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爆乳バアさんの迷宮探索

 ババアは目尻に皺を作りながら、


「金の話ちゃうんよ。誠意の話をしとるんよ。わかるやろ?」


 と言って、地面に転がる男をまさぐる。

 金の入った袋と、腰元の鞘を抜くと、転がる片手剣をつまんで納める。

 男の左腕に握られた盾と、革鎧、その他装備は、ババアの操る鞭にガチガチに縛られて潰れている。


 ぐるぐる巻きの頭部からは、


「スヒュー、スピュー」


 という呼吸音だけが聞こえた。


「こんだけで見逃したる。感謝しいや」


 シュルッと鞭を巻き取ると、摩擦熱で火傷した男がうめき声をあげた。


 ババアは豊かな胸元を広げると、胸の谷間(無限収納袋)に金の袋と剣を納める。


 次の瞬間、「バチンッ!」と男のこめかみを打ち、素早く鞭をおさめる。


 男はババアと協力して、【迷宮探索競技】の4階層から9階層までを踏破してきた。

 個人競技の中で圧倒的強者たるババアの武威を借りた男は、金を支払う事で同盟を組んできた。


 このまま多額の同盟費を支払うのが嫌になったのか? 水竜に襲われたババアの背中に隙を見出したのか?

 ババアが水竜をしばき、締め上げて電流を流している内に、背中を刺しにきた。


 次の瞬間には、ババアは男の側面を取り、鋼線の鞭で腕を打ち抜くと、蛇のように絡みつき、全身を締め上げた。

 脇骨が折れる手応えに、下唇を出しながら、


「甥っ子だから生かしといたる。しゃあなしや」


 と言って目尻を下げ、装備を奪ったという訳だ。


 上手くすれば生き延びるだろう、年始の集まりで会えるかもしれない。その時はまた巻き上げてやろう。

 甥っ子は良い金蔓だ。


 地面で伸びている男に背を向けると、罠に気をつけてながら急いで移動する。


 迷宮都市名物、四年に一度の大迷宮探索競技。

 ババアが一番警戒するのは、迷宮を徘徊する魔獣でも、対戦相手を狙う競技者でも無く、迷宮に仕掛けられた悪辣な罠だった。


「これであと二人か」


 胸の谷間から出した護符を見る。昏倒した甥っ子を示す図柄の他に、二つの柄が残っていた。

 それ以外の柄は切り裂かれているか、一部が欠けているか、消滅している。


 地面に開いた落とし穴を、閉じ込めた部屋を焼き尽くす劫火を、即死性のガス噴射を、ことごとくすり抜けたババアは、十階層に降りる階段を前に息を吸う。


 ゆっくり吐き出しながら、


「居るんやろ? 出てきいや」


 と声をかけた。返事の代わりに炎弾が飛ぶ。

 ジュッ! と雷鞭でかき消したババアは、目線を切って空を穿つ。


 硬質な音と共に、双刀を構える女が現れた。


 隠蔽を解かれた双刀使いはラッシュをかける。

 風魔法をはらんだ凶刃は、硬質な石壁を削るが、ババアは魔刃をかわすと、スルリと鞭を這わせる。


 バチン! 跳ねた鞭が炎弾を掻き消す。

 そこに空間を喰らい尽くす火炎放射が襲った。


 双刃使いは追い風とばかりに魔刃を乱発し、余波がまつ毛を焼く。


 ババアは胸元を開くと、胸の谷間(ブラックホール)で全ての熱を吸い込む。


 開いた手で鞭を引くと、解れ、展開していた鋼糸が敵に絡みついた。


 炎使いの女は魔杖から爆風を放ち、後方に逃れる。

 杖の端を肩に当てると、赤く光る魔法紋に魔力を流した。


 相棒は風をなびかせ、飛ぶように鋼線を避けている。


 その背にババアの視線を隠した瞬間、超高熱線が放たれた。間一髪避ける双刃使いも、全力の魔刃でババアを切り裂く。


「いっしょなんよね」


 ニタリ、と粘着質な笑みを浮かべるババアは、胸の谷間(小宇宙)に全てを飲み込むと、双刃使いを抱き締める。


 おっぱいハグにて「グチュッ」と逝った女が脱力する。

 舌打ちする炎使いは、思わず一歩後ずさった。


「あがっ」


 鋭い何かを踏んだ、左足を激痛が走る。


 足から胸まで貫いた鋼線は、心筋を断裂して、大輪の血花を撒き散らす。


 伸ばした鋼鞭の先端が開き、二人の装備を奪った。


「女抱くんは趣味ちゃうな、次が雄やったら、ゆっくりとたっぷり抱きしめたろ」


 胸元の止め具を合わせたババアは、ラスボスの控える十階への階段を一歩踏み出した。

街で爆乳のお婆さんを見た。つい揺れを確認してしまう。悲しくは無い。何なんだろう? とは思う。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  幼い頃、実家の近所に住んでいたお婆さんが乳丸だしで歩き、孫らしき少年が「婆ちゃん服着ろ!」と後を追いかけていた場面を思い出しました。どこの世界でもババアは強いです(笑)。 [一言]  お…
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