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勇者の当て馬でしかない悪役貴族に転生した俺~勇者では推しヒロインを不幸にしかできないので、俺が彼女を幸せにするためにゲーム知識と過剰な努力でシナリオをぶっ壊します~  作者: こはるんるん
3章。最強の兵団を組織して王都を救う

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22話。レオン王子との対決

 父上の執務室の扉を開け放つ。

 通信用魔導具である大型の水晶玉に、ふんぞり返るレオン王子が映っていた。


「カインよ、戻ったか……!」


 父上はレオン王子から厳しく問い詰められたのだろう。やや憔悴した様子だった。


「これはレオン王子殿下、ご尊顔を拝しまして恐悦至極に存じます。殿下の忠実なる下僕げぼく、カイン・シュバルツめにございます」


 俺は金髪の貴公子──レオン王子に一礼した。

 コイツは俺とセルヴィアを苦しめる憎い相手だが、腹の底に秘めた敵愾心はおくびにも出さない。


「カインか。余がセルヴィアを虐待して死に追いやれと命じたにも関わらず、シュバルツ伯爵家とフェルナンド子爵家が、なにやら親密になっているとの噂を聞きつけてな。まさか貴様、余の命令を軽んじているのではあるまいな?」


 レオン王子はいきなり本題に切り込んできた。その声音には怒気が滲んでいる。


「貴様にも直接問い質したく、伯爵とつまらぬ雑談をしながら、待っていてやったのだ。とく答えよ」

「はっ! もちろん殿下のご命令を実行すべく、日々精進しております。本日も嫌がるセルヴィアを盾にして引き回し、魔物退治に精を出してまいりました。王家を謀った愚かなる偽聖女、じわじわと苦しめてやるのが、殿下の御心にかなうものと心得ております!」


 下衆な小悪党笑いを披露してやると、レオン王子はうさんくさそうに鼻を鳴らした。


「フンッ。では、フェルナンド子爵家の者が、そちらの領内に頻繁に出入りしていることをどう説明するつもりだ?」


 それはミスリル鉱山から得られたミスリル鉱石をあちらに分配するためだ。

 これについては、父上と事前に示し合わせて、説明を考えてある。


「フェルナンド子爵家は、偽聖女を出したことで他の貴族から白眼視されております。よって、昔からの盟友であるシュバルツ伯爵家に必死に擦り寄って、贈り物などを寄越してきているのです。それでセルヴィアの待遇が良くなるとでも考えているのでしょう。シュバルツ伯爵家としては、いい迷惑です」

「なるほど。伯爵の話と、矛盾は無いようだが……」


 レオン王子は冷たい怒りの籠もった目で、俺を睨んだ。


「では、カイン。余の目の前で、セルヴィアの顔を殴って見せよ。余がやめろと言うまで、手を止めることは許さん」


 へぇ〜。そう来たか……

 俺の全身に静かな怒りが満ちる。


「……これは聡明な殿下のお言葉とは思えません。それでは、セルヴィアを苦しめているのは、殿下の命令だからだと告白しているようなモノでございます。セルヴィアは俺に惚れております。惚れた男の意思で虐待されるからこそ、あの小娘に絶望を与えられるのでは?」

「フンッ……」


 レオン王子は顎に手を当てて考え込んだ。


「それもそうか……あの小娘をいたぶり殺すことなど、その気になれば造作もないが。それではつまらんからな。徹底的に絶望を味合わせてやらねば、余の腹の虫はおさまらん!」

「はっ! その通りでございます!」


 俺がセルヴィアを殴るなど、何があっても決してあり得ない。

 もし強要されたら、まだ準備不足ではあるが、王家と戦争開始だったな。


「すでに執事を通して、話を聞いただろうが。フェルナンド子爵にアンデッド討伐の命令を下した。近頃、どういう訳か、凶悪なモンスターが頻繁に現れるようになっていてな。王家も手を焼いておる」


 なるほど。周回プレイの世界に入った影響は、王都近郊でも同じということか。


「だがこれは、余に恥をかかせた偽聖女セルヴィアの罪を、その父親フェルナンド子爵の命で贖わせる、いわば懲罰だ。よって手助けすることは、一切まかりならん。これは他の貴族どもにも周知徹底させる。良いな?」

