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転生したらついてましたアアアアア!!!  作者: 夢追子(@電子コミック配信中)
第三章 『SUR(スーパーウルトラレア)級モンスター 女子力の化身、襲来‼』

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第三章 十八 『現状確認』

     十八


(よし!空手はこの世界ではあんまり披露しないようにしよう。)

 本日の異世界での学びを心にしっかりと刻みこみ、沢崎直はそう結論付ける。

 だいたい身を守らなくてはならないような危険な状況に陥らなければ、そんなことを心配する必要もないが、いつ何が起きるか分からないのが人生というものだ。沢崎直というモブ女が、イケメンとして異世界に転生しているのが、そのいい証拠である。

 森のクマさんの話も一段落し、この異世界における武術的な常識を軽く身に着けたところで今日はこの話題を切り上げることにする。

 沢崎直としては、推しと共通の話題で盛り上がることが出来るのは嬉しいことではあるのだが、その話題というのが武術理論ではあまりにも色気がなさすぎる。

(どうせ女子力のある話題なんてのは思い浮かびませんよーっ!)

 心の中で悪態をつくと、沢崎直は話題を変えることにした。

「あ、あの。ヴィル。」

 声が上擦らないように気を付けて、平静を装って親しげに推しの愛称を呼んでみる。

 名を呼ばれた超絶イケメン・ヴィルは、穏やかに微笑んだ。

「はい。どうしました?アルバート様。」

(ヴィルって呼んだら、心なしか嬉しそうだよ、この人ぉぉぉ!)

 推しの喜びは我が至福。

 心中で最高潮に興奮しながらも、表面的にはその興奮を何とか隠して話を続ける沢崎直。

 本当は推しへの愛だけで心をいっぱいにしていたかったが、そうもいかない事情がある。まだ質問しておかなければいけないことがあるのだ。ここから先は、沢崎直のアルバートとしての人生における一大事である話題なので、冷静さを保たなければいけない。そう思わせる懸念事項が、沢崎直には存在するのだった。

 先程は推しの魅力にまんまと嵌まり抜け出せなくなり、質問しようとしていたことすら忘れてしまったが、このままにしてはおけない。沢崎直は気を引き締めた。

「……あの、私には、婚約者がいるのですか?」

 ズバリ聞いてみる。

 ヴィルは何でもないことのように頷いた。

「はい。いらっしゃいます。マリア・カーミラ・ローゼンベルク嬢でございます。」

(はい。執事のリヒターさんに聞いてた通り、事実ですね。)

 ここまでは先に執事から聞いていた情報なので新鮮な驚きはない。まだ戸惑いしかないが、そういう事実があるということだけは理解している。沢崎直が聞きたいのは、その先だ。

「その方は、どんな方ですか?」

「どんなというのは、その、どういったことをお知りになりたいのですか?」

 記憶喪失で何も覚えていない主人に対して、具体的な質問の内容を尋ねるヴィル。

 沢崎直は少し考えながら答えた。

「えっと、どんなことでもいいんです。その、本当に何も覚えていなくて、さっきリヒターさんに婚約者がいるってことを聞いたばかりで……。些細なこととかでもいいんですけど、相手にお会いする時にお顔も分からないんじゃ失礼かな?とも思いまして……。」

 少しでも婚約者についての情報が知りたい旨を、言葉を尽くして伝える。

「ヴィルは、その方に会ったことがありますか?」

「はい。何度かアルバート様と共に。」

「どのような方か、ヴィルの印象でいいので教えてください。」

「私の印象ですか……?」

 そう言って、ヴィルは少し考え込んだ。

 考え込む推しの横顔の美麗さについつい見惚れそうになる自分を叱咤激励し、そんな場合ではないと意識をしっかりと保つ。

 ヴィルは言葉を選ぶようにして口を開いた。

「私の印象ではなく、世間の噂のようなものでよろしければ。」

「あっ、はい。」

「あの方は、慈悲深く、行いは清く正しく、その気品溢れる佇まいから『聖女』と呼ばれております。」

(……なんだそりゃ。)

 聞き慣れない宣伝文句に、思わず心の中でツッコミを入れる沢崎直。

「その手の噂については、俺よりも他の使用人の方が詳しいかと思いますので、メイドなどにお聞きする方が良いかと思われます。」

(ウワサ好きのメイドさん……。)

 メイドさんの井戸端会議のような場所に、沢崎直が突撃しても話してもらえるだろうか?

 少し不安になったが、とりあえずそちらは置いといて、他の事も質問する。

「あの、もう一つお聞きしたいんですが。」

「はい。何でしょう?」

「私は一年も失踪していたんですよね?その間に、この婚約の事に何か変化はなかったんですか?」

 沢崎直は一番気になっていたことを投げかけてみる。

 一年も失踪していたアルバート氏は、沢崎直が転生しなければまだこの屋敷に帰還することもなかったはずだ。そんな消息不明の人物と、一年も婚約状態が続くものなのだろうか?

 もしかしたら、形だけ婚約という状態で残っていただけで、そろそろ婚約解消の動きが出始めていたとしても不思議ではない。貴族とかだと形式上、婚約解消とかに時間とか手間がかかりそうだし……。

 婚約という事実から何としても逃避したくて、沢崎直は希望に縋った。

「いえ、あちらからは何も。」

 ヴィルは首を振って否定した。

「そうですか……。」

 沢崎直はがっかりした。



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