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勇者の当て馬でしかない悪役貴族に転生した俺~勇者では推しヒロインを不幸にしかできないので、俺が彼女を幸せにするためにゲーム知識と過剰な努力でシナリオをぶっ壊します~  作者: こはるんるん
5章。勇者率いる王国軍を倒す

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70話。勇者を殺す秘策

 俺はレオン王子を追うべく森を出た。

 勇者アベルの封印は、セルヴィアとセリーヌに任せれば、大丈夫だ。


 なにしろ【迷いの結界】は、ゲーム本編では有り得なかったセリーヌとアンジェラの母娘の共演によって、より凶悪に進化していた。

 アンデッドが無限に湧き出てくる罠が追加されたのだ。


 唯一の脱出手段は森を焼いてしまうことだが、それはセルヴィアの聖女の力で阻止できる。


 これで勇者アベルは、もう二度とここから出て来れない。


 もっともコレは俺が思い描く、完全勝利とは言い難い。

 俺が理想とするセルヴィアとの幸せな生活──ゲーム本編で決して到達できなかったトゥルーエンドに至るためには、これでは片手落ちだ。


 なにしろ、セルヴィアは勇者を封印するために、この森に付きっきりになる必要があるからだ。だからこそ……


「じゃあ【闇鴉やみがらす】、仕上げは頼んだぞ」

「はっ、お任せください、カイン様。特に拷問に長けたメンバーを揃えました。勇者アベルに【誓約魔法】を強要してご覧に入れます」

「クククッ、勇者に【誓約】を課そうとは、さすがはカイン様です」


 森の入口にやって来ていた【闇鴉やみがらす】たちが、危険な笑みを浮かべる。彼らは、数々の拷問器具を手にしていた。


 スキル【幻体】を極めたセリーヌは、他人の能力と姿をコピーした幻影を5体まで作って、敵を攻撃することができた。

 この幻影にはいかなる攻撃も通じず、姿を隠したまま一方的に敵をフルボッコにできる。


 これこそ、エルフの族長セリーヌの真価だ。

 

