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シン世界-日本最強の九二歳が全てを斬り伏せる-  作者: のっぽ童子


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13/38

サイキョウの休息

シン世界が始まってから、一週間が経過していた。

轟道VSルウェット、グライVSシャルルを含め、二五もの戦争が行われていた。


一度闘った国は、『最強』の回復のため、すぐに対戦の予定を入れることは無い。

その期間は『最強たち』にとって、束の間の安息である。


最先端の医療技術により、彼らは僅か数日で日常生活が送れるほど回復していた。


------轟道たちは監獄内に併設されてある道場にいた。

上で話した安息はどこへやら......


木と木がぶつかり合う音が道場内に鳴り響く。


「おい、ルウェット。まだ、打ち込みは終わっておらんぞ」


轟道は竹刀の素材で造られた竹槍を握り、ルウェットを睨みつける。


この前、ルウェットが急に轟道へ弟子入りをしたため、その稽古である。


「俺は別に槍術を習いたいわけじゃねぇんだけどな......強くなる秘策っつーか、裏技的なもんっつーか、そういうのを知りたいわけで......」


青い道着を着たルウェットは竹槍を右手で持ち、余った左手で頭を掻きむしっている。


「それなら、まずは打ち込みだ!」


轟道は、まるで話を聞いていない。


「......これがショーワのパワーハラスメントってやつ?」


ルウェットがあからさまに困り顔をする。


「本当によく、戦闘が終わった少し後にこんなことが出来ますね......」

「傷とか開かないんですか?」

神橋とデンマークの審判は両方とも白色の道着だ。


「馬鹿言え、戦闘終わりにやらねぇと、逆に体が鈍っちまうぜ」


「じゃあ、打ち込み程度出来るよな?」


「勘弁してくれよ......いくら、真剣じゃないとはいえ、痛いもんは痛いんだぜ?」


「心頭滅却すれば火もまた涼し......とりあえず、なるようになるということだ」


轟道が竹槍で攻撃を仕掛ける。


「絶対、そういう意味じゃねぇだろ!」


ルウェットは反応し、躱してみせる。


「今のは受けるところだろうが!」


「知らねぇよ! クソが!」


「ちょぉ、二人とも! 喧嘩STOP!」


神橋が体を(てい)して、止めに入る。


「そうですよ、こいつの言う通りです。そうだ。丁度昼頃ですし、美味しい店があるので、そこ行きましょう」

そして、デンマークの審判が場を収めた。


「「賛成だ」」

轟道とルウェットは息ピッタリだ。


------一方、シャルルたちの方では。

シャルルは誰かと待ち合わせをしていた。

そのシャルルはというと、白いシャツに黒いスベスベのズボンというシンプルの服装をする。


その誰かが来たようで、シャルルは顔を上げる。


「お、ようやく来たか。グライ!」


シャルルが待っていたのはグライであった。


「シャルル、おはよう! いや。こんにちは、かな......?」

グライは迷彩柄のパーカーと、同様の柄のダボッとしたズボンを着ており、照れくさいのか、人差し指で頬をなぞる。


「お前、試合の時とあんま変わってねぇな......服装が」


「なんか、迷彩柄じゃないと落ち着かないんだよね〜! もちろん、家具とかも全て迷彩にしてるよ」


「お前、それは......ちょっと、気持ち悪いぞ」


「うっ......そんな正直に言わなくても......!」


「まぁ、大丈夫だ! あともう少しでお前よりもっと変な奴が来るだろうさ」

そう、シャルルはグライの他にもう一人呼んでいたのだ。


「お、話をすればだ」


「よぉ! シャルル! ......と、グライか! おれはムウ・リーディだ! よろしく!」

元気良く手を伸ばしてきたのは、黒の短髪と濃い茶色の肌を持ち、黒色の胸ポケットの入った服とベージュの短パンを合わせる若い男。

服装がやけに子供っぽい。


「知ってもらえて嬉しいよ、よろしく! ムウ!」

思い切り、グライが手を掴んだ。


「よし! 全員集まったことだし、出掛けますか!」


「「おう!!!」」

三人は目的地に向かって、歩き出した。


