捜索依頼
――ヴェラスケスを探して、この子猫を返すのを手伝って欲しい。
それがシャバーニの依頼だ。
「――さすがにゼニ取るのはなぁ……無理やろうし、今回は販促目的の初回限定、特別奉仕ってことで……お?」
エイジャを見上げて諦め気分でそんな事を言ったタキシードに、シャバーニが懐から何かを取り出して差し出してきた。それは桃色が、緑色に包まれた宝石だった。
「――これ、緑桃電気石じゃない? キャッツアイも入っているよ」
エイジャがタキシードの代わりにそれを受け取ってかざして見て、言った。
緑桃電気石。電気石の二色だ。電気石は碇石格を持つ宝石の中でも最低ランクなのだが、緑桃電気石ならば結構な金になる。しかもキャッツアイ入りとなれば鉄貨五枚は下らないだろう。
「……森で見つけたんか。綺麗だから取っておいたと。これ結構ええ石やで、シャバーニ君。ええの?」
タキシードは犬以外の動物には優しい。タキシードはちょっと貰い過ぎな報酬に遠慮した。しかしシャバーニ君は当時のお礼もしていなかったからと、そう言ってそれを支払うことを主張した。
「シャバーニ君……中身までイケメンになったんやなぁ」
「惚れちゃいそうだね」
タキシードがポスポスとシャバーニの腕を叩くと、彼は大事そうに持っていた子猫を差し出して来た。タキシードがその子猫の首根っこを咥え上げる。
子猫は栗毛地にロゼットと呼ばれるくっきりとした斑紋が特徴のヒョウ柄が浮いた、野性的で美しい毛並みをまとっていた。目も大きく、成長すれば美猫になること間違いなしと思われた。
タキシードがそんな子猫をエイジャに渡す。
「シャバーニ君が歩きにくそうやから、エイジャが抱えて運んだって」
「うん、分かった」
エイジャは二つ返事で子猫を胸に仕舞った。柔らかそうな胸の谷間から子猫がきょとんと顔を出してミーと鳴いていた。
「……それ、あり?」
「ありあり。だってここしかないもん」
エイジャの服、面積少なすぎ問題再燃だ。
――後でじっくり討論しなくては。
「ワシ用のケージ使ったらええやん」
「この子の名前はどうしよっか?」
タキシードの指摘を華麗に無視したエイジャが、子猫の頭を撫でながらそんな事を言った。タキシードは納得できないものの、うーんとしばし唸ってから口を開く。
「親の名前を襲名したらええ……自分、ニュートンって名乗りや」
「ニュートン……いいね。よろしくね、ニュートン!」
エイジャがそう言ってにこにこニュートンの喉を掻いた。ゥホゥホと言ってニュートンに顔を寄せたシャバーニも、どことなく笑っているように見えた。




