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第54話 エピローグ


 王宮の周りにはルシフェルトの黒魔法によって消し炭となった人々の屍が散乱している。

 国王ペルセウスの周りも同様に宰相や兵士だったものが変わり果てた姿で転がっている。

 とても直視できないような悲惨な光景だ


 それを自業自得であると言い捨てたヘンシェルに国王ペルセウスは逆上した。


「何がいい薬だ! 余の臣下や善良な民がどれだけ殺されたと思っている!」


「殺された? 私にはルシフェルトが軽く鬱憤を晴らしただけに見えますが」


「何を言っている。そなたにはそこら中に散らばっている屍の山が見えないのか!?」


 ペルセウスは屍の一つ一つを指差して声を荒げる。


 しかし次の瞬間その屍たちが光を放ち始めた。


「な、なんだ!?」


 突然の出来事にペルセウスは目を丸くして呆然と立ち尽くしている。

 ヘンシェルとその仲間たちはさも想定内であるかのように落ち着いた様子でそれを眺めていた。


 光が収まると、ルシフェルトに殺されたはずの者たちは全て元通りになっていた。


「何が起きたんだ?」

「確か王宮の中から黒い球が飛んできて……」

「はっ! そうだルシフェルトの奴が俺たちにいきなり黒魔法をぶつけてきやがったんだ」

「あれ? でもどうして俺たち生きてるんだ?」


 皆自分の身に何が起きたのか理解できずに戸惑っている。


 ヘンシェルはペルセウスに状況を説明をした。


「陛下、これがルシフェルトの【破壊の後の創造】スキルの力です。彼がその気ならばスキルを発動させずにこの場を去る事もできましたでしょうが彼はそうしなかった。彼の慈悲の心に感謝する事ですね」


「ぐぬぬ……余を虚仮にしおってからに……許せん、直ちに兵を集めて奴を討伐してやらねば余の気が収まらん!」


 ペルセウスは臣下の将軍に戦支度を命じるが、将軍は目を逸らしながら答えた。


「陛下、そうは申されましても我が国の兵士は魔王軍との戦いで皆満身創痍。とても魔界に攻め入るだけの余力はありません。それにあのルシフェルトの力を見ましたか? 傍らにいた魔族の女もそうです。我ら将兵が束になってもまるで敵いませんでした。更に魔王軍の本隊が加われば我らには勝ち目はありません」


「ぐぬぬ……何と情けない……そうだヘンシェル、余にはそなたがいた! そなたが我が軍に加わってくれれば魔王軍など恐れる事はない」


 しかしヘンシェルは首を横に振った。


「陛下、勘違いをされては困ります。私は王国出身ではありますがあくまで民間人の立場です。軍属ではありません」


「ヘンシェル! この期に及んでそんなことが言い訳になるか! この国の主である余が命令しているのだぞ! そなたも王国の民ならば黙って余の命令に従え!」


 ヘンシェルは憐みに満ちた目でペルセウスを見ながら答えた。


「私とその仲間は皆シヴァン神の信徒であります。ルシフェルトが本当に皆が言っていた通りの悪人ならばシヴァン神があのような素晴らしいスキルを授けられるはずがありません。私たちはシヴァン神の御心に従うのみ。私たちがルシフェルトを手にかける事などできるはずもないではありませんか」


「ヘンシェル……そなたまで余に逆らうと言うのか……もう良い、そなたの顔など二度と見たくない! 今すぐこの場から立ち去れ!」


「はい、それでは失礼します」


 ヘンシェルとその仲間たちはペルセウスに最後の一礼をしてその場から立ち去った。




 王宮を出たところで聖女ダイムラーがヘンシェルに問いかけた。


「ねえヘンシェル、陛下はあの後どうするつもりでしょうか?」


「そうだな。あの人の事だ、東のヴァハル帝国や北のシグルドの遊牧民たちにある事ない事吹きこんでルシフェルト討伐の連合軍を組織するよう動くかも知れんな」


 戦士ユンカースが溜息をつきながら呟いた。


「あのおっさん無駄に決断が早くて行動力もあるからな」


 呪術師のデマーグもユンカースに続いた。


「どうしますヘンシェル? 放っておくとまた無駄な戦争がはじまりますよ」


 ヘンシェルは腕を組んで少し考えながら答えた。


「捨ててはおけないな。今の内に冒険者ギルドのネットワークを利用してそうならないように各国に根回しをしておくか」


「ふふっ、ルシフェルトの為にわざわざそんなことまでするなんて本当にお人好しなんだから」


「ダイムラー、義理堅いと言ってくれ」



 後日ヘンシェルが懸念した通りヴァハルとシグルド両国にアガントス国王ペルセウスよりルシフェルト討伐の協力要請の書状が届いたが、ヘンシェルたちの根回しが奏功してペルセウスの思惑は空振りに終わった。


 それによって国を跨いだ多くの人々が救われた事を知る者は少なかった。





◇◇◇◇





 アガントス王国の王宮で気が済むまで暴れまわった俺はロリックス城に戻った後再び穏やかな日々を過ごしていた。


 しばしばノースバウムの村を通してヘンシェルさんたちからアガントス王国の状況を伝える手紙が届く。


 ヴァハル帝国とシグルドに見捨てられる形となった国王ペルセウスはその後乱心の末に逝去。

 後を継いだ嫡子アルカイオスは聡明な人物で、王国内は主だった混乱もなく平和が続いている。


 あの時俺を散々罵倒していた民衆たちも新国王アルカイオスに倣って心を入れ替え始めているようだ。


 俺に関する一連の事件の遠因となった教会の神父は修道士やシスターに糾弾されてその座を追われ行方を晦まし、今ではどこで何をしているのかも分からないという。


 先頭に立って神父を追いやったのは俺の幼馴染のフローラだ。

 神父がいなくなった後は再びシスターとして教会で働いている。


 フローラはあの日俺を信じられなかった事を深く懺悔し、それを反面教師として教会を訪れる子供たちに人を信じる事の大切さを説く日々を続けている。


 俺の父であるエバートン侯爵はあの後病が進行して亡くなったらしい。

 そして弟のアルゴスは依然として行方不明であり、世継ぎのいなくなったエバートン侯爵家はお取り潰しになるそうだ。


 今の俺にはどうでもいい情報である。


 俺の呪いが未だに解けていない以上アルゴスはまだどこかで人知れずに生きているのは間違いない。


 俺の傍らにいるロリエにとってはむしろその方が好都合のようだ。

 アルゴスが死んで俺に掛けられた呪いが解けてしまったらロリエの大好物である黒魔力が俺の身体から消え去ってしまうからだ。


 最近ロリエは配下の魔族たちとアルゴスに勝手に死なれないように潜伏先を探し出し、黒魔法によって生きたまま永遠に地の底に封印する計画を進めている。


 ロリエはやると言ったらやる女だ。


 自業自得とはいえ、俺はアルゴスに対して憐みの気持ちを抱かずにはいられなかった。




 その後アガントス王国を筆頭とする人間界、魔界、エルフの森は主だった争いも起きず長く平和な歳月が流れた。



 後世、母親が子供をしつける時に「悪い子の所にはルシフェルトが破壊しにやってくるよ」という決まり文句が長く使用されたと言う。





 完









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[気になる点] ざまぁヌル過ぎて胸糞読後感、、、
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