「グライ、ムウはな。ブラジル『最強』なんだぜ」


「へぇ〜! そうなんだ! 戦闘スタイルは筋肉の付き方を見るに、ボクシングとかかな?」


「いや、おれのはブ......」

突如、ムウの言葉をシャルルが手で遮った。


「ん? ブ?」


「そうそう、ムウはブォクサーなんだよ!」

なぜか、シャルルは冷や汗をかいて、慌てふためいた。


「それが本場の喋り方ってやつか......」

グライは有り得ぬほど、純粋だった。

ブォクサーの違和感を気にせず、シャルルの言ったことを信じて疑わなかった。


「シャルル。なんで、邪魔するんだよ。別に言っていいじゃんか。グライも見た感じ悪い奴じゃないだろ?」

ムウがシャルルの耳元で小さく話す。


「お前は馬鹿か......! 敵になるかも知れない奴だぞ? 幾ら、親しくなろうともな、絶対に話すなよ?」


シャルルはグライの強さを体験している。

ここで実力が割れてしまえば、グライは一瞬にして、習得することだろう。


「お、おぉ......分かったよ」

ムウはその真剣さに気圧(けお)される。


「二人とも、なんの話してるの?」


「......ん......試合についての話かな......?」

ムウは目を泳がせながら、そう答える。


「あ、そうなんだ。で、どこと闘うんだい?」


「中国だよ」


「中国って言えば、これは上から聞いたことなんだが、殺しの一族が来てるらしいぞ。確か......(タイ)......一族だったかな?」


フランスの大統領の情報網により、シャルルは色々な『最強たち』のことを理解しているが、この(タイ)家に関しては情報が少なすぎた。


殺し屋一族としか分からないのが、現状である。


「へぇ〜、強そう」


「中国とかタイの殺し屋とか関係ないね! おれが絶対に勝つからさ!」


突如、ムウに宿るは、自分なら勝てるという自身と凄まじい精神であった。

だが、なぜか、嘘には聞こえない。


「タイは国じゃなくて、一族の名前なんだけど......あ、ムウ。前......」


そうシャルルが言いかけたと同時、


「ぶへっ......!」


ムウが盛大に電柱へ体をぶつけた。


------その夜、噂の中国チームでは。

試合場はもう完成している。

その場所は中国が誇る世界最大の城『万里の長城』。


「......あの、主席? この方はなにをしてるんですか?」


審判服を着た黒髪のが訊く。


「見て分からんかね。瞑想だよ。あぁそうか、君はまだ会ったこと無かったね、この『中国最強』に」


同じく黒髪で無精髭(ぶしょうひげ)の生えたダンディなやん主席が真剣な表情で『中国最強』を見ている。


その『最強』は黒髪で赤い中国服を身に(まと)っている細身の若男であった。


そんな男が柔らかに目を閉じ、妙な手印(しゅいん)を取りながら、あぐらをかいて座っている。


「えっ......!? この方が『最強』なんですか!?」


「ああ。今まで彼の姿を隠してすまんかった。出来る限り、リスクは避けたいと思ったんだ」


「じゃあ、これは戦闘前の準備ってことですか......?」


「察しが良いね、その通り」


「食事とか睡眠はどうするんですか? もちろん、取るとは思うんで......」


彼女の声を遮るように(ヤン)主席が.......


「いや、瞑想は如何(いか)なることがあろうと、中断しない。集中が途切れてしまうからな」


とんでもないことを言い出した。


「それってまずいんじゃ?」


「大丈夫だ。(タイ) 万祝(バンショウ)は子供の頃から、戦闘の英才教育を受けている。これぐらいは朝飯前だろう」


「まぁ、確かに朝飯の前に闘いますもんね」


「そういう意味じゃないが......いいか」

(ヤン)主席は呆れたように、そう言った。


(タイ)一族のNo.2、『破壊僧(はかいそう)(タイ) 万祝(バンショウ)

その男に相対するは、ある界隈で『異界者(いかいしゃ)』と呼ばれるムウ・リーディ。


どちらが勝つか、なんて、誰も分からない。

ただ、一つだけ言えることがある。


この闘いから、『進世界』の歯車は大きく動くことになるということだけだ。





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