第五章 十三『自分会議、終結』
十三
「我々は推し相手にいい恰好がしたくて、でも出来なくて空回っていたと言っても過言ではありません。でも、みなさん。一度、冷静になってください。我々は何であったか思い出してください。そうして、今後の事も考えた場合、どうしたらいいか?」
そこで、たっぷりと間をおいて、会議の参加者全員に思考を促す。
かなりの時間を要した後、発言者の沢崎直は皆を見渡して宣言するように言い切った。
「残念でいいんです!むしろ、そうでなくてはならないんです!イケメンとして肩肘張ったところで、すぐにボロが出るに決まっています!」
「そうだ!」
「そうだそうだ!」
議場は一体感を増し、不思議な昂揚感に包まれていく。
「モブ女には、そこにこだわるプライドなどないでしょう?剣が使えないのは大いに結構。残念なのだって、どんとこいです!」
「いいぞ。」
「もっと、言え!」
「剣を落っことしたからといって何です?すっ飛ばしたって、推しに全く当たらずに飛んでいくのだから何も問題ありません。私たちは生まれながらのイケメン貴公子・アルバートではないんですよ!他者の嘲笑など、その程度のモノ、犬にでも食わせればいいんです!」
「うぉー!」
「食わせろ!食わせろ!」
会場中が発言者の沢崎直への賛美に溢れ、発言者の沢崎直はとどめのように言葉を放った。
「そして、残念を極めた暁には……、婚約だって破談になるかもしれませんよ!マリア嬢が、あんまりに残念なアルバート(in沢崎直)に愛想を尽かす可能性も大いにあります!皆さん、どうですか?」
「そうだ!」
「最高だ!」
「残念万歳!」
歓喜に包まれる議場。
その中で、満足げな議長の沢崎直は、手に持っていた木槌を振り下ろした。
コンコン
「では、満場一致で、今後は残念イケメン街道を驀進するということで、みなさんいいですね?」
「賛成!」
「では、本日の会議はこれで終了です。解散!」
拍手に包まれ、歓喜の中、沢崎直の自分会議はこうして幕を閉じたのだった。
以上が、先日行われた『沢崎直・脳内自分会議』の全容である。
御承知の通り、あの日、沢崎直は、ものすごく暇だったのだ。
脳内で自分会議を白熱させてしまうほどには、時間を持て余していた。
(まぁ、結論は出たから……。)
そういうことで、沢崎直は自分を慰めることにした。
どうせ、今後の異世界生活における当面のスローガンは『残念イケメン・驀進中』であるのだから。
自分会議を経て、沢崎直はしっかりと開き直りが完了していた。
(……さぁ、そうと決まれば……。後で、鍛練室で無様に剣でも振ってこようかな?)
開き直ることによって立ち直ったモブ女は、つい先日とは全く違う気軽さで鍛練室へ向かう予定を立て始めていた。




