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転生したらついてましたアアアアア!!!  作者: 夢追子(@電子コミック配信中)
第三章 『SUR(スーパーウルトラレア)級モンスター 女子力の化身、襲来‼』

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第三章 二十一 『アルバート、乱入⁉』

     二十一


「あ、あのー……。」

 とりあえず口を開いてみたものの、何を言ってこの場を誤魔化したらいいのか全く見当もつかない沢崎直。少なくとも背後から来たヴィルには、沢崎直がこそこそと室内を窺っていたことがバレバレだろう。

 沢崎直がしどろもどろに口をパクパクさせていると、有能な従者であるヴィルヘルムは沢崎直越しの室内の様子を確認していた。

「何ですか?この状況は?」

 床に散らばった残骸に目を留め、眉を顰めて見せるヴィル。主人がいる場だというのに、何故環境が整っていないのだとその涼しげな美貌は室内のメイドさんたちに問いかけているようだ。

「申し訳ありません。私の責任です。すぐに片付けます。」

 先程までの勢いはどこへやら、しおらしくヴィルの言葉に反応し、床の片づけをするために教育係のメイドさんが動き出した。

 それに合わせて他のメイドさんたちもテキパキと動き出す。

 沢崎直には何もできなかったが、ヴィルの登場により事態が片付きそうな気配を感じ、そっと胸を撫で下ろす。

 端っこに控える新人メイドのエミリーは、先輩たちの輪に入りはしなかったが邪魔にならない場所で気配を消していた。

(……やっぱり、異世界にも新人いびりってあるんだな。まあ、異世界だって生きてるのは人間だし……。女が集団になれば、イロイロあるよね……。マウント合戦とかって、やりそうだし、貴族のお嬢様同士とか……。)

 迅速に片付いていく室内を眺めながら、沢崎直は心の中でそんな感想を抱いていた。

(……とにかく、今日はこの辺でって感じかな。パワハラ現場に居合わせるなんてツイてないよ。)

 事態が沈静化したことに安心し、胸を撫で下ろすと沢崎直は部屋を後にするために踵を返す。だが、現実はそんなに甘くないようだった。

「ごめんなさいね、エミリーさん。私が教育係としてもっとしっかりしなくてはならなかったわね。」

(ん?)

 踵を返した沢崎直の表情が思わず強張る。

 室内で静かに控えていた新人メイドのエミリーの表情も同じくらい強張った。

「貴女が何度も粗相をするのは、私の教育係としての力が足りないせいよね?ごめんなさい。」

 しおらしい声音で口を開く教育係のメイドさん。

 周りの取り巻きもそれに合わせて、それぞれの反応を見せる。そんなふうにご自分を責めないでください的な意見の係。私は貴女に付いていきます的な意見の係。責任感が強い貴女がそんなに背負わなくてもいいのですよ的な意見の係。取り巻きの集団は、長である教育係の美人のメイドさんを際立たせるように役割分担を器用にこなしていた。

(うわぁー………。)

 室内で繰り広げられ始めた息の合った連係プレーに、沢崎直はげんなりする。どうやら、まだ一件落着とはならなそうだ。

「申し訳ございません、アルバート様。ヴィルヘルムさん。私の指導が足りないばかりに、エミリーさんが何度も粗相を繰り返してしまうんです。彼女は新人ですし、どうか寛大なご処置をお願いします。」

 自分の美貌が他者に与える影響を熟知した者だけが持ちうる自信を漲らせ、瞳を潤ませながら懇願する教育係のメイドさん。

 言葉の内容としては新人を許せというものだが、本当の意味は別だ。この美人が自分の魅力をかざして言外に伝えたいことを翻訳すると、この新人が使えないから早くクビにしてくれということだ。それも新人の無能さをあげつらって自らの手を汚すのではなく、他人の印象を操作し無能だと烙印を押す罪をなすりつけ、自分は新人をかばったという善行までくっつけようとしている。

(すんごい人だなぁ……。)

 沢崎直は見事なまでの厚顔さに、感心すらしてしまった。

 新人メイドのエミリーは、絶望したような表情で打ちひしがれていた。こんなふうに先んじて主人に報告されてしまっては、新人の彼女に出来ることは何もない。それをしっかりと察したのだろう。

 どうしたらいいもんかと思い、沢崎直はヴィルの表情を窺った。

 ヴィルは涼しげな美貌のまま、逆にこちらの意見を聞くために沢崎直を見つめた。

(えっ?)

 推しに見つめられ、その上、その視線の意味を理解し、沢崎直の心拍数が上がり始める。

(これって、私が収めなきゃいけない案件なの?責任者は私なの!?)

「アルバート様。」

 ダメ押しで呼びかけられる。

 沢崎直はため息を吐きたくてしょうがなかったが、それを我慢して室内を見渡した。

 全員分の視線が集まる。

 もうやけくそな気分で口を開く。

「エミリーさんは、私の部屋に来てください!」

 結局、異世界に転生してイケメンになったところで、貧乏くじを引かされているような気がしてならない沢崎直だった。

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