一〇〇......」

軍服を着た褐色肌の男が腕立て伏せをしている。


「グライ、いつもよりセット多めじゃねぇか。緊張してるのか?」

大勢の軍人の中の一人がそう訊いた。


「うん、ジェニー。そうだよ......ワクワクもあるんだけど、こういう時って緊張が勝っちゃうよね〜!」

グライは頭を(さす)りながら、明るく答えた。


「グライなら大丈夫だろう! 俺たちよりも強いんだからな!」

そう、ゴツい軍人が言う。


「試合が一瞬で終わるかもな? もちろん、良い方でだけども」

金髪の軍人が軽く笑いを交えて、発する。


そこに一人の男......

「皆さん。事あるごとにグライグライとか言ってますけど、本当に強いんですか? 経験だって、皆さんの方がしているはずですよね?」

明らかにグライを下に見てる。


「新人! 一回、闘ってみるか? そうすりゃ分かる。グライの理不尽さが」


「逆に良いんですね? 試合に出れなくなっても知りませんから」


「ボク、なにも言ってない.......まぁいっか」

グライが会話に参加することなく、エキシビションマッチが始まる。


試合のゴングはない、そして、新人が飛び出す。


「喰らえ!」

木のナイフを片手に攻撃を仕掛ける。


(ちょっと、大振りかな)

グライは懐からなにかを取り出し、ナイフを粉々にすると、新人の首元に肘を持ってくる。


「カッ......」

新人は突進の勢いで逃げれず、自滅した。


「ほら、理不尽だろうって、聞いてないな」


「グライ、そろそろ時間だ。ウォーミングアップももう良いだろ?」

ジェニーはグライを待つ。


「頑張れよ! シンガポールの希望!」

「死ぬんじゃねぇぞ?」

「絶対、勝てよ」

と、大勢の軍人がグライの背中を叩く。


「皆、ありがとう! よし、行こうか! 戦争へ!」

グライはそう言うと、外へ駆り出た。



一方、フランス専用部屋にて。

金髪に青い瞳を輝かせる若い男が通話をしていた。


「大統領、どうしたんですか? 今のうちに運動をしておきたいんですが」


<とりあえず、聞け。さっきばかし、向こうの代表の情報を入手した>


「はぁ」

フランス『最強』はこの話に無関心だ。


<シンガポールのお偉いさんから、貰ったんだがな。その条件として、お前と......その.......なんだ、お茶をしたいってよ>


「マジですか......?」

(この感じ、少し嘘を言ってるな......!)

直感で見抜く。


<大マジだ。すぐにデータは送っておくが、試合が終わった後、そのお偉いさんの対応をよろしく頼む>


「ちっ、最低ですね。本当に」


<そうだ。この際に向こうのお偉いさんを審判にするってのはどうかな? うちには、まだいないわけだし>


「それで、俺がOKを出すと思ってるんですか?」

こう言われても、冷静だ。


<思ってないさ、ただの悪ふざけだ。シャルル・レスタ殿>


「やめて下さいよ、そういうからかい......大統領が言うと、気持ち悪いんですから」


<はいはい。じゃあ、あとは上手くやってくれよ。勝利を信じてるからな>

大統領はそう言うと、通話を斬った。


(どんな奴だって、一撃で倒してやる)

シャルルは西洋の長い剣を持つと、独特な構えを取る。

それはフェンシングのものに見えた......




グライVSシャルル......死闘開幕!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