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転生したらついてましたアアアアア!!!  作者: 夢追子(@電子コミック配信中)
第四章『嵐呼ぶブラコンと推しの危機』

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第四章 十五 『朝の鍛練 withロバート』

      十五


 朝、すっきりと目が覚めた沢崎直が窓を開けて外を覗くと、屋敷の庭ではロバートが朝の鍛錬の真っ最中だった。

 沢崎直も朝のトレーニングのために早く起きているのだが、それよりも更に早く起きて既に鍛錬を始めていたロバート。あの強靭な肉体は、こうして毎日作られているんだなあと沢崎直は素直に感心した。

 沢崎直が目覚めているであろう時間を把握している優秀な従者のヴィルは、沢崎直が朝の準備を整えてくる頃を見計らって毎朝やって来る。

 本日も、勤勉なヴィルはノックの音を響かせた。


  コンコン


「はい。どうぞ。」

 沢崎直の返事を確認して、ヴィルは扉を開ける。

「おはようございます、アルバート様。」

 朝早いというのに、一分の隙もない美しさで準備万端整っているヴィルが、これまた美しい角度で頭を下げて朝の挨拶とともに入室する。

「おはようございます、ヴィル。」

 沢崎直はそれを笑顔で出迎えた。

「お加減は如何でございますか?」

「はい、大丈夫です。」

 朝から元気であることをヴィルにアピールして、鍛錬のために沢崎直は歩き始める。

 ヴィルと共に歩きながら、先程庭で見た光景に付いて沢崎直は尋ねた。

「ロバート兄さんはお早いですね?もう鍛錬をされているのですか?」

「はい。ロバート様は昔から毎朝鍛錬を欠かされないので。」

 昔というのはいつ頃の事か……。ロバートの弛まぬ努力に裏打ちされた立派な肉体を沢崎直は改めて尊敬した。

 自室を後にして庭に向かい、まずは屋敷の周りのジョギングから始める。

 軽く汗をかいたところで、庭で鍛錬を黙々と続けるロバートの元へと沢崎直は近づいて行った。

「ロバート兄さん。おはようございます。」

 爽やかに挨拶をすると、ロバートは沢崎直を振り返り笑顔を浮かべた。

「アル。おはよう。」

 朝から鍛錬に励む爽やか兄弟。

 傍目にそう見えるタイプの違うイケメン兄弟二人の元に、更なるイケメン従者のヴィルも合流する。

 ヴィルは沢崎直に汗を拭く布を差し出した。

「ありがとう。」

 お礼を言って受け取る沢崎直。

 年季が入って堂に入った様子で剣の素振りを続けていたロバートは、素振りの規定数が終了したのか、剣を下ろした。持っていた布で汗を豪快に拭きながら、ロバートが沢崎直に語りかけてくる。

「アル。久しぶりにどうだ?」

「?」

(どうだ?って、何が?)

 言葉の意味が分からず首を傾げてきょとんとする沢崎直。

 ロバートは下ろしていた剣を構えて、にいっと挑発的に笑った。

「手合わせだ。」

「………。」

(そんなの無理よぉぉぉぉぉぉぉ!)

 沢崎直は心の中で絶叫していた。

 手合わせなどと言われても、沢崎直は剣術初心者で剣を握ったことすらない。というか、今だって剣も持っていない。その上、今構えた感じで見る限りでも、ロバートは相当強い。初心者の上、剣を握ったことすらない沢崎直に、ロバートの相手が務まるとは到底思えない。どれだけロバートが手加減しても無理だ。

「あ、あのー……。」

 沢崎直は断るための上手い文言を探して目を泳がせた。

「いいだろう?久しぶりに付き合ってくれ。お前がどれほど成長したかも見たいしな。」

(成長なんてしてないぃぃぃぃぃぃぃ!!!)

 沢崎直は心の中だけで絶叫を繰り返した。

 どうすればこの事態を切り抜けられるか見当もつかないが、剣を握ることは避けなければいけない。ロバートにノリノリで一撃でも打ち込まれたら、沢崎直にはどうすることも出来ないだろうし、下手したら死ぬ。また命の危機だ。

 学校の授業で剣道すら習っていないモブ女には、ロバートの相手は荷が重すぎる。

(……だって、男子が剣道とか柔道とかの選択授業の時に、女子はソフトミニバレーとかハンドボールとかだったから……。)

「そのー、えーっと……。」

 沢崎直が明らかに腰が引けて困っていると、近くにいた従者のヴィルがそっと助け舟を出してくれる。

「アルバート様は、まだ病み上がりでお加減が優れないご様子です。またの機会にされてはいかがでしょうか?」

「そ、そうですね!ヴィル。」

 ヴィルの助け舟に全力で乗っかる沢崎直。

 だが、ロバートはあまり承服できぬ様子で続けた。

「少しだけだ。アルバートが数手、俺に打ち込んでくるだけでいい。」

(それだって、無理よぉぉぉぉぉぉ!!)

 心の中だけで絶叫しながら、目を泳がせて後ずさろうとする沢崎直。

 必死に言い訳を探す。

「あっ、あのー。その、ですね……。」

 言い訳を探していた沢崎直に一つの天啓が下りる。沢崎直は、思いついたまま口を開いた。

「け、剣を忘れてきてしまったので!きょ、今日のところは!」

「何?」

 沢崎直の言葉を聞いた途端、ロバートの顔に不審さが増していく。

 急に訪れた剣呑な状況に、沢崎直の身体に冷や汗が流れた。

「……そういえば、アル。お前は昨日も帯剣していなかったな……。どういうことだ?」

 尋ねられても、沢崎直には分からない。

(えっ?剣って、出掛ける時に持ってなくちゃいけないの?知らないよ、そんなこと……。)

 ハンカチ、ティッシュ、スマホにサイフ。現代人なら、このくらいである程度は大丈夫だ。あとは身分証明書があれば、なお望ましい。剣を持つのは銃刀法違反にあたるので、現代人のモブ女には持って出かける習慣など、もちろんない。

「ヴィル!どうなっている?」

 今度は、矛先が従者のヴィルに向けられた。

 ヴィルは優秀で忠実で勤勉な従者として、主家のロバートの質問に答える。

「記憶喪失になられてから、アルバート様は剣をお持ちになりません。」

「……記憶、喪失?」

 ロバートは絶句した。

(えっ?そこから?)

 沢崎直は、とりあえず空を仰いで頭を抱えることしかできなかった。



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