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第42話 波乱のサプライズパーティー開幕

 サプライズとは本来喜ぶべきもの。

 しかもこの日は特別な日であり、すべての存在から祝福されるべき。

 だからこそ誠也は、普段着ないような服装で瑞希の家を訪れた。


 ──ピンポーン。


「誠也だけど……」

「嬉しいわ、来てくれましたのね。今開けるので少し待ってくださいまし」


 跳ね上がるような嬉しさが込み上げてくる。

 誠也が誕生日を祝ってくれる、それがどれだけ嬉しいことか。

 満面の笑みで玄関のドアを開けると──。


「これは一体……」

「瑞希、ちょっと色々あって……」


 想定外すぎるサプライズに瑞希は固まってしまう。

 なぜそうなったのか、それは時を遡ること数十分前から始まった。



 誠也が瑠香を迎えに行こうと外に出ると、タイミングよく本人がインターフォンを押す寸前だった。


「あっ、今から迎えに行こうと思ってたんだけど……」

「甘いね、誠也。私には誠也の行動なんてお見通しよ」

「そ、そうなんだ。それより、今日の服っていつもと雰囲気が違う気がするよ」

「でしょ? どうかな、似合ってるかな?」


 大胆にも誠也の腕に絡みつき、瑠香は胸を惜しみなく当てる。

 これくらい余裕──なわけなく、顔は平然としているが、心臓は誠也に伝わりそうなくらい大きい。

 真っ赤になりそうなのを我慢し、積極的にアピールする。


 照れていてはダメ。

 告白したのに何もないのは、意識されていない証拠。

 それならば、沙織から借りた勝負服で必ず振り向かせてみせる。

 固い決意を胸に秘め、瑠香は瑞希の誕生日パーティーに乗り込もうとしていた。


「に、似合ってるよ。で、でも、ちょっとくっつきすぎじゃない?」

「えー、幼なじみなんだし、これくらい気にすることじゃないじゃん」

「だけど……。あの、その、やっぱりなんでもない」


 目のやり場に困る誠也を見ると、頑張った甲斐があったと思う瑠香。

 恥ずかしさを打ち消すほどの嬉しさは勝利の証。

 しかし表情に出てしまえば、すべてが水の泡となる。


 まさにここが正念場──瑠香は歓喜の喜びを必死におさえていた。


「それじゃ、西園寺さんの家に向かおっか。ちゃーんとプレゼントだって用意したんだからねっ」


 主導権は瑠香が握り、誠也はただ従うことしか出来ない。

 顔がほんのり赤く染まり、瑠香に連れられて瑞希の家へ向かった。


 満面の笑みの瑠香に対し、誠也は羞恥心丸出しの表情。

 まるで、付き合いたてのカップルのようにも見える。


 このままアピールしていけば、きっと誠也は振り向いてくれるはず。

 そう確信する瑠香であった。


「あら、鈴木誠也、き、奇遇ね。って、姫がいるのに、これはどういう事? 確か前原さんでしたっけ、どういう関係なのか、きちんと説明しなさいっ」

「え、えっと、そ、それは……」

「そんなの見ての通りに決まってるじゃない。ねっ、誠也?」


 誠也が言い訳を考える前に瑠香が火に油を注ぐ。

 これは宣戦布告──あの時、誠也が瑞希と別れようとした時、恋人役を譲らなかったのはきっと何かある、だからこその宣戦布告だ。


「ちょっと離れなさいよね。鈴木誠也は──姫の恋人なんだからっ」


 一瞬の間は誠也への想いがあるから。

 否定はしたくない、だけどそのまま受け入れることも出来ない。

 萌絵は揺れ動く心と戦いながら、今は誠也を瑞希の恋人と認めようとしていた。


「えー、別にいいじゃない、私と誠也は幼なじみなんだし。それとも恋人同士にでも見えるのかなっ?」

「そ、そんな事ないしっ。鈴木誠也もしっかりしてよねっ。だいたい、こんなの姫に見られるわけいかないから。だから──あたしが代わってあげるねっ」


 強引に空いてる誠也の腕に絡みつく萌絵。

 その光景は両手に花──というよりも、誠也を挟んで火花が飛び交いまさに地獄絵図。


 間にいる誠也は両側からの圧力に、冷や汗が止まらなくなる。

