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シン世界-日本最強の九二歳が全てを斬り伏せる-  作者: のっぽ童子


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カイ物

「俺も本気を出そう。次に出すのは、最大出力だ......」

シャルルが轟道たちの放つものと同等のオーラを出す。

俺も『最強』なのだ。

と、シャルルが強く主張しているように思えた。


「最大だろうが、最低だろうが......ボクには関係ないね」

グライはあの刺突が発生するまで、じっと目を()らしている。


「ふざけるな、お前は認識することすら出来ない」

直後、シャルルが腕を突き出し、剣を加速させる。

その攻撃は速すぎるあまり、一本の線に見えるほどだ。

彼の人生の全てを捧げているのだろう。


しかし......

(これでもギリか......!)

超集中状態のグライが決死の突きを潜り抜ける。

まるで、グライがすり抜けたかのようだった。


「なっ!!!」

シャルルが咄嗟(とっさ)に体を後ろに引く。


だが、一手遅かった......


「おらァァァ!」

グライの繰り出した崩拳(ほうけん)がシャルルの土手っ腹を穿っていた。


「グァァァァ!」

シャルルは血反吐を吐きながら、後方へ吹き飛ばされ、そのまま、バランスを崩して倒れる。

その威力故か、まともに呼吸が出来ない。


そんなの、狙って下さいと言ってるようなものだ......が、グライはシャルルを待っていた。


今狙えば、確実に勝てるという時に......だ。


「グライ!!! なぜだ!!! なんで、今攻撃しない!?」

ジェニーが審判という立場を無視し、大声で問いかける。


「ジェニー。ボクがしたいのはイジメのような一方的な闘いじゃない。互いにリスペクトし合って、そして、限界まで諦めずにやる闘いだ。とにかく、こういうのは公平で行きたい!」


命の取り合いの最中でも、グライはこんなことを言ってのけた。


「グライ......全く、お前ってやつぁ......変な野郎だぜ」


ジェニーは笑みを浮かべて、シャルルの方を見た。


シャルルはグライたちが待っている中、ゆっくりと立ち上がる。


「なんだ......待ってくれたのか......だけど、これほど嫌味なことは......ないね」


まだ呼吸が安定しないのか、言葉が所々、(ども)っている。

それでも、闘いをやめようとしない。

シャルルが安定するまで、グライは待ちに待った。


「そろそろ、決着だなぁ!」

そして、ある時、シャルルがサーベル剣を構える。

ようやく、回復したようだ。


「じゃあ、一気に決めようか! 君に敬意を表して、奥の手を使おう!」


グライは今までずっと隠し持っていた武器入れから、特殊で大きな凹凸(おうとつ)が付いているナイフを取り出した。


この武器は『ソードブレイカー』。

単純な戦闘では向かないものの、武器破壊という一点においては特化されている。


特にシャルルの武器とは相性が良い。

ジェニーはそれを考慮して、出せば一瞬にしてカタがつくと考えていた。


「そりゃあ、嬉しいなぁ! 俺も遠慮なく、最後の一撃が放てる!!!」


シャルルはいつも以上の力で剣を握る。

先程、最大出力で攻撃をしていたが、人っていうのは崖っぷちになっている時こそ、力が出るもの。

つまり、これが最大の最大出力!!!


「終わりだァァァ!」

シャルルが大地を踏み抜くと、風......いや、空間を斬り裂くような刺突の一閃を走らせる。


「来てみな!!!」

グライは一歩も動かない。

ソードブレイカーで防ぐ気だ。


一瞬という間もなく、二つの刃が衝突する!!!


「おらぁぁぁぁ!!!」

「がァァァァァ!!!」

二人は火花を散らし、信念と信念をぶつけ合う。

どちらが勝ってもおかしくはない。


だが、悲しくも、その決着は......すぐに付いた。


闘技場に破壊された一つの金属が落ちる。




それは......サーベル剣の切っ先だ。

同時、シャルルの胸が斜めに斬り上げられた。


「かぁぁぁ......」

シャルルが前に倒れる。

そして、意識が消失した。


「はぁ......はぁ......シャルル、君は強かった」

息を斬らしながら、グライが賞賛する。


(すげぇ......! グライがあのシャルルを倒したぞ!!!)

