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勇者の当て馬でしかない悪役貴族に転生した俺~勇者では推しヒロインを不幸にしかできないので、俺が彼女を幸せにするためにゲーム知識と過剰な努力でシナリオをぶっ壊します~  作者: こはるんるん
4章。迷いの森のエルフとボス討伐マラソン

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49話。アンジェラからレアスキルを伝授してもらう

 朝──

 眠りから目を覚ました俺の顔面は、ふくよかな感触に包まれていた。


「う〜ん、むにゃむにゃ。カイン、大好きよぉおおお……」


 なんと、いつの間にか俺のベッドにエリス姉上が潜り込んできていた。しかも、その悩ましいまでに立派な胸に、俺を掻き抱いているじゃないか?


 寝ぼけていた頭が、一気に覚醒する。


「ちょ、ちょ!? 何をやっているんですか、エリス姉上!?」

「あっ、カインおはよ〜」


 慌てて離れるとエリス姉上は起きて、うーんと伸びをした。

 寝相が悪いためにネグリジェが着崩れており、目のやり場に非常に困る。


「何って、昔はよく一緒に眠ったでしょう? カインとしばらく会えたなかったから、お姉ちゃん寂しくて……」

「何歳の頃の話ですかぁ!?」


 母上が早くに亡くなったことから、エリス姉上が俺の母親代わりになってくれていた。

 俺もエリス姉上にかなり甘えて過ごしてきたんだけど、もう15歳になったのだから、そろそろ卒業しないとマズイ。


「とにかく、こんなところをセルヴィアに見られたら困るんで、すぐに部屋に帰ってください!」


 未だに姉上と一緒に寝ているなんて知られたら、かなり恥ずかしい。


「ええっ!? たまには姉弟水入らずで、お話しようと思ったのに!? セルヴィアからカインの大活躍の話をいっぱい聞いて、お姉ちゃんはすごく誇らしかったんだから!」


 そう叫んで、エリス姉上は俺を逃がすまいと、ぎゅっと抱擁してきた。


「そ、それはうれしいんですが、TPOをわきまえてください!」


 健全な思春期男子である俺は、朝の生理現象で下半身が元気過ぎるのだ。


「カイン。重要な話が、あら……?」


 その時、アンジェラがノックも無しに入ってきて、目を丸くした。

 俺の護衛を買って出てくれたことはありがたいんだけど、最近、アンジェラは遠慮が無くなって来ているような気がする。


「……ま、まさか浮気?」

「違う! この人は、俺の姉上だ! ちゃんと紹介しただろ!?」

「冗談よ。お父様が選んだ結婚相手のお姉様ですもの、ちゃんと覚えているわ」

「いや、お前とは結婚しないって……!」


 まだ皇帝からの縁談については、ちゃんと断りの返事を送ってはいないが……

 帝国を刺激しないように、父上が非常に悩みながら返事の文書を用意している。


「あなたは、アンジェラ皇女? 駄目よ! カインは久しぶりにお姉ちゃんと、二人っきりで過ごすんだから!?」

「姉上、せめて着替えてから出直してきてくださいぃいいい!」


 薄いネグリジェごしに、柔らかい身体を押し付けられて、俺は絶叫してしまう。


「ふ〜ん、姉弟仲が良いのね。ちょっとうらやましいわ。申し訳ありませんが、エリス様。重要な話がありますので、席を外していただけると助かりますわ」

「えっ? 重要なことって何……? アンジェラ皇女は、何をしにやってきたの?」


 エリス姉上が唇を尖らせた。それは俺も知りたいところだ。


「【迷いの森】のエルフ族長に伝わる特殊スキル【幻体】をカインに渡すためです。カインはこれを欲しがっていたわよね?」


 おおっ、イベント内容がセリーヌからではなく、アンジェラからの伝授に変ったのか?

