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転生したらついてましたアアアアア!!!  作者: 夢追子(@電子コミック配信中)
第三章 『SUR(スーパーウルトラレア)級モンスター 女子力の化身、襲来‼』

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第三章 十一 『ヴィル』

     十一


 それから、沢崎直の異世界順応生活が始まった。

 幸いにも、転生のおかげなのか会話から文字の読み書きにいたっては、何ら支障はなかった。食べ物もあまり違いはなく、信じられないほど突飛な常識というものもなさそうで、そこは安心できた。

 着る衣服も細かいところは分からないが、大まかな部分での違いはないようだし、部屋の家具類にも装飾にもお手上げと言えるほどの物はなかった。

 現代からやってきた沢崎直にとっては身分制度というものが完全には理解できないところがあるのが難点ではあったが、それ以外はまあ異世界と言っても中世くらいから近代の技術水準であることは理解できた。

 唯一、魔法は全くお手上げの分野ではあったが、まだ屋敷内にいるだけの沢崎直にとっては必要のない知識であるため、それは後回しということにした。

 まずは、アルバートとして、この世界に適応していかないといけない。

 そのための情報収集が必要だったが、それは実に理に適った方法で叶えられることになる。

 御労しい記憶喪失のアルバート様のために、屋敷の人たちが一肌脱いでくれることになったのだ。

「アルバート様。あまりご無理はなされませんよう。」

「はい。出来るだけ頑張ってはみます。」

 在りもしない記憶が蘇ることはないので安請け合いはしないが、気合があることだけは宣言するように伝えて、沢崎直は超絶イケメンに向き合う。

 そんな健気で前向きな主人の姿に、超絶イケメンは胸がいっぱいになっているようだった。

「何か少しでも体調に不安を感じることがあれば、すぐにおっしゃって下さいね。」

 初日に犯した過ちを繰り返すことのないよう、念を押すことも忘れない。

 超絶イケメンに見守られながら、沢崎直はメモを片手に気合を入れる。

 『アルバート様のご記憶を少しでも取り戻していただくための思い出歓談会』の始まりである。グスタフ医師の忠告を受け、失くした記憶を刺激するために屋敷の人たちが一人ずつアルバート氏との関わりの思い出を話してくれることになったのだ。

 まず、一番初めはこの超絶イケメンである。

 自分の事すら分かっていない沢崎直に、幼い頃から一番身近で仕えていた超絶イケメン直々にアルバート氏のことを教えてもらう。

 超絶イケメンは主人のために、ゆっくりと口を開き始めた。

「まずは、基本事項から参ります。」

 以下、超絶イケメンから齎された情報をまとめる。

 沢崎直が転生した身体の持ち主は、アルバート・フォン・シュテインベルク。失踪時の一年前に十八になっていたので、現在は十九歳。辺境伯として名高いシュテインベルク家の三男坊で、末っ子。家族や親しいものからはアルと呼ばれていたようだ。両親は現在領地に住んでいて、今、沢崎直が滞在しているのは王都近くにある商業都市の中のシュテインベルク家の別邸である。幼い頃は領地に両親と暮らしていたが、途中、王都の学校にも通っていたようだ。成績は優秀、文武両道。性格は温厚。他にも、色々と超絶イケメンは褒め言葉を並べていたが、ここは割愛する。

 アルバート氏の基本事項のメモを取りながら、沢崎直は考える。

(……何か、順風満帆な人生に思えるけど……。何で、失踪なんかしたのかな?)

 本人の身体に入っているとはいえ、本人ではないので沢崎直に本当のところは分からない。だが、周りの人間にも失踪の理由は分からなかったのではないか?超絶イケメンの口ぶりからも、沢崎直はそう感じていた。

「次は、僭越ながら俺のことをお話ししたいと思います。よろしいですか?」

「ぜひ。お願いします。」

 推しの詳細な情報を本人の口から聴けるなんて……。沢崎直は溢れ出る下心を隠して、真面目な顔でペンを走らせた。

 超絶イケメンはヴィルヘルム・モス。アルバートとは乳兄弟で三つ年上の二十二歳。幼い頃から従者としてアルバートに仕え、王都の学校にも一緒に通ったらしい。他にも剣の修行も遊びも、いつも傍に控え、共に学び共に過ごしてきたようだ。少なくとも、一年前にアルバート氏が失踪するまでは……。その後は、再会した時に本人が言っていた通り、アルバート氏を探して世界中を巡り歩いていたらしい。

 そこまで流暢に話していた超絶イケメンだったが、ふと言葉を止めた。

 少しの逡巡の後、言いたいことを全て飲み込むようにして気持ちを切り替え、そっと微笑む。

「ヴィルと、そうお呼びください。」

「…………。」

(惚れてまうやろォォォォォォォォォォォ。)

 万感の思いを込め、沢崎直は心の中で絶叫した。

 表面上は涼しい顔で冷静さを維持していたつもりだが、上手く出来ていた自信はない。

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