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15話。薬師の姉弟に忠誠を誓われる

 システムボイスが、新スキルの獲得とレベルアップを告げた。

 レベル7から一気に15まで上昇する。


 【アポカリプス】はレベル差の大きい強敵を倒すと大量の経験値をゲットできるシステムだ。逆に自分より低レベルの雑魚敵を倒しても、経験値はほとんど獲得できない。


 強くなるためには、格上の敵を倒していく必要がある。このためスキル【ジャイアントキリング】の習得は、これ以上ないアドバンテージだった。


 ふぅ~、今回、リスクを冒したかいがあったな。

 俺は額の汗を拭いつつ、ステータスを確認した。


=================

カイン・シュバルツ

レベル15


ユニークスキル

【黒月の剣】

 剣技に闇属性力が付与されます。


スキル

【剣術レベル3】

 剣技の命中率と攻撃力が30%アップします。


【矢弾き】

 飛び道具を弾く成功率が50%アップします。


【ジャイアントキリング】(NEW!)

 レベルが上の敵と戦う際、HPが半分以下になると攻撃力と敏捷性が100%上昇します。


=================


 順調に剣を使っての【格上殺しビルド】のスキル構成が整いつつあった。

 このゲームでもっとも重要なのは攻撃力だ。


 【黒月の剣】【剣術レベル3】【ジャイアントキリング】は効果が重複するため、格上の敵を葬るのに大いに役立つ。

 【矢弾き】があれば、遠距離攻撃をかいくぐって、敵に接近することが可能だ。


 今後も剣術スキルを伸ばしつつ、攻撃力上昇効果を持つスキルを獲得していけば、格上の敵を倒して最速レベルアップができる。


「カイン兄様、良かった! お怪我はありませんか?」

「ああっ、セルヴィアの援護のおかげだ。よくやってくれたな!」


 セルヴィアが抱きついてきたので、頭を撫でてやる。

 ゲームでもお世話になったけど、現世でも俺をこんなにも助けてくれるなんて、愛おしくてたまらない。


「うれしいです。兄様のお役に立てたのですね!」


 だけど、セルヴィアと勝利の余韻にひたる余裕は無かった。

 別の大問題が発生してしまったからだ。


「あ、あんたは……もしかして、【世界樹の聖女】様なのか?」

 