 【幻体】は、エルフの族長に代々継承されている特殊スキルだ。ということは、アンジェラはすでにセリーヌから【幻体】を受け渡してもらったんだな。


「それはありがたい。さっそく頼む!」

「で、では、カイン。私と口づけを。それが、スキルを伝授する方法よ……!」

「「はぁっ?」」


 頬を真っ赤にして告げるアンジェラに、俺とエリス姉上は呆気に取られた。


「ちょ、ちょっと! お姉ちゃんだって、ホッペにチュー止まりなのに、どういうこと!?」

「それがスキルを伝授するのに必要な儀式なのです。私に聞かれても、困りますわ」

「いや、そんな話は聞いたことがないぞ!?」


 それなんてエロゲー? ゲーム【アポカリプス】は全年齢対象だぞ。

 確かにゲームでは、具体的な伝授の方法は示されていなかったけど……


「このスキルは本来エルフ族長の資格を持つ者だけに、伝授することが許されているのよ。つ、つまり、カインと私が愛を交わす。ということが、スキル伝授の条件なの。私は別にこんなことはしたくはないんだけど、お母様がぜひカインにこのスキルを渡しなさいというから……し、仕方なくね!」


 アンジェラは拗ねたように顔を逸らしながら、俺に身を寄せてきた。

 俺は彼女の肩をグイっと押し戻す。


「悪いが……それが事実なら【幻体】は受け取れない。セルヴィアを裏切るようなマネはできないからな」


 俺が力を求めるのは、推しのセルヴィアと幸せになるためだ。

 そのために、他の女の子とキスなどしたら本末転倒じゃないか。


「それにアンジェラだって、俺とキスなんてしたくないんだろう?」

「偉いわカイン、さすがよ!」

「えっ……ええ、ま、まあ、そうだけど」


 アンジェラは二の句が継げないようだった。


「とういう訳だから、ふたりとも帰った帰った!」

 

 まったく朝の生理現象、真っ只中の男子の部屋に押しかけるなんて、何を考えているんだか……

 だけど、アンジェラの言葉が気になってボソッと呟く。

 

「【幻体】については、後でセリーヌに確認しておくか……」


 キス以外にも、【幻体】を伝授する方法があるかも知れない。


「ちょ、ちょちょっと待って、カイン!?」


 なぜかアンジェラが大慌てで、俺に取りすがってきた。


「キ、キスが一番確実な方法ではあるのだけど……! 実は相手に触れただけでも、できなくはないことを思い出したわ!」

「はぁ?」

「えっ、まさかアンジェラ皇女、嘘をついていたの? なんで?」


 エリス姉上がポカンとしている。


「い、いえ。一番確実な方法をご提案しただけですわ。決して嘘をついた訳ではありません」


 アンジェラは冷静な表情を取り繕い、優雅に髪をかけ上げながら言い放った。

 正直、意図がまったくわからないが、キス無しで【幻体】を習得できるのなら、ありがたい。


 手数を2倍にできるこのスキルがあれば、現在のレベルでもミスリル鉱山最下層のボス、推定レベル70の【黒竜】を攻略できるハズだ。


「よしアンジェラ、さっそく伝授してくれ」

「くっ……せ、せっかくのチャンスが。わ、わかったわ」


 アンジェラが俺の手を握った。

 その瞬間、身体が熱くなって、スキル獲得のシステムボイスが聞こえた。

 ようやく念願のレアスキル【幻体】を入手することができたぞ。

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▼コミカライズ版 2025年5月29日徳間書店より刊行。 勇者の当て馬でしかない悪役貴族に転生した俺~勇者では推しヒロイン
以下の公式サイトで試し読みができます!
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▼書籍化しました! 2024年11月15日【電撃の新文芸】より刊行。
『勇者の当て馬でしかない悪役貴族に転生した俺~勇者では推しヒロインを不幸にしかできないので、俺が彼女を幸せにするためにゲーム知識と過剰な努力でシナリオをぶっ壊します~』
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