あとがきとお詫び
まず、本作をここまで読んで下さった方々に心から感謝申し上げると同時に、中途半端な形での終わりになってしまったことを深くお詫び申し上げたい。すべては自分の力不足ゆえである。
本作着想のキッカケは「子ども目線ならクマやゾウぐらいの大きさでも充分巨大怪獣なのではないか?」というものである。
個人的に久々に怪獣モノおよび長編小説が書きたかったこと、ここ数年のコンテストで賞をいただいた小説(すべて短編である)がどれも少年少女を主役にしたものだったことなどもあり、「子どもが自分たちにしか見えない怪獣と学校のあちこちで戦う」シチュエーションをベースに背景に色々なモチーフを組み込みつつ物語を構築した。
が、考えてみるとこれには少々問題があった。端的に言えば、本作は作者にとっての個人的必然ばかりで構築されてしまっており、不特定多数にとっての必然が意識されていない。おおよそのゴール地点は見据えられていても、スタート地点の設定がはっきりしない。実際、読者目線でも何を期待値に読み進めればいいのか分かりづらかったのだろう。動員を増やそうと紹介ジャンルやコンセプト説明を色々変えても結局効果はないどころかおそらく逆効果で、一度獲得したハズのブックマークまでひとつ残らず消える有様で、あっという間に負のスパイラルに陥った。
本作は、個別要素や演出に関して言えば自分で言うのもなんだが上手く描けた部分は多いと思う。密かにやっていたいくつかの事前調査やSNSでの反応、およびアクセスログ等を見ると全体ではネクロノーマや、本編には未登場に終わった後述のペドロン魔などが好評だったし、脇役だったハズの究太郎が勝手に動き出し主人公そっちのけで活躍しまくる現象など、いくつか計算外の事象も観測できている。
が、やはり全体としてみると期待より遥かに小さな客動員だったと言わざるを得なかった。本作は複数の小説サービスに毎週同じタイミング、同時投稿で公開を続けたが、サービスによっては第一話、よくても第二話で以後一切読むのを止められてしまっており、怪獣と戦うお話なのに怪獣が出てきた時点で以降一切が事実上読まれていない場合があるというのは、中々に致命的であった(ついでにいえばそこでのコンテストが執筆モチベーションのひとつであり、元々開催時期を目安に準備を進めていたという……ますます何のために書いていたのやら分からない)。
他にも、短編小説中心に舵を切ってから4年間の成功・失敗体験だったり、その過程で分かってきた自分の気質を踏まえると、現在の自分には長編小説を書くにあたっての重要な技術が知識体系レベルでひとつ明確に欠如していることが分かった。かつて長編小説を7年連続で書き続け7年連続でコンテスト一次落ちを繰り返し、何の実りもなかったという時期を経験したことがあるが、今にして思えば大変納得である。
このため当初全27話と発表していた本作だが、予定を繰り上げWEB公開スタートとほぼ同時期に完成していた第18話を以って終了させる決断を下すに至った。平たく言えば打ち切りである(当初から中ボス戦に設定していたエピソードなのがまだ不幸中の幸いであった)。
皮肉なことにこの決断をした直後ぐらいから、継続効果なのか怪獣効果なのか明確には分からないが、宣伝の拡散力が少しずつ伸び始めたのが観測された(大体バステドン編からである)。とはいえ拡散しただけで本編へのアクセス自体は伸びなかったから、やはり何かが間違っていたのだろう。
また殆ど同時期に、大学入学直前からほぼ10年間創作活動を支え続けたノートパソコンが露骨な異変を生じ始め、この文章を書いている時点で事実上お亡くなりとなった。企画を既に畳み始めていたにも関わらず新PCへのデータ移行作業は数晩の徹夜を余儀なくされ、ずっと使っていた画像編集ソフトも使用不能となったため、仮に何かの奇跡で作品が人気を得ていたとしても、おそらくプロジェクトは破綻し続行不可能となっていたのだろう。いずれにせよ、制作環境を丸ごと刷新せねばならない時期に差し掛かっていたのである。
話は変わるが、自分には予てよりおよそ5年に1回、心身に何らかの大きなダメージを負う嫌なジンクスが存在する。
ある時は学校遊具から墜落しての骨折、またある時は1年半かけた自主映画が破綻してうつ状態突入、またある時は実りない就活の果てにブラック業界就職で適応障害……が、これらは別にスピリチュアルな要因でもなんでもなく、考えてみれば当たり前の話なのだ。
知識や活動範囲、体力や経済力が拡大すれば人は誰しも未知の領域に挑んで壁にぶつかる。その壁を、従来通りの手段で無理やり突破しようとして怪我をするサイクルが、自分の場合は大体5年に1回程度ということなのだ。慢心があれば尚更である。
今までこういうことが起きた場合は年単位での現実逃避が常であった。が、事例を大別すれば多くは解決のための体系的知識を持たなかったか、何らかの精神的苦痛にフタをし続け限界に達したかであり、今回のケースなどは明らかに前者のパターンだ。そして具体的に何の技術知識がなかったのかは既に判明し、信頼できる筋から推薦されたテキストを集めて勉強もスタートしているから、また新たなチャレンジをする日もそう遠くはないだろう。
裏方方面で他にも話せることは山のようにあるが、成功プロジェクトならいざ知らず、破綻プロジェクトの裏話など正直そんなには聞きたくないだろうから、この辺りで切り上げておくことにしよう(色々書いてきたが、結局反省するにも部分と全体は切り分けて考えねば具体的改善は行えないと思う。消費する側に求めるべきものではないだろうけれど)。
なおこの文章を書いている時点で、とあるサービスでは第1話への流入18人に対し、全エピソード通して読んで下さったと推定される読者数は4人であった。この4人の方々には重ねて心からお礼を申し上げたい。
想定よりも話が長くなってしまったが、最後に未登場に終わってしまった計3体の怪獣を紹介して締めくくりとしたい。このうちの1体、ペドロン魔については事前調査にて普段デザイン等をやっていて自分より圧倒的に目の肥えた友人数名からも、明確に好評だった怪獣である。
本来の予定では彼らとの戦いを通じてキャラたちの具体的背景、世界観の真相、黒幕の正体目的、裏テーマなど散らしていた伏線がひとつ残らず回収される手筈だったのだが、結局のところいくら緻密に作りこもうが読む人間がいなければ、読みたいと思う層を炙り出せねば無理を押してまで書き上げる意味がない……というのを今回は痛切に思い知った次第である。
彼らを活躍させられなかった悔しさと、未熟な内容をそれでも読んで下さった方々への申し訳なさを深く教訓として刻み、今後の糧としていきたい。
2022.7.2.sat