 勇者アベルはセリーヌを軽視していたが、セリーヌは帝国軍を5000人にも満たない少数で撃退した凄腕の戦士なのだ。


 セリーヌの能力を使えば、勇者アベルに拷問を受けさせ、その心を圧し折ることができるだろう。


「し、しかし、この【誓約魔法のスクロール】には、驚きました。本当にこれを勇者アベルに強要するのですか?」


 俺はすでに文章を書いた【誓約魔法のスクロール】を【闇鴉やみがらす】たちに用意してもらっていた。

 あとは、勇者アベルに血印を押させれば、【破れば死ぬ誓約】を勇者に誓わせられる。


「そうだ。勇者アベルの性格を考えたら、この誓約に同意するに違いないだろう?」

「はっ、おそらく、その通りだと思いますが……」

「大丈夫だ。もともと1年でレベル99の勇者を倒すつもりでいたんだから」

「こ、これはさすがはカイン様です。お見逸れしました」


 不安そうな【闇鴉やみがらす】を安心させるべく、俺は自信をもって答えた。


 誓約は、勇者アベルに俺との決闘を強要させるモノのだ。

 内容は次のような文面だ。


『勇者アベルは、今後一切、他人に危害を加えてはならない。これを誓うなら、【迷いの結界】から出ることができる。ただし、この誓いを破った場合、死をもって償う』


 さらにこう続ける。


『もし4ヶ月後の王都武術大会で優勝できたら、勇者アベルは、この誓約から解放されて自由になれる。だが、もし一度でも負けたら、勇者アベルは死をもって償う』


 自信家の勇者アベルは、【迷いの結界】から抜け出すため、拷問によって追い詰めれば、この誓約に同意するハズだ。


 ヤツを試合でぶちのめして、俺はセルヴィアとの幸せな人生を手に入れる。

 それが俺の思い描いたプラン、不死身の勇者を確実に抹殺する秘策だった。


 あとはこの4ヶ月の間に、魔王の復活も阻止できれば言うことは無いが……


「カイン様! レオンお兄様をランスロット卿率いるシュバルツ兵団が追撃しています! 私の天馬ペガサスで、そこまでお送りいたします!」

「リディア王女、ありがとうございます!」


 リディア王女が天馬ペガサスに乗って舞い降りてきた。

 空を飛べば、レオン王子に一気に追い付くことができる。


 俺はリディア王女の背後に跳び乗った。


「あっ、カイン様! その、わたくしをもっと強く後ろから抱き締めてください! 空で落馬したら大変です!」

「えっ、いや、そうですけど……」


 リディア王女が、うれしそうに身をよじるので、変な気持ちになってしまう。


 もっとも、ここで手間取る訳にはいかないので、言われた通りに、リディア王女に背後から密着した。

 気性の荒い天馬ペガサスに乗るのなら、専門家のリディア王女の指示に従うべきだろう。


「う、うれしい、気持ち良いです。カイン様!」 

「リディア王女、急いでください!」


 ゲーム本編では凛々しいお姫様だったのに、俺を見つめてくる目が熱っぽくて、何かキャラが変わっているように思えるんだが……


「はっ! そうでしたね。すみません!」


 リディア王女が天馬ペガサスの手綱を引くと、天馬ペガサスは空を蹄で蹴って飛翔する。

 そのまま風を切り、猛スピードで逃げるレオン王子を追った。


「レオン王子! お命、頂戴つかまつる!」

「ランスロット卿、王家に弓引くとは近衛騎士の誇りを忘れたか!?」


 ランスロットと近衛騎士団長ガレスが、馬上で激しく斬り結んでいた。


「例え王家が相手であろと、カイン坊ちゃまに仇なすなら、打ち倒すまで!」

「ならば、今ここで、師であるあなたを超える!」

 

 竜巻のような勢いで、剛剣をぶつけ合う二人には誰も割って入れない。

 唯一の例外は、リディア王女の凛々しい声だった。


「皆の者、聞きなさい! 暴虐の限りを尽くした勇者アベルは、カイン様の策によって完全に敗れ去りました!」


 みながハッと戦いの手を止めて、空を見上げる。


「な、なにぃいいい!?」

「お、王女殿下!?」


 衝撃に包まれる戦場に、リディア王女は天馬ペガサスを急降下させた。


「すでに勝敗は決しました! これ以上の戦いは無益です! 次の国王は、国を危うくしたレオンお兄様ではなく、このリディア・アルビオンです! さあ、近衛騎士たち、わたくしに忠誠を誓いなさい!」

「はっ、はははは!」


 多くの近衛騎士は、リディア王女の宣言を受け入れて、その場に膝をついた。


「な、なんだとリディア!? 余こそ父上に──国王陛下に認められた正当なる王太子であるぞ! 余に逆らうは、たとえ我が妹といえど逆臣、逆賊! 皆の者、今すぐリディアを討ち取って手柄とせよ!」

「リディア王女を討とうなどという愚か者は、このカイン・シュバルツが相手になるぞ!」


 レオン王子の反論に被せるように、俺は天馬ペガサスから降り立った。

 俺の登場に、近衛騎士団が怯えたように後ずさる。


「おおっ! カイン坊ちゃま! 見事、勇者めを敗って、お戻りになられましたか!」


 ランスロットが歓声を上げる。


「シュバルツ兵団、奮い立て! カイン坊ちゃまこそ最強! そのカイン坊ちゃまの手足たる我らもまた最強の軍なり!」

「おッ、おぉおおおッ!」


 シュバルツ兵団の士気が最高潮となり、近衛騎士団を圧倒した。


「リディア王女! レオン王子こそ、国王陛下によって定められた正当なる王太子でございます! その兄君を討つとおっしゃるなら、このガレス。たとえ、リディア王女が相手であろうとも、容赦いたしませんぞ!」


 ガレスはリディア王女に剣の切っ先を突きつけ、徹底抗戦の構えを見せた。


 殺すには惜しい男だが、あくまで立ちはだかるというなら、ここでガレスを討つしかない。


「シュバルツ兵団、膝をついて恭順を示した者以外は打ち倒せ! これが最後の戦いだ!」

「はっ!」


 俺の檄に、シュバルツ兵団が猛攻を仕掛けようとした。

 その時、地上に大きな影がいくつも落ちた。


「なっ、ド、ドラゴンの群れ!?」


 俺たちは慌てて、天を見上げる。

 そこには、300騎あまりの飛竜を駆るドラゴンライダーたちの姿があった。


「あ、あれは……まさか、アトラス帝国の皇帝親衛隊だと!?」


 ガレスが愕然とした声を上げる。


「なっ!? 皇帝ジークフリート自らが、この内乱に介入してきたのか!?」


 さすがにこれは俺も予想していなかった。

 皇帝親衛隊は数こそ少ないが、いずれも一騎当千の強者たちだ。ゲームでは、終盤も終盤の敵である。

 それが、あの皇帝に率いられているとなると……


 皇帝親衛隊が、俺たちのいる場所へと真っ直ぐに突っ込んできた。

 その先頭にいる美丈夫は、第一皇子のシグルドじゃないか?


「我は、第13代アトラス帝国皇帝シグルド・アトラス! 帝国を不埒なる魔王より救いし我が盟友、カイン・シュバルツ殿の助太刀に参った!」


 シグルドが天空より、戦場に轟き渡る大声で宣言した。

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『勇者の当て馬でしかない悪役貴族に転生した俺~勇者では推しヒロインを不幸にしかできないので、俺が彼女を幸せにするためにゲーム知識と過剰な努力でシナリオをぶっ壊します~』
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