 今日は瑞希の誕生日で、単にサプライズ的なお祝いをしたかっただけ。

 それなのに、なぜか自分が危機に陥っているような気がした。


「え、えっと、これじゃ歩きにくいと思うんだけど……」

「あたしが邪魔だって言うの? 鈴木誠也。まさか姫を裏切ろうとしてないよね?」

「その前に、白石さんはどうして一緒に歩いてるの? 私達は西園寺さんの誕生日パーティーに行くんだけど?」

「そんなの決まってるよ、親衛隊であるあたしが行かない理由なんてないから」


 会話が混沌とする中、瑠香と萌絵のバトルはヒートアップ。

 お互いに一歩も譲らず、相手をどうにかして蹴落とそうとしている。


 隙など見せたら一巻の終わり。

 繰り広げられる腹の探り合いは、相手に隙を生ませるため。

 張り詰めた空気の中、最初に揺さぶりをかけたのは萌絵であった。


「あのさー、どうして前原さんが姫の誕生日パーティーに行くのよ。接点とかまるでないじゃない」

「それはサプライズだよ。西園寺さんとは話したことあるし、それに……秘密だって共有するくらいの仲なんだからっ」


 秘密の共有を盾に、瑠香は萌絵の攻撃を凌いだ。

 だが、このままやられっぱなしは腹の虫がおさまらず、すぐさま反撃に打って出た。


「そもそもさぁ、西園寺さんの親衛隊なのに、どうして誠也の腕に絡んでるのよ」

「そ、それは……」


 誠也を取られたくないから──などと言えるはずもなく。

 そもそも、誠也が他の女とくっついてるのを見たくはないのが本音。

 それは推しである瑞希も例外ではない。


 しかし今の問題は、瑠香の問いかけにどう答えるか。

 考え抜いた末に萌絵が出した答えとは──。


「姫の代わりだよっ。親衛隊として、姫がいない時はフォローするに決まってるし」


 強引すぎる理由に、言った本人も『これはないな』と思う。

 しかし、今さら理由を変えるのも不自然であり、このままごり押すしかない。

 一番いいのは、これで瑠香が納得してくれる事。


 だが間違っても、誠也が好きだからと口を滑らせてはいけない。

 もし自分の気持ちを知られたら……瑞希に伝わってしまうのは間違いないのだから。


「そっか、それなら納得──って、何よその変な理由! 全然意味分かんないよっ」

「別に前原さんに理解してもらおうとは思ってないし。親衛隊って言うのはね、姫を守るためなら何でもするんだからっ」


 守るために何でもする──それはこじつけにすぎない。

 単に自分が誠也に甘えたいだけ。

 好きな人を取られたくない、特に瑠香だけには渡したくないのが本心。


 では瑞希にならいいのか?

 その答えはまだ出ていない。

 なるべく考えないようにしているからだ。


 もし瑞希から誠也を奪ってしまったら……きっと萌絵は正気でいられなくなる。それこそ別人のように変貌するのは間違いなかった。


「わ、分かったよ、分かったから。もう、その理由で納得してあげるからっ」


 萌絵の迫力に気圧され、瑠香は妥協をよぎなくされる。

 納得していなくても納得するしかない。

 これ以上ツッコんだら、何が起こるか不安で仕方がなかった。


「ふたりともさ、とりあえず落ち着こう? 今日は瑞希の誕生日なんだし」

「そうね、鈴木誠也の言う通りね。それでいいよね、前原さん?」

「一時休戦ってことね。まっ、誠也に免じてあげるから」


 こうして三人は瑞希のマンションへと向かっていった。



「姫の誕生日を祝いに来たよ。あたしが来るなんて思ってもみなかったでしょ」

「サプライズってやつだよね。私も今日だけは西園寺さんを祝ってあげるから」

「ということで……。瑞希、お誕生日おめでとう」


 開いた口が塞がらない瑞希。

 誠也が来てくれたのは嬉しいが、こんなサプライズはどう反応していいのか分からない。

 思考が混乱しながらも、瑞希は誠也達を家の中へ招き入れた。

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