表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の当て馬でしかない悪役貴族に転生した俺~勇者では推しヒロインを不幸にしかできないので、俺が彼女を幸せにするためにゲーム知識と過剰な努力でシナリオをぶっ壊します~  作者: こはるんるん
5章。勇者率いる王国軍を倒す

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/83

66話。レオン王子、逃げ出すがカインの罠にはまる

「なんだと!? 僕は負けた訳じゃ……げぇはぁああああッ!」

 

 勇者アベルは立ち上がろうとするも、後続の重装騎兵に激突されて押し潰された。

 重装騎兵の総重量は約700kgだ。これに体当たりされるのは、走行する軽自動車に轢かれたのと、ほぼ同じ衝撃だ。


 だが、俺は【黒炎の加護】の守りのおかげで、転がってくる重装騎兵に体当たりされても無傷だった。


「レオン王子は君主の器にあらず! 民がアンデッドどもに蹂躙されても見て見ぬ振りをし、横暴なる勇者の機嫌を取るために娘を差し出せと言う! このような王では、国を危うくするだけだ! 心ある者はリディア王女の御旗の元へ集へ!」


 俺も王国軍に大声で呼びかける。

 チャンスがあれば【寝返り工作】を打つのが、戦争パートで勝つコツだ。

 うまくいけば、言葉ひとつで敵は同士討ちを始める。


「お、俺はカイン・シュバルツ殿と、王女殿下にお味方するぞ!」

「私もだ! 賊軍め、覚悟せよ!」

「娘を奪われた恨み、今こそ晴らしてくれん!」


 敵から、我も我もとシュバルツ連合軍に寝返る者が続出した。

 未だに日和見を決め込んでいた連中も、俺たちの方が優勢だと見て、態度を決めたようだ。


 今が、畳み掛けるチャンスだ。


「シュバルツ連合軍、全軍突撃! レオン王子、その首、俺がもらい受ける!」


 俺は総攻撃を命じると同時に、レオン王子の本陣に向かって駆け出した。


「ひぃいいい! と、止めよ! 誰でも良い、カイン・シュバルツを止めるのだぁ!」


 軍馬に乗ったレオン王子は喚き散らしながら、逃げ出して行く。

 名目上の総大将だというのに、崩れた王国軍を立て直そうともしなかった。


「皆の者、何を恐れるか! 敵総大将カイン・シュバルツがたった一人で突っ込んで来ているのだぞ! 押し包んで倒せ!」


 近衛騎士団長のガレスが指揮を取り、俺にありったけの矢と魔法を撃ち込んできた。


 だが、無駄だ。

 スキル【黒炎の加護】によって、俺が身にまとった闇属性の炎には、矢や魔法も通じない。


 もっとも効果時間5分なので、この間にレオン王子を討ち取らなくては、俺は袋叩きにされて負ける。


「カイン坊ちゃまに続け! シュバルツ兵団、総員突撃せよ!」

「さあ、敵を討ち滅ぼしなさい【ドラゴンゾンビ】!」

「【王女近衛騎士団プリンセス・ガード】も続きなさい! カイン様を援護するのです!」 

「リザードマン部隊、今こそ我らの力を見せる時だ!」


 シュバルツ連合軍が、混乱した敵に襲いかかった。


 さらに、後方の丘からゴードンの遠距離攻撃魔法【シューティングスター】が撃ち込まれ、逃げるレオン王子のすぐ近くに着弾した。


「ひぁああああッ! よ、余はアルビオン王国の王太子レオンであるぞ! その余を家臣たる者が、討とうというのか!? 不遜! 不遜であるぞ!」


 レオン王子は泡を喰っている。


「殿下! ご心配めされるな! この俺がいる限り、殿下には指一本触れさせません!」


 近衛騎士団長ガレスが気炎を吐きながら、ゴードンからの第二射を大盾で弾いた。


 ガレスはユニークスキル【騎士の中の騎士(ナイト・オブ・ナイツ)】を持つ。


 その効果は『主君を守るために戦う時、全ステータスが300%アップする』という破格のモノだ。

 しかもランスロットの弟子となり、20年以上も剣の研鑽に励んできたという真の武人だった。


 初戦において、本営を強襲しながらもレオン王子を仕留めきれなかったのは、ガレスが守りについていたからに他ならない。

 

「【音速剣】!」

「うぎゃああああッ!」


 俺は大きく踏み込んで、レオン王子に向かって衝撃波を放つ。衝撃波はレオン王子の取り巻きの騎士たちをなぎ倒して、ヤツに迫った。

 

