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第18話 魔族の集落9



「うう……誰か助けてくれ……」

「まだ死にたくない……」


 魔獣に襲われて重傷を負った兵士たちの呻き声が響き渡る。


 今この場にいる魔獣は全て俺がトリスタンを倒した後に魔獣の谷へ赴いて打ち倒し、従えさせたものばかりだ。

 どの魔獣も良く俺に懐いている。


 モロクの軍勢が壊滅したの見届けた俺は村を出てモロクの陣に向かった。


「うっ……さっきの人間だ……」


 兵士たちは重傷を負った身体では立ち上がって身構える事も出来ず、ただ地面に横たわりながら俺を睨みつける事しかできないでいた。


 俺はそんな彼らには目もくれずに魔獣たちに近付いて言った。


「ようし、よくやってくれた。もういいぞ」


「グルルルル……」


 俺の命令で魔獣たちは先程までの凶暴さが嘘のように大人しくなり、兵士たちへの攻撃をピタリと止めた。


 俺は魔獣たちを労ってよしよしとその全身を撫でてあげた。

 このグリフォンのモフモフとして弾力性のある体毛は触り心地がとてもいい。


 兵士たちは俺と魔獣のやり取りを信じられないといった目で見ていた。


「おい、どういう事だ……? あの人間が魔獣たちを従えているように見えたが」

「まさかあいつは魔獣使いなのか? あんなに強力な魔獣を使役するなんて、噂に聞く勇者パーティ―の一員とやらじゃないのか?」

「もうだめだ、俺たちじゃ敵いっこねえ」


「はぁはぁ……お、おいそこの人間さんよ……俺たちの負けだ。どうか見逃してもらえないだろうか」


 比較的傷が浅かった亀の様な甲羅を背中に付けたひとりの獣人が力を振り絞りながらふらふらと立ち上がって俺に声を掛ける。


「お願いだ、どうか俺たちを助けてくれ……見てくれ、皆この傷では戦うどころか満足に動く事もできない。俺の自慢の甲羅もひびだらけだ」


 彼らがもう戦えない事はひと目で分かる。

 中には今すぐにでも治療を施さなければ命が危険な者もいる。


 亀の獣人は死にたくない一心で必死に命乞いをする。


「なあ、確かに俺たち魔族とあんたたち人間は長く争ってきたが、俺個人としては人間をに対して思う事は何もないんだ……あんたも分かるだろう? 争いは何も産み出さないって……生きとし生ける者は皆兄弟だ……汝の隣人を愛せとはあんたたち人間の言葉だろう……」


 同族であるはずのノースバウムの住民たちですら散々苦しめてきた独裁者の犬たちがこの期に及んで何を言い出すのか。

 それにお前たちは遊び感覚で俺たちを狩りに来たんだろう。

 俺は思わず怒りで我を忘れそうになるのを必死で堪えていた。


 だが元々彼らに止めを刺すつもりでここまで来たのではない。

 俺は笑顔で首を縦に振った。


「ああ、いいよ。全員俺の魔法で治療してあげるからまだ動ける者は負傷者を一ヶ所に集めてくれ」


「あんたは治癒魔法が使えるのか。すまねえ、恩に着る……」


 亀の獣人とまだ動ける数名の獣人たちは、負傷者を担ぎながら俺の前に並べた。

 まるで野戦病院のような光景だ。


「はぁはぁ……これで全員です」


「ご苦労。じゃあ君達もそこに並んで」


「はい……」


 兵士たちは俺の言いつけ通りに整列をする。

 先頭に並んでいるのは先程の亀の獣人だ。

 彼らが素直に俺の魔法の有効範囲内に集まったのを確認すると、俺は彼らに向けて手をかざして魔力を込めた。


 直後に亀の獣人の顔が強張る。


「うん? ちょっと待ってくれ、その魔力は……?」


 俺の魔力の波動は傷を癒す白魔力ではなく、対象を破壊する黒魔力のそれだ。

 兵士たちは直ぐにその異常に気付いた。


「あ、あんたまさか俺たちを騙したのか!?」


「嘘じゃないさ。すぐに楽になるからね。……破滅魔法ルゥースリィスエンド!」


「や、やめ……」


 俺の掌から魔力の衝撃波が放たれた。




 ドォン!




 彼らの肉体は一瞬にして塵となった。

 俺の黒魔法の破壊力の前では亀の獣人ご自慢の甲羅ですら物の役にも立たなかった。


 今の俺には黒魔法を連発するだけの魔力はない。

 だから一発で済ませる為に彼らを一ヶ所に集める必要があった。

 彼らはそうとも知らずに自分たちから率先して動いてくれたので色々と手間が省けた。


 こう聞くと鬼畜の所業に聞こえるかもしれないけど、これも全て彼らを助ける為の事だ。

 彼らを治療してやる為には一度破壊しないといけないのだから仕方がない。


 そして【破壊の後の創造】スキルによって爆散した彼らの肉片が光り輝き、次の瞬間にはそれぞれトカゲ、ワニ、ヘビ、カメのような爬虫類に創り変えられた。


「それじゃあ元気でね」


 俺は彼らを優しく野生にリリースしてあげた。


 村人たちは城壁の上から周囲を見渡し、付近にはもうモロクの兵士たちが残っていない事を確認した。


「ルシフェルトさん、肝心のモロクの姿がどこにも見えませんでした」


「逃げたようだね。でもグリフォンの嗅覚からは逃げられませんよ」


「グルルルル……」


 俺はグリフォンに身体を伏せさせ、その背中に跨る。


「じゃあちょっと行ってきます」


「はい。お気をつけてルシフェルトさん。吉報をお待ちしています」


 俺を乗せたグリフォンはその大きな翼を羽ばたかせ、モロクの匂いがする方角へ一直線に飛翔した。



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