表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したらついてましたアアアアア!!!  作者: 夢追子(@電子コミック配信中)
第四章『嵐呼ぶブラコンと推しの危機』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/182

第四章 二十一 『懇願』

      二十一


「ど、ど、ど、ど、」

(どういうことぉぉぉぉぉぉぉぉ!!)

 言葉より先に心の声で絶叫する沢崎直。

 あわあわと慌てふためくだけで、何も言葉が口から出て来ない。

 状況の理解も整理も出来ず、きょろきょろと周りを見回す。

 そんなことをしている間に、ヴィルは深々と下げていた頭を上げて、全てを諦めたようで儚さすら感じる微笑みを浮かべた。

「せめて、アルバート様の記憶喪失を治せるお医者様を探しに参りたいと思います。失礼いたします。」

 何が、せめてなのか。何故、そう結論が出たのか。沢崎直には全く文脈が理解できない。

 とりあえず本能の赴くまま、衝動的にヴィルの腕を掴んでいた。

 ヴィルが沢崎直の行動に驚いて腕を見つめるが、離しはしないと必死に追い縋る。

「ま、待ってください、ヴィル。」

 何とか形になった言葉で呼び止める。

 ヴィルは、沢崎直の手に自分の反対側の手をそっと重ねると首を振った。

「アルバート様。」

「だ、ダメです。行ったら、泣きます。泣き止まないです。そしたら、具合が悪くなります。ご飯も美味しく食べられないし、眠れなくなります。」

 一度、言葉が出たら今度は取り留めなく流れていく。

 そんな意味が通じるかもわからないほど脈絡のない言葉で、必死に押し留めるべく懇願する。そうでもしないと、一生後悔すると沢崎直には確信があった。

「アルバート様。」

 説得するような声音で呼びかけられる。

 今度は、沢崎直が首を振る番だった。

「嫌です。ダメです。行かないでください。傍にいてください。ヴィルがいないと、私はダメなんです。」

 こんなこと沢崎直は、今までフラれた過去の男にだって言ったことはない。追い縋ることも、みっともなくその場で泣くこともなかった。今まではじっと耐えて、冷静でいるよう努めていた。

 しかし、今は違う。

 全ての細胞が訴えている。ここで手を離してはいけない。この人を行かせてはいけない。

 泣いてでも喚いてでも、追い縋らなければいけないのだ。

 腕を掴むだけでは飽き足らず、そのままヴィルの身体にしがみつく。

 体幹がしっかりしたヴィルの身体は、成人男性であるアルバートの身体でしがみついてもびくともしなかった。

 普段の沢崎直なら、そんなこと勇気がなくて出来ないが、今なら何でもできた。

 それだけ何かに突き動かされるように必死だった。

「嫌です。離れません。どこかに行くなら、私も一緒に連れてってください。記憶なんて戻らなくてもいいんです。ヴィルがいなくなったら、記憶があっても意味がないんです。」

 子供のようにしがみつき、必死に哀願する沢崎直。

 ヴィルは困ったように微笑んで、幼い子供に言い聞かせるような優しい声音を響かせた。

「アルバート様、聞いてください。」

「嫌です、聞きません。聞いたら、ヴィルが行かないなら聞きます。」

「アルバート様。」

 さすがにヴィルも主人であるアルバートを力づくで引き剥がすことはできない。

 そう見越して、沢崎直は更に力いっぱいヴィルの身体に引っ付いた。

 そんな二人の押し問答は長く続くかと思われたが、別の人物の登場により、事態は別の方向へと展開していく。

「そこで何をしている?」

 遠くから響いたのは、筋力量と肺活量に裏打ちされた豊かなロバートの声だった。

 助けを求めて沢崎直は大きい声で叫ぶ。

「ロバート兄さん!」

 ロバートならヴィルを一緒に説得してくれるのではないかと、沢崎直は期待したのだ。

 だが、沢崎直は大事なことを忘れていた。

 ロバートは空気を呼んでくれないということを……。

 その上、話も聞いてくれないのだ……。

 案の定、二人に近づいてきたロバートは口を開くと、ヴィルに言った。

「何をしている、ヴィルヘルム。どこへなりと去れと言ったことが理解できなかったのか?」

(違ぁうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!)

 やっぱり、沢崎直は心の中で絶叫していた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