「はっ! ご命令、しかと承りました!」


 俺は頭を下げて承諾した後、続けて尋ねた。


「ご質問をお許しいただきたいのですが、穢れたアンデッドどもが殿下のお側近く──王都近郊で暴れ回るのを、黙認されるのでありますか?」


 アンデッドが厄介なのは、アンデッドに殺された者もアンデッドと化して、犠牲者が倍々ゲームで増えていくことだ。

 その核となっているのが、周回世界に出没する凶悪モンスターだとするなら、非常に危うい。


 下手をすると、王国の存続も危ぶまれるような魔物災害に発展する恐れがあった。歴史上、アンデッドによって滅ぼされた国家もあるのだ。


 私怨によって国を危うくするなど、愚かな者のすることだ。

 それを暗に指摘したのだが……


「フンッ。王都の城壁があれば、なんら問題無い。コレを機にセルヴィアとフェルナンド子爵家を懲罰することこそ、肝要なのだ! 余に逆らった愚かしさセルヴィアに思い知らせてやるのだ!」


 憎々しげにレオン王子は美貌を歪める。


「それにアンデッドどもが狙うのは、平民どもの住む街や村。虫のように湧いて出る平民など、数千やそこら殺されたところで、なんら問題あるまい?」


 これは重症……というより、この王子は極めつきの暗愚だな。

 それはゲームシナリオで良く理解していたつもりだったが、実物の醜悪さは想像以上だった。


 よし、わかった。

 本来、レオン王子を倒すのは勇者アベルの役目だが、近いうちに俺が叩き潰してやる。


「はっ! 父上も申し上げたと存じますが、誰からどのような要請を受けましても、この件に関してシュバルツ伯爵家は一切、手を出さないことをお約束いたします。カイン・シュバルツはレオン王子殿下の忠実なる下僕にございます。これからも、何なりとご命令ください」


 俺は深々と腰を折った。


「くくくっ、カインよ。それが貴様の口から聞けて安心したぞ。約束通り、セルヴィアに絶望を味わせて死に追いやったのなら、余の右腕として取り立ててやろう。余の下僕として、これからも励むが良い!」

「はっ! ありがたき幸せにございます!」


 俺の返事に満足そうに頷くと、レオン王子は魔法通信を切った。大型の水晶玉から、レオン王子のきらびやかな姿が消える。


「ふん、まんまと騙されたな。これで俺が動けなくなったと思ったのなら、大間違いだ。ランスロット!」

「はっ! おそばに!」


 俺が叫ぶと、ランスロットがすぐさま背後に現れた。


「すぐにオーチバル伯爵家のゴードンを呼び出すんだ!」

「かしこまりました!」

「カインよ。まさか、オーチバル伯爵家を使うつもりなのか?」


 父上が不安そうに尋ねてきた。


 王家に隠れてミスリル鉱山から利益を得ている父上に、フェルナンド子爵家との関係を切るという選択肢はない。


 そんなことをすれば、フェルナンド子爵家から秘密が漏れて、共倒れだからな。

 王家にバレないようにセルヴィアの父親を助けて、アンデッド軍団を討伐する必要がある。


「はい、父上。ご心配には及びません。備えは万全にしております。俺にすべてお任せください。シュバルツ伯爵家に一切の害が及ばぬように解決してご覧に入れます」

「そうか……ッ! 私設兵団の設立といい、魔物討伐といい、お前は見違えるほど頼もしくなったな。必要なことがあれば、何でも遠慮なく言うが良い。人でも物資でも用意させよう!」

「はっ!」


 俺は父上に頭を下げた。

 ここからは時間との勝負だ。適切な手を急いで打たなければならない。


 それに少々、引っかかるところがあった。

 アンデッドは戦場跡など怨念の渦巻く不浄な場所に出現する。

 王都近郊にアンデッドの大群が出現するというのは、かなり不自然だった。


 これはもしかすると裏に【死霊使い】(ネクロマンサー)がいるのかもな。

 だとしたら、好都合だ。


 爆速でレベルが上げられるボス討伐マラソンに必要なピースが揃うぞ。

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