とはいえ、ジェニーは審判だ。

仕事を果たすため、シャルルのもとへ行き、軽い検査をした。


すると、突然、ジェニーの顔が真っ青になる。


それもそのはず。


「まだだァ......」

気絶したはずのシャルルがボロボロの体をぬるりと起こし、戦闘態勢を取る。


「まだやれるぞォ」


だが、そのシャルルは別人に変わっていた。

オーラが闇のように真っ暗で恐怖を覚えるほどになっており、風貌はと言うと、顔にもオーラが包まれ、地獄から這い出た『怪物』に見えた。


「ひっ、ひぃぃぃぃぃ」

恐怖に呑み込まれたジェニーが猛スピードで逃げる。


「君はシャルル......なのかな?」

グライは優しい声で彼に話しかける。


急に起き上がったとはいえ、シャルルの体はまともに動かないはず......


グライはそう考えていたが、見誤った......


その思考を掻き消すように、シャルルがグライを斬りつけた。

グライは油断し、一刀貰う。


(んっ!? 速度が......上がった?)

これはグライの見間違えではない。

明らかに攻撃スピードが上昇していたのだ。


「グライ・シーサスゥ、こんなもんかァ?」

喋り方も変わっているのか、どこかねっとりとしている。


「こりゃ手厳しいね!」

(あのシャルルが斬り? 絶対に有り得ない......)

グライは静かに分析をしていた。


「二度目はどうかなァ」

突如、シャルル?が先とは比にならないほどの速度で剣閃!


グライも相当ボロボロだ。

こんな状況で(かわ)せるばすもない。


シャルル?はサーベル剣を縦横無尽に振るい、グライへ斬撃を八つ放つ。

ソードブレイカーで五つ分も弾き落としたものの、三つは防ぎ斬れず、残った三閃が肉を裂いた。


「なにっ......!」

(速い......けど、その分、荒いところがある)

それでも、グライは集中を斬らさない。


「突きしか出来ないと思ったかァ? 違うんだよなァ、『サーブル』には『突き』ともう一つ......『斬り』が許されてるんだァ」


シャルル?の狙いはそこにあった。

ルールなどを知っている場合でも、突きに意識を行かせることによって、斬撃の警戒心を無くす......というものだ。


とはいえ、本来のシャルルならば、絶対に突きしか行わない。

何故なら、どんな相手も一突きで倒してきたからだ。

斬りというのを試合でやったことは一度もない。


だが、この戦闘者として別次元にいるシャルル。

こいつは斬りに慣れているように思えた。


「ふんっ!」

グライは一気に間合いに入ると、シャルル?を斬りつけようとする。

すぐに反応し、シャルル?が斬り合いにもつれ込むと、蝶のように華麗な、そして、蜂のように凶暴な斬撃の嵐を繰り出す。


手数なら、武器が軽いグライが勝る。

大抵はシャルル?の方から血飛沫(ちしぶき)が舞うものの、シャルル?の隙間を掻い潜った斬撃によりグライからも血の雨だ。


「やっぱり、才能で言うなら、君はボクよりも圧倒的に上だ。だからこそ、なんだろうね」

グライは攻撃と防御を繰り返しながら、そう言う。


「なんだァ?」

激しい攻防の中でも喋りがねっとりしている。


「戦士としての人格が芽生えているのは!」

この短時間でシャルル?の謎を分析していた。


彼は無意識に自分の力を抑えていた。

観客が見ている中で本気を出せば、上がるのは賞賛の声ではなく、恐怖の声だ。

それをシャルルは理解していた。

そうしていくうちに自身の中にいる戦士という人格......つまり、もっと強くなろうとする自分を抑圧していたのだ。

しかし、この闘いによって抑えられ過ぎた人格が暴発することになった。


それが今の彼である。


「お前、訳の分からないことを言ってるんじゃねぇぞォ?」

シャルル......改め、怪物は勝負を決めにかかる。


怪物の斬撃は突きの勢いを利用したため、グライの

ナイフよりも速かった。


元からグライは傷だらけだったのに、そこから更に傷口が増えに増えまくる。

ソードブレイカーが無ければ、もう死んでいる。


(くっ......斬撃を対応したいのに......! 不規則な軌道で攻撃してくる!)


グライの目の良さは異次元だ。

それを経験している怪物にとっては、邪魔で仕方がない。

ならば、対応させなければいい......


「いよいよ、詰みかァ!?」

怪物がペースを上げる。


「.......」

グライは血を闘技場に散らしながらも、目は先を見据えていた......



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