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勇者の当て馬でしかない悪役貴族に転生した俺~勇者では推しヒロインを不幸にしかできないので、俺が彼女を幸せにするためにゲーム知識と過剰な努力でシナリオをぶっ壊します~  作者: こはるんるん
4章。迷いの森のエルフとボス討伐マラソン

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52話。ソフィーの外れスキルを覚醒させる

 ゴォオオオオオオン!


 ボス部屋に踏み込むと、耳をつんざく黒竜の咆哮が轟いた。


 ドラゴンの咆哮には、恐怖を煽って身体を動けなくさせる魔力──スタン効果がある。これを防ぐためのアイテム【耳栓】をしていなかったら、身体が硬直して命取りだっただろう。


「竜の咆哮を防ぐ方法をご存知なんて、カイン兄様は、すごいです!」

「ええっ、驚いたわ!」

「はひゃああああッ!? ほ ホンモノのドラゴン!?」


 みんなの無事を確認しつつ、俺は黒竜に向かって突っ込んだ。

 前衛として、俺は敵の注意を引き付けなくてはならない。


「はぁあああああああッ!」


 黒竜の前足に、ミスリルの剣を思い切り叩き込む。


 ギィィィンッ!


 だが、俺の渾身の一撃は、鋼鉄よりも硬い竜鱗りゅうりんに弾かれた。


「【黒月の剣】と【剣術レベル5】の組み合わせでもノーダメージかよ!?」


 やはりまだ、俺のレベルが51と低いためだ。レベル70の黒竜を討伐するために必要なレベルは最低60だった。


 黒竜が、ことさらに動揺する俺を見下ろし、嘲笑うように口元を緩める。


 ……よし、狙い通りだ。

 これで黒竜は、『俺の攻撃は無視して良い』と決め込んだハズだ。


 ドラゴンは頭が良く、通用しないとわかった攻撃はしてこなくなるので、もう咆哮を放つことも無い。

 俺は耳栓を取り外す。


グォオオオオオン!


 黒竜が俺を潰すべく、豪腕を叩きつけてきた。


「くっ……!?」


 回避できたものの攻撃の煽りを喰らって、体勢を崩してしまう。

 ボス部屋の床がクレーター状態に陥没した。

 一撃でも喰らったら、原型も残らずに即死だ。


 黒竜は俺の隙を見逃さず、さらに腕を振り下ろそうとするが……


「カイン兄様は、私がお守りします!【パラライズフラワー】召喚!」


 セルヴィアが手をかざす。すると、黒竜の口内に大量の黄色い花が咲いた。

 黒竜の動きがピタリと止まる。


「麻痺毒を持つ植物を召喚しました。痺れて動けなくなったハズです!」

「おおっ、すごいぞセルヴィア!」


 これには俺も驚いた。

 こんなピンポイントに植物を召喚するなんて、コントロールが劇的に上がっている。

 セルヴィアは、胸を張って誇らしげにした。


「えへん。私だって、カイン兄様のお役に立って見せます」


 黒竜は戸惑っていたが、やがて【パラライズフラワー】を吐き出した。

 そして、怒りの籠もった目でセルヴィアを睨みつけて、彼女に向かって突進する。


「えっ。も、もう麻痺が治ったんですか!?」

「まずいッ!」


 俺は黒竜を追いかけて、スキル【デス・ブリンカー】を発動させようとする。

 絶大な生命力を誇るドラゴンは、麻痺や毒などの状態異常からの回復が早いのだ。油断すべきではなかった。

 

「おいでなさいリーパー!」


 アンジェラが、大鎌を構えた死神を召喚した。

 リーパーが黒竜に飛びかかっていき、その顔面を斬りつける。


「くっ、硬いわね。眼球を切り裂くこともできないなんて……!」


 アンジェラは舌打ちする。

 黒竜にはクリティカルヒットとなる弱点部位が存在しない。

 それでもセルヴィアから黒竜の気を逸らそうと、リーパーは連続攻撃を続けた。


 黒竜がわずらわしそうに頭を振り、ドラゴンブレスを発射しようと大口を開ける。


 この世で最も強力な魔法の炎──ドラゴンブレスなら幽体であるリーパーはおろか、俺たちを一撃で全滅させられる。

 俺たち全員に緊張が走った。


「ソフィー、今だ!」

「えっ、は、はい!【ミスト】!」


 ソフィーは俺が合図すると同時に、デバフ魔法【ミスト】を放った。

 本来、これは魔法の霧を発生させて、敵の攻撃命中率を下げる魔法なのだが……


どぉおおおおん!


 狙い通り黒竜が派手にすっ転んだ。


「ふ、ふぇっ……?」


 ソフィーは何が起こったのかわからず、目を瞬いている。


「よし、やったぞ! これがユニークスキル【転倒】の真価だ!」


 ソフィーのユニークスキル【転倒】は、『何も無いところで転ぶ』というデバフ系スキルだ。それ故、デバフ魔法との相性が良く、ソフィーがレベル15以上になると特別な効果を発揮した。


「ソフィーの真の力。それはデバフ魔法に【転倒】のスキル効果を付与することだ! デバフ魔法を使用した場合、その効果持続時間中、敵は『何も無いところで転ぶ』!」

「ふ、ふぇ!? そ、そんなの初めて知りましたぁ!?」


 派手に転んだ黒竜は、ドラゴンブレスの発射をキャンセルされてしまう。


ごぉおおおおん!


 黒竜は起き上がろうともがくが、もう一度、尻もちをつく。

 これは麻痺と違って自然に治ることは無い。いわば強力な呪いだ。


「これぞ究極のデバフ! ソフィーこそ最強のデバフ使いだ!」


 これを喰らうと、たいていの敵は戦闘能力を奪われる。剣を振るうことも、魔法を使うこともままならない。


 デバフ魔法を解除しない限り、理由無き【転倒】が続くのだ。まさに悪夢。

 魔王でさえ、この呪いからは逃れられず【魔王を倒す村娘A】などというあだ名が、ソフィーに付いていた。


「す、すごいです! 本当にドラゴンブレスを防いでしまいました!」

「わ、私とは別次元の強さだわ!?」


 セルヴィアとアンジェラが感嘆の声を上げた。


「わ、私なんかが、ホントに最強のデバフ使い!? カイン様を信じてついてきて良かったです! って痛い!?」


 ソフィーは感激して飛び跳ねて、転んだ。

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『勇者の当て馬でしかない悪役貴族に転生した俺~勇者では推しヒロインを不幸にしかできないので、俺が彼女を幸せにするためにゲーム知識と過剰な努力でシナリオをぶっ壊します~』
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