「ぬるい!」


 だが、ガレスは大盾で、俺の衝撃波を受け止めた。

 守りの武人たる近衛騎士団長の真骨頂だ。

 相手にとって不足はない。


「はぁあああああッ!」


 俺はトップスピードまで爆発的に加速して、レオン王子に剣を叩き込もうとする。敏捷性4倍となった俺の脚力は、彼我の距離を一気に詰める。

 邪魔する者は【黒炎の加護】の炎で焼き尽くす。


「【シールドバッシュ】!」


 だがガレスが、俺の斬撃に大盾をぶつけて、俺を大きくノックバックさせた。


「ぐっ……!」


 大盾ごと両断してやろうと思ったが、王家最後の砦である近衛騎士団長は、甘くなかった。


 なにより、俺の敵対者が勇者アベルからガレスに代わったことで、スキル【ジャイアントキリング】の発動条件が満たせなくなり、攻撃力が激減してしまっていた。


「カイン! この僕ともう一度、勝負しろぉおおおッ!」


 復活した勇者アベルが追い縋ってきた。不死身というのは、本当に厄介な特性だ。


 ヤツは両手から、光魔法【聖光矢ホーリーアロー】を乱射してくる。

 味方も巻き添えにして吹っ飛ばすが、勇者アベルはお構い無しだ。


 【ノックバック】を受けると、衝撃で身体が一時的に硬直してしまう。足が止まって、回避は間に合わない。

 俺は剣を振るって、勇者アベルの光の矢を打ち返した。


「なにぃいいいいッ!?」


 スキル【矢弾き】を使い続けて、飛び道具の迎撃回数が3万回を超えると、スキル【矢返し】を新たに習得できた。


=================


【矢返し】

 迎撃に成功した飛び道具を、相手に打ち返します。


=================


 周回プレイ前提のやり込み要素だ。これを習得できた者は【真の廃人】などと呼ばれていた。

 俺は特訓によって、事前に【矢返し】を習得していたのだ。


 放った光の矢が自分に跳ね返ってきて、勇者アベルは心底驚いていた。ヤツは慌てて魔法障壁を展開してガードする。


「魔法を術者に打ち返すなんてことが、できるのか!?」


 通常は絶対に不可能だ。【矢返し】で返せるのは、本来は物理的な矢やナイフに限定される。


 これは斬撃に魔法に干渉可能な闇属性力が乗っているが故に、可能な芸当だった。

 

 だが、さすがにガレスとアベルのふたりを同時に相手にするのは、無理がある。

 俺は力を得る代償として生命力(HP)1となっており、わずかでもダメージを受ければあの世行きだ。


「今だ! 今のうちにあの森に逃げ込むのだ!」


 レオン王子が向かう先は、セルヴィアに【世界樹の聖女】の力で、あらかじめ作ってもらった即席の森だった。


 身を隠すのに丁度良いと思ったのだろうが、そこは地獄の入り口だぞ。


 森から大量の矢が放たれ、レオン王子に浴びせられる。


「な、なんだとぉ!?」

「殿下ぁあああッ!」


 近衛騎士団が慌てて盾となって、レオン王子を守りきった。


「残念ですが、レオン王子。あなたにはここで倒れていただきます」

「聖女セルヴィア!?」


 セルヴィアが伏兵のウッドゴーレム軍団を従えて、森から姿を見せた。彼女はエルフの族長セリーヌと一緒に、大型ウッドゴーレムの肩に乗っていた。


 植物を支配する聖女の力を使えば、ウッドゴーレムを短時間で、大量に製作できた。

 これはエルフとセルヴィアの合作である新型ウッドゴーレム軍団だ。その数、約500体、平均レベル45のまさに凶悪兵器軍団だ。


「なぜだ? な、なぜ、王太子たる余を拒絶する! 余が貴様を妃にと望んだのだぞ! 余の妃となれば、何もかも思いのまま、欲しいモノはなんでも手に入るのだぞ! そ、それをなぜ……!?」

「当然です。私の望みは、カイン兄様の妻となること、ただひとつなのですから!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▼コミカライズ版 2025年5月29日徳間書店より刊行。 勇者の当て馬でしかない悪役貴族に転生した俺~勇者では推しヒロイン
以下の公式サイトで試し読みができます!
https://unicorn.comic-ryu.jp/3587

▼書籍化しました! 2024年11月15日【電撃の新文芸】より刊行。
『勇者の当て馬でしかない悪役貴族に転生した俺~勇者では推しヒロインを不幸にしかできないので、俺が彼女を幸せにするためにゲーム知識と過剰な努力でシナリオをぶっ壊します~』
ぜひお手に取っていただけるとありがたいです!
91iluzDBtOL._SL1500_.jpg
↓こちらもオススメ! 同じ作者の新作です!

魔王少女の勘違い無双伝~中二病をこじらせて、配下の人間も守る誇り高き悪のカリスマムーブを楽しんでいたら、いつの間にか最強魔王軍が誕生していた件
― 新着の感想 ―
[一言] 騎士の理想も分かりますが、騎士団長が馬〇な事は分かりました。この場合真の正当性を唱えるなら病床の王を護るのが役目のはずですから。人質を取られてるならこの時点で余計護る理由も無いんですけど………
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