 アッシュが姉の口に【強化回復薬】(エクスポーション)を注ぎながら、俺たちを見つめていた。


「あんたじゃなくて、セルヴィアです……」


 セルヴィアは苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

 俺を助けるためとはいえ、正体を露呈させてしまったからな。


「アッシュ……セルヴィアは正体がバレれば、俺と引き裂かれて、レオン王子の婚約者にさせられてしまうんだ。このことは黙っていてもらえないか?」


 俺はアッシュを説得することにした。


「はい、お願いです。レオン王子は【世界樹の聖女】の力を戦争に利用するつもりなんです。なにより、私はもう決してカイン兄様と離れ離れになりたくありません」


 セルヴィアが王宮に連れ戻されれば、彼女は敵国であるアトラス帝国に凶作と餓えをもたらすことを強要されるだろう。


 セルヴィアに、そんな辛い思いをさせる訳にはいかない。

 最悪、アッシュを1年間どこかに幽閉してでも秘密を守り抜かねばならない。


「見くびんな。俺と姉ちゃんの命の恩人を売るようなマネは絶対にしねぇよ!」


 アッシュは心外だとばかりに叫んだ。


「それに【世界樹の聖女】様は、森と調和して生きる俺たちエルフにとっては神様そのものだ。お会いできて光栄ですセルヴィア様!」


 生意気だった態度が180°変わっていた。

 アッシュはセルヴィアを尊敬の目で見つめている。


 そう、エルフにとって【世界樹の聖女】は崇拝の対象なのだ。

 教会の伝承にもあるが、【世界樹の聖女】は、この世界を支えている世界樹の化身なのだという。


「……セルヴィアのことを仲間のエルフに知らせて騒ぎ立てたりしないか?」

「そんなことは絶対にしねぇよカイン! なにより元々の部族が滅びちまったせいで、俺たちはどこの部族にも所属できなくて、根無し草となって各地を放浪しているんだぜ?」


 なるほどな。

 エルフは大規模な集落を作って森で生活しているが、非常に閉鎖的なのが特徴だ。余所者の逗留は許しても、コミュニティに受け入れたりは滅多にしない。

 そのため、姉弟で各地を旅しているのだろう。


「他の誰にも、たとえ同じエルフだろうと、姉ちゃんにだって、セルヴィア様の秘密を漏らすようなことはしないと誓う!」

「ありがとうございます、アッシュ」

「はい、セルヴィア様!」


 アッシュはセルヴィアに向かって、ひざまずいた。 


「秘密を守ってくれるなら、ありがたい! どうかな? 行くあてが無いなら、姉さんと一緒に、専属薬師としてシュバルツ伯爵家に仕えないか?」

「本当か!? い、いや、本当ですか!?」


 薬師なら、セルヴィアの【世界樹の聖女】の力と相性バッチリだ。


 セルヴィアの召喚する特殊な植物から、次々にレアリティの高い薬を量産してもらえるだろう。

 なにより、屋敷の中にいてもらえれば、秘密を漏らさないように監視もできる。


「う、うーん……」

「あっ、姉ちゃん!?」


 その時、アッシュの姉が目を覚ました。【強化回復薬】が効いたらしい。

 彼女はラピスラズリのような青く美しい瞳で、俺たちを見つめる。


「良かった気がついたのですね」

「あ、あなたたちは……?」

「カイン、いやカイン様と、セルヴィア様が俺たちを助けてくれたんだよ! カイン様はすげぇ強くてブラッドベアーを倒してくれたんだ!」 

「えっ!? カイン様とセルヴィア様って!? ま、まさか、領主の御子息様ですか!?……あわわわっ! あ、ありがとうございます。私はリルと申します!」


 リルはその場に両手をついて、お礼を述べた。

 弟と違って、礼儀正しい娘のようだった。


「しかも、根無し草の俺たちを専属薬師として、雇ってくれるっていうんだ!」

「そ、そんな、何から何まで……ありがとうございます!」


 その時、リルのお腹が盛大に鳴った。

 彼女の顔が真っ赤になる。


「あぁああっ、お、お見苦しいところを……」 

「まずは、帰って食事にしようか。ふたりの歓迎会を兼ねて、今夜は宴だな」

「本当か!? すげぇや、さすがはカイン様!」


 アッシュが大歓喜して賛同した。


「まったく、調子が良いですね……でもカイン兄様のすばらしさを理解してくれたのなら、これまでの兄様への無礼は許してあげます」

「うおっ、セルヴィア様! は、はい、もちろんです!」


 思わず苦笑してしまいそうなアッシュの手の平返しだった。

 でも、この様子なら、裏切られる心配は無いだろう。


「と、帰る前に……」


 俺は倒したブラッドベアーから、高く売れる素材を刈り取ることにした。

 【ブラッドベアーの牙】【ブラッドベアーの爪】【ブラッドベアーの毛皮】などだ。


 今後はスキル獲得やレベルアップだけでなく、金策も必要になってくる。

 強くなるためでもあるが、いずれ何らかの形で、レオン王子はセルヴィアへ嫌がらせを仕掛けてくるだろう。


 それに備えるためにも、自由に使えるお金が必要だった。


「あ、あらためまして、カイン様。エルフの薬師リルと申します。薬作りしか能がありませんが、ご恩返しできるように弟のアッシュと共に、せ、精一杯がんばります!」

「ありがとう、よろしくリル。【薬師レベル5】なんだって? すごいじゃないか!」

「あわわわわっ、で、でもそれ以外は、全然ダメで! はぅ!?」


 ぺこりと頭を下げたリルと、俺は握手を交わす。

 なぜか、リルは顔を真っ赤にして慌てまくっていた。かなりシャイな娘みたいだな。


「できればリルさん、私に薬師スキルを教えていただけませんか? アッシュによると私の作成した回復薬は、ダメダメみたいで……」

「うわっ!? あの回復薬はセルヴィア様の自作だったのかよぉおお!?」


 どうやら、屋敷がまた少し賑やかになりそうだった。

これで第2章が完結となります。

ここまで、お読みいただきありがとうございます!


【※読者の皆様へ、大切なお願い※】


「5秒程度」で終わりますので、ぜひよろしくお願いします。


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