バァンて殴られてた男性の腕を掴んだ今日の私
ー今日から転勤、新しい職場。
今までの職場より、少しだけ、遠くなるかもしれない。今までは、バス1本だった。けれど、今日からは、電車とバスを乗り継いで行く。
かつて、私は、朝は始発、帰りは終電というガチのブラックな勤務形態で働かされていた。しかも、片道2時間通勤だった。
周辺のビジホの会員カードは、コンプリートしていたと思う。本当に、冗談じゃなく、給与の半分が、ビジホ代に消えた。ちなみに、もう半分は、病院代に消えた…。
そんな過去があるから、ちょっとやそっとでは、通勤が大変とは思わないのだ。朝イチ出勤、定時退勤すれば、バスも座れるだろうし。ヘーキヘーキ。
…と思っていたら、事件が起きた。
少し肌寒く感じる、4月1日の早朝。ホームには、まだ人は多くなかった。
ミントグリーンのワイドパンツスーツ。ルナソルのアイシャドウ。ピアスは大きめのパール。パンプスは7センチヒール。
ープルルルルルル…
電車のドアが閉まる合図が聞こえた。私は、転ばないように気をつけながら、人が乗り込むのが少ないドアに飛び込んだ。
私が、電車に、乗った…ら、スーツ姿の若い男性が、オジサンから、リュックをバァンと殴られていた。
さらに、怒鳴られていた…。
電車に乗った瞬間、本当に目の前で起きていた。事情は、全くわからなかった。ただ、直感で、このスーツの男性は、タチの悪いオジサンにからまれてるだけだって思った。
とっさに、スーツ姿の男性の腕を掴んだ。
「大丈夫ですか?離れましょう。」
って、目を見て、声をかけて、車両の端を目指して歩いた。その間、彼の腕は、離さなかった。
周りの人たちが、なんとなく、私たちを「避けてくれている」ことを感じた。表立って、オジサンとやり合うことはしてくれなくても、道を開けてくれてくれていることは伝わった。
後ろの方では、まだ、オジサンがわめいていた。でも、その声も遠い。もうここまで来れば…というところで、彼の腕を離した。そこで初めて、振り返って、事情を聞いた。
幸か不幸か、殴られたのはカバンだけらしくて、怪我はないそうだ。ただ、やっぱり、事情も何も無くて、彼は、何もしていなかった。単に酔っ払いみたいなオジサンが、叩いてきただけ…って、それ、犯罪…!
怪我がなくて良かったと思った。けど、許せなかった。
スーツの彼は、本当に、真面目な良い人っていう感じだった。やられた彼こそ、オジサンのこと、許せなかっただろう。
聞けば、今日から新入社員が来るから、その準備で、いつもより、早い電車に乗ったんだそうだ。そうしたら、災難に遭ってしまったんだって…。そんな…!
「嫌な思いしてしまったと思うけれど、忘れてくださいね。」
と言ったら、
「会社に初めて来る子たちが、自分みたいな目に遭わないと良いです。」
と苦笑いしていた。
私たちは、お互い、降りる駅が一緒だった。名前も聞かずに別れたけれど、言いたいことがある。
スーツ姿の若い男性へ
オジサンのことは、私が通報しました。
これからは、安心して、電車に乗ってください。
ミントグリーンのワイドパンツスーツ。ルナソルのアイシャドウ。ピアスは大きめのパール。パンプスは7センチヒール。
ー私です。