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勇者の当て馬でしかない悪役貴族に転生した俺~勇者では推しヒロインを不幸にしかできないので、俺が彼女を幸せにするためにゲーム知識と過剰な努力でシナリオをぶっ壊します~  作者: こはるんるん
5章。勇者率いる王国軍を倒す

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67話。勇者アベル、破滅が待つ森に誘い込まれる

「き、貴様! 余を誰だと心得るか! 余は次期国王レオンなるぞ! いかに聖女だとて余の意思に背くなど、許さぬ!」


 セルヴィアから袖にされたレオン王子は、顔を真っ赤にして怒鳴った。


「これが最後のチャンスだ! 聖女セルヴィアよ、余にかしずき余のモノとなれ!」

「お断りします! そもそも次期国王はリディア王女です。敗者となったレオン王子に、王となる資格など、ありません!」


「な、なんだと……!?」

「疑問なのだけど、今や勇者に下僕のように扱われている王子様に、聖女様を妃にするだけの権力なんて、あるのかしら?」


 セルヴィアの護衛役であるセリーヌが肩を竦めた。


「き、貴様! おのれ、余を勇者の下僕などと抜かすかぁああああッ!」


 図星を指されてレオン王子は、憤慨する。


「セルヴィア! 俺は森に退却してそこで全軍の指揮を取る!」

「はい、カイン兄様、こちらへ! みなさん、兄様の撤退を援護してください!」

「風の精霊たちよ、我らにご加護を【風矢ゲイル・アロー】!」


 ウッドゴーレムたちが剛腕を振り上げながら、続々と前に出てきた。


 彼らから連射式ボウガンの矢をいかけられ、レオン王子は慌てて馬首を返す。これらの矢は、セリーヌによって風の魔法を付与エンチャントされて、威力が増していた。


「ひぃい! お、おのれぇええッ!」

「殿下、どうかこちらへ! 我らが死兵となって道を切り開きます!」


 近衛騎士団長ガレスが壁となり、レオン王子の後退を援護する。


 森への退路を封じられたのは、レオン王子にとってかなりの痛手だろう。王国軍からは寝返る者が続出し、もはや味方の中にいても、いつ後ろから刺されるかわからない。


「なに、退却だって!? そうか、カイン! スキルの効果時間が切れたんだな!」


 勇者アベルは勝機とばかりに、俺を追撃してきた。

 【黒炎の加護】の使用限界である5分が経過して、俺を守る黒炎の障壁が消えてしまっていた。

 

 再発動時間クールタイムである60分を経過しないと、【黒炎の加護】は再び使用できない。

 混戦では、どこから攻撃が飛んでくるかわからないので、これは致命的だ。


 ……もっとも、ここまでの流れはすべて俺の作戦通りなのだけどな。

 俺の最大の狙いは勇者アベルを、奴にとっての死地である森に誘い込むことだ。レオン王子はその後で仕留めれば良い。


「私が相手です、勇者アベル!」


 セルヴィアが手をかざすと、勇者アベルの頭上に、1トン近い大木が何本も出現した。


「なにぃ!?」


 勇者アベルが驚愕する。

 セルヴィアは植物召喚能力を使い、無数の大木を勇者の頭上に降らせた。質量攻撃だ。


「ちぃ! この程度で、この僕を止められると思ったか!?」


 勇者アベルは拳を振り上げて、降り注ぐ大木を粉砕する。


「かかりましたね。これは世界最強の猛毒を持つアコカンテラの木です」

「ひぃぎゃああああッ!?」


 木っ端微塵になった大木から、猛毒の樹液が勇者アベルに降り注いだ。

 エルフたちの話によると、アコカンテラの毒を浴びれば皮膚が焼けただれ、屈強な戦士であろうとも数時間で死に至るそうだ。


「痛ぇえええッ!?」


 勇者アベルの持つ【毒無効化】スキルは、あくまで体内に入った毒を無効化するものだ。身体が外からの刺激で崩れるのを防ぐことはできなかった。


 これもランスロットの働きで、事前に勇者アベルのスキルを調査してわかったことだ。


「やったなセルヴィア、これで時間が稼げる!」

「はい!」


 なにより、これで勇者アベルは俺が本気で逃げようとしていると、思い込んでくれただろう。


「ちくしょう、逃がすかぁあああッ! 婚約者の聖女の目の前で、じわじわとなぶり殺しにしてやる!」

「……ま、まるでケダモノですね」


 勇者アベルの悪鬼のような形相に、セルヴィアは顔をしかめた。


「ケダモノだって……? アハハハハッ! いい! すごくいいぞ! 最高だよ、聖女様ぁああああッ!」 


 勇者アベルは歓喜を爆発させた。


「そんなお高くとまった勘違い貴族令嬢を、ヒイヒイ言わせるのが、僕は大好きなんだ! 俄然燃えてきたぜぇえええッ!」

「なっ……?」


 勇者アベルの嗜好については【闇鴉やみがらす】と、宰相から聞いていた。


 どうもコイツは高貴な貴族令嬢を虐待して、その尊厳を踏みにじって遊ぶのが好きらしい。


「なんて、醜悪な」


 セルヴィアは勇者アベルの毒気に当てられて、絶句していた。育ちの良い彼女にとって、信じられない人間だろうな。


「逃げるぞセルヴィア!」

「は、はい!」


 俺はウッドゴーレムの肩に跳び上がると、セルヴィアを抱きかかえて森へと突入する。

 敏捷性が4倍になった俺の方が、勇者アベルよりわずかに足が速い。


「待ちなさい! 聖女様は私がお守りするわ!」


 セリーヌが雷撃の魔法を勇者アベルに撃ち込むが、ヤツは歯牙にもかけなかった。

 勇者は魔法障壁を展開して防御すると、セリーヌやウッドゴーレム軍団など一顧だにせずに、俺たちを追いかけてくる。


「お次は、森で追い掛けっこか? いいぜぇええ! 楽しいウサギ狩りだぁああああッ! アハハハハッ! すぐにソイツをぶち殺して、僕のモノにしてあげるからね、聖女様ぁああああッ!」


 勇者アベルは舌舐めずりしながら、追いかけてきた。

 

 この森に足を踏み入れた瞬間、自分の命運が尽きるなどとは、夢にも思っていないようだった。

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▼コミカライズ版 2025年5月29日徳間書店より刊行。 勇者の当て馬でしかない悪役貴族に転生した俺~勇者では推しヒロイン
以下の公式サイトで試し読みができます!
https://unicorn.comic-ryu.jp/3587

▼書籍化しました! 2024年11月15日【電撃の新文芸】より刊行。
『勇者の当て馬でしかない悪役貴族に転生した俺~勇者では推しヒロインを不幸にしかできないので、俺が彼女を幸せにするためにゲーム知識と過剰な努力でシナリオをぶっ壊します~』
ぜひお手に取っていただけるとありがたいです!
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魔王少女の勘違い無双伝~中二病をこじらせて、配下の人間も守る誇り高き悪のカリスマムーブを楽しんでいたら、いつの間にか最強魔王軍が誕生していた件
― 新着の感想 ―
[気になる点] アベルが主人公のゲームをプレイするとして 言うほどこの主人公に感情移入してゲーム100周プレイできるか